第24話 迷走する緊急執行

沢田レポーター「こちらDBC放送、イ特密着レポーター沢田えり子です!只今、23地区211番地に来ております。」



沢田レポーター「皆様!ご覧ください。この静かな街で今、大変な事が起ころうとしています。」



沢田レポーター「物々しい警戒態勢です。私が目で確認できるだけでも数十人、60人以上は配置されているのが解ります。」



沢田レポーター「そしてあの建物。今は社団法人ニンナズの所有する建物に先日騒ぎになったイシュタラが潜伏しているとの事です。」



沢田レポーター「DBC独自の調査によりますとこの建物はなんと元々あの一世を風靡(ふうび)したゲーム、ファーストアドベンチャーシリーズの技術研究所だった所なんです。」



。。。。。



騒がしくレポートは続く。



副長ナム「宜しいんですか?」



エアバニー「ああ、一応本当のリアルタイム中継じゃない。一旦は局でうちの検疫が入る。」



エアバニー「副長、作戦開始だ!」



ナムは無言で敬礼した。









施設門前



表札は真新しい『社団法人ニンナズ』となっていた。



経営陣も一新して建前上は別会社だ。



インターホンのある門に向かって右側に10人、左側に10人他にも裏門や至る所に攻撃班は配置され、インターホン側の隊が呼び出しボタンを押した。



押しても音がなる訳ではなかったが5秒程で応答があった。



インターホン「はいー受付です。ご用件は?」



警備員だろうか?何とも緊張感のない年配の男の声だ。



イ特隊員「警察です。ここにイシュタラと思わしきものがいるとの情報を得ています。捜査許可は出ていますので操作にご協力頂けますか?」



インターホン「え?!えーっと、責任者に聞いてきますんでちょっと待ってくださいね。」



全く寝耳に水といった口調の声に隊員達の中にも本当にここなのかと言う疑問が浮かぶ。



しばらくして今度は落ち着いた声の男に変わった。



インターホン「申し訳ありませんが令状を提示頂いても宜しいですか?」



イ特隊員「令状はありません。イシュタラがここに潜伏したかあなた方で逃走を幇助した疑いがかけられています。裁判所からの許可はおりています。法的に緊急執行が可能です。速やかにご協力下さい。」



インターホン「突然そう言われましても。。」



イ特隊員「協力頂けない場合はこのまま強制執行になります。」



インターホン「。。。解りました。。。少々お待ちください。」





それを聞くと右側の隊員の一人が手を上げて合図を送った。



それを見るやいなや左右の隊20名は一気に正面玄関前まで進んだ。



そして後続の隊が空いた門扉の前を固める。



その手には皆、銃を持っていた。



そしてしばらくして正面のシャッターがゆっくりと上がって電源の落ちた透明の自動ガラス戸の向こうに数名の男が立っているのが見えた。



両脇の男が手動で自動ドアを押し上げると、真ん中の男は深々と頭を下げて自己紹介をした。



笹原「私、この施設の警備の責任者を努めております。笹原と申します。」



その眼光は強く、少しも引かない気迫が感じ取れた。



自然と隊員達も身構える。



この男、実はショウを迎えに行ったリーダーである。



笹原「中へどうぞ。」



意外とあっさり中へ通らせたので隊員達は少し拍子抜けした。



それから慌ただしく捜査が始まった。



しかし、いくら調査しても何も見つからなかった。



それもそのはずである。ショウはこの施設についた時、車ごと地下へ降りた。



つまり、このガラス戸とは明らかに違う螺旋状の通路を通り、さらに専用エレベーターで例の場所まで降りたのだ。



といってもこの施設はぐるりとイ特に取り囲まれているがその様な駐車場も下へ行くトンネルも見当たらない。



あるのはよく手入れされた池ぐらいだ。



池の周囲には芝生内立ち入り禁止と書かれた立て札のある芝生があり、地面に埋め込んたライトが転々と明かりを灯し、池には夜でも沢山の鯉が泳いでいるのがわかる。



それ以外には奥外の20台ほどの駐車場スペースが見えるだけだ。



捜査が入ってから30分が経過した頃、エアバニーの顔にも焦りが見え始めた。



レポーター達もアテが外れたかの様にテンションかさがり、時間だけが過ぎようとしていた時、それは突然現れた。



正面玄関前、丁度隊員と笹原が表で話をしている最中だった。



まず魔法陣が現れてその中に召喚獣が現れるかのように東風平(コチンダ)が現れた。



ショウに飛ばされて来たのだ。



隊員達は「イ、イシュタラか!?」



と、騒然となった。

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