第3話 白姫さん、実は妹だった?


 「は、え、ちょ、どゆコト?」


 (意味わからん。頭パンクしそう)


 なおも眩しい笑顔を振りまく白姫さん。


 (浄化されそう。神聖だぁ)


 「私の誕生日は八月二〇日で、

 龍人さんの誕生日は四月二〇日。

 私より龍人さんの方が早生まれなんですよ」


 (白姫さんの誕生日は八月二〇日と。

 プレゼント考えなきゃな。

 たとえ喜んでもらえなくとも、家族だし)


 閑話休題かんわきゅうだい


 (思考が事実を認めようとしない)


 (…………)


 あぁ、そっか。


 僕の方が早生まれだからね。


 そら「にぃさん」か。


 (え)


 でも同級生で学校のアイドルから「にぃさん」て、凄く恥ずくないか?


 (恥ずかしいどころじゃない。死ぬ)


 そもそも僕なんかでは滅多にお目にかかれない白姫さんと、義理でも家族なんて。今でも信じられない。


 (なぜこうなった、しか考えられん)


 「まあ、別にいいですけど」


 (やったね。ラノベかよ)


 満更でもない僕。


 内心とび跳ねるくらい嬉しい。


 (天にも登る気持ちです、ハイ)


 「ホントですか!

 じゃあこれからよろしくお願いしますね、

 にぃ…さん」


 ドキッ。


 (心が震える。脳は震えないよ)


 自分が言ったコトに少し恥らないながらも、花が咲いたような笑顔をする白姫さん。


 (天使?)


 その笑顔は「かわいい」というより「美しい」という方が合ってる気がした。


 (天使かな?)


 「う、うん」


 グフッ。


 (どうやら傷は深いようだ。

 一瞬にしてHPバーが一直線にゼロへ。

 死んじゃった)


 不意打ちに思わずどもってしまう僕。


 (恥ずかしい。

 これが巷に聞く「醜態を晒す」というヤツか。

 え? そこまで言ってない?)


 それを見て無邪気な笑顔から一転、いたずらっぽくニヤッとする白姫さん。


 (え)


 イヤな予感しかしない。


 (僕に安寧を──)


 案の定、


 「ふふっ、にぃさん?

 なぜそんなに顔を赤らめているのですか」


 (!?)


 前言撤回ぜんげんてっかい、白姫さんは小悪魔だった。


 (実は小悪魔だったか。それもいいけど)


 細長い脚を椅子イスに乗せ、僕のいる上段ベットの手すりに腕を掛ける白姫さん。


 (足が凄い。特に太もも。ムチムチ)


 そのまま僕の顔をのぞき込むように首をこてんとかしげ、「ん? ん? にぃさーん」と白くほんのり冷たい指でほっぺたをツンツンしてくる。


 (なにこの状況。嬉しいけど)


 されるがままにする僕。


 (気持ちいい)


 依然いぜんとしてとしながら僕のほっぺをツンツンする白姫さん。


 (とろけるほど嬉しいけど後ろから刺されそう。

 いいのか僕。こんないい思いして。

 いやダメだ)


 流石にココまでされると恥ずかしくなってきたので、ゴロンと半回転して寝返ねがえると、逃げるように顔を背ける。


 (意気地無いくじなしとでもなんとでも言え。

 これが僕だ)


 「むぅ。

 そんな照れなくてもいいじゃないですか」


 ムスッ。


 (リスみたい。つつきたい)


 「別に、照れてなんかないよ」


 (嘘です、ごめんなさい)


 ほっぺをリスのように膨らませ、ムスッとした顔をする白姫さん。


 何を思ったか、ただでさえ近い距離になのに腕をよじり、さらに近づいてくるじゃないか。


 (え)


 ムスッとしたリス顔から一転。


 何かをいつくしむような優しい笑顔に。


 (さらにイヤな予感)


 「私たち、まだ全然お互いのコト知らないじゃないですか」


 「うん」 


 (そら今日初めて会話するぐらいだし)


 「今日から義理ですが兄妹じゃないですか」


 「うん」


 (今でも信じられないけど)


 「なら互いのコトもっと知っておかなくちゃダメですよね?」


 「うん?」


 (何か変な方向に脱線してるような…)


 「明日は休日。

 勿論もちろん、行きますよね?」


 「うん。…うん?」


 (どゆコト)


 行く? 行くったってドコに。


 すると僕の表情を見た白姫さんはにこりと微笑み、指をパチンと鳴らしてドヤ顔でこう言った。


 「遊びにですよ、あ・そ・び♪」


 (えぇ)


 ゲンナリ。

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