第79話 オンジの鼻○

オンジは気持ち良さそうに寝ている。



しかしその鼻の中からは赤ん坊らしからぬ極太の鼻毛が数本、モッサリと丸く下にカールしながら伸びていたのだ。



ショウ:こ、これは?



ショウ:ちょっと待て。。落ち着いて考えろ。。



ショウ:コイツ実はおっさんなんじゃないのか?



ショウ:言葉も話してたし実は成長が止まってから随分経つおっさんなのか。。?



しばらく考え込んでふとオンジを見るとさっきまで下向きのカールだった鼻毛が今度は上向きのカールになっていた。



固まるショウ。



ショウ:え?



ショウ:さ、さっき下向きだったよな。。?



食い入る様に鼻毛を見つめる。。



サワ。。



ショウ:!!!!



ショウ:今、動いたよな??



ショウ:は、鼻毛が生きているのか??



そんなショウを見てミネルバは



ミネルバ「どうかしましたの?」



ショウ「い、いや。何でもない。。」



ミネルバ「何でもない事はないでしょう?」



とオンジの顔を覗いた。



ミネルバ「。。。特に何もありませんわ。」



ショウ「そ、そんな筈は。。」



ショウが再び見ると鼻毛がなくなっている。



ショウ「あれ?」



ショウ:おかしいな。。?



ミネルバ「どうしましたの?」



ショウ「いや、何でもな。。うっ」



次にショウがオンジに目をやると今度は鼻の中がモゾモゾ動いている。



そしてさらにオンジの鼻の中のから声が聞こえてきた。



鼻毛「オンジ、そろそろ起きろ。」



オンジ「うーん。。ミッシェル。。まだ眠い。。」



ショウ:ミ、ミッシェルだと?



ショウは更に愕然とした。



ショウ:こ、こいつ鼻毛に名前つけて喋ってやがる。。。



ここでようやく鼻毛(ミッシェル)に気が付いたミネルバはそれをじっと見つめる。



ミネルバ「。。。」



ミネルバ「tamori、それヤドカリですわよ。」



ショウ「え?」



オンジ「うーん。。?あ、ミッシェル、また鼻に入って。。。」



オンジは起き上がると鼻に指を突っ込んでミッシェルを引きずり出した。



ショウ「うお!?」



それは小さな殻のないヤドカリだった。



もちろん言葉を解する所をみるとイシュタラではあるのだろうが見た目にはただのヤドカリに見える。



そして起きたオンジはようやくショウ達に気が付くと



オンジ「あれ?あなたは確か。。他守さん?」



ショウ「あ、ああ。そ、そうだ。」



ショウ「ところでその鼻。。いや、ヤドカリは?」



オンジ「この子はミッシェル。ここで知り合った。友達。」



ミッシェルはオンジの手に隠れながら



ミッシェル「ど、どうも。はじめまして。」



ショウ「君は何でオンジの鼻の中にいたんだ?」



ミッシェル「は、はい。随分昔にここへ紛れ込んだのですが住んでいた貝殻が割れてしまい。。この辺り貝殻が無くて小さな穴があるとつい入ってしまうのです。」



ショウ「そう言えばここは貝殻がないな。。」



ショウ「そうだ、ちょっと待って!」



ショウ:錬金素材で何かなかったかな。。?



ショウはコンソールを出してアイテムを確認する。



ショウ:えーっと。。お、これなんかいいかも。



ショウはアイテムリストの中から『うずまき忍者貝の殻』を選択した。



すると丁度ショウの胸の前あたりの空中が黒くなりそこに手を入れると中から小さなオレンジ色の巻き貝の貝殻が出てきた。



ショウはそれをミッシェルの前に置くと



ショウ「こんなので良かったらあげるよ。」



と言っていかつい顔に赤い目を怪しく光らせた。



ミッシェルはその顔に少しためらいながらもその貝殻の中に入って行った。



ミッシェル「おおお。。これは。。」



ミッシェル「素晴らしいです!ありがとうございます!!」



オンジ「わぁ」



ショウもホッとして



ショウ「それは良かった。」



と頷いた。



ミッシェルはとても気に入った様子でその場をクルクルと回って見せた。



ミネルバは相変わらずつまらなそうに



ミネルバ「そろそろ施設に戻った方が宜しくては?」



と促す。



ショウ「あ、あぁ。そうだったな。」



ショウ「クレピオスさんが呼んでたよ。それからアナトも。」



それを聞いてオンジの表情はパッと明るくなる。



オンジ「アナト来てる?」



ショウ「あぁ。一緒に来たよ。」



オンジ「アナト、会いたい!早く行こう!」



こうしてショウはオンジを連れて診察室へ戻って来た。



スライド式の診察室の扉を開き、オンジはアナトの元に駆寄ると



オンジ「アナト来た!嬉しい!」



と、赤ん坊らしからぬ動きでアナトの周りをぐる回ったり飛び跳ねたりした。



アナト「オンジは随分元気になったな。」



オンジ「うん!この通りだよ!」



と快心の笑顔を見せた。



そこに



クレピオス「早速だがオンジ、そして他守君、二人に頼みたいことがある。」



とクレピオスが切り出して来た。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る