第23話 嵐の前
イ特が出動しエアバニーが令状を取るように指示して数時間後。。
カプセルの消灯時間も過ぎてあたりはすっかり夜の景色になっていた。
ここ81区の消灯時間は現在でも使用されているタイムゾーンを使用して実際の日の入りの時刻に合わせている。
元々日照時間の少ない地域と違って81区はその方が自然で過ごしやすいからだ。
夜の灯りに包まれた23地区のその場所はかつてここで歴史的な古戦場として合戦があった場所なのだがもはやここの人の記憶にはなくなっていた。
かつて紀元前(E.C.前)の第一世代の大型カプセルがあった頃は区や地域の共同の図書館や電子書籍があり、当地の歴史などが保管されていたが世界各地での大型カプセル崩壊後、小型のカプセル群がそれぞれ自活する様になると電子情報も一度大幅に失われ書籍は流通しなくなり、それぞれが閉鎖的になってそういった取り組みも次第に消えていった。
一部地域の神事や祭りの中にその面影を残すのみである。
エアバニーは見た目に反して歴史探求が好きで色々と各地区の古いデータベースを物色しては歴史情報を集めていた。
氷河期以前のこの地の事も伝説としてある程度知っており歴史ロマンに想いをはせながら街を眺めていた。
エアバニー「かつてこの土地で攻めてきた2万5千からの大軍の敵を敵軍のわずか10分の1で打ち破る戦いがあったそうだ。」
運転手「?。。は、はあ。。」
エアバニー「俺達もその武将にあやかってみたいものだな。」
運転手「いきなりなんの話でしょうか?」
エアバニー「んー?今の俺の心境だよ。サークルアンデッドは一筋縄ではいかない相手だ。」
エアバニー「いつまでもこの81区で好き勝手やらせておけないからな。」
サークルアンデッドの施設はそこからさらに北の山手の方に数キロ入ったところにある。
23地区も数十のカプセル(番地)からなるので数キロのカプセルのジョイント部分のトンネルを通り目的のカプセルまで向かう。
そして最後のトンネルを抜けてエアバニー達は施設近く、目視で施設の建物が確認出来る距離まで車を進めた。
このカプセルは保健所や工場などが並ぶだけで住宅などは殆どない。
夜はとても静かなエリアだ。
エアバニーは建物がよく見える保健所の影あたりで車を止めて車を降りた。
すると副長ナムも降りてきて軽く敬礼し横にたった。
エアバニー「インプル!スピーカーホンで旧サークルアンデッド23区支社に繋げ!」
インプル「旧サークルアンデッド23区支社は現在、社団法人ニンナズによって管理されています。旧サポートセンターは利用可能です。お繋ぎしますか?」
エアバニー「ああ。頼む!」
インプルのスピーカーホンは当人の頭上あたりからまるでスピーカーがある様に音が聞こえる優れた機能だ。
静かな夜の街の一角で某未来のネコ型ロボットの登場するアニメで意地悪な男の子が『長編アニメ うる星ケニヤ』のビデオを買った事などを自慢するシーンのBGMを彷彿とさせるメロディがしばらく流れる。
副長ナム「。。。。」
インプルの通話『お電話ありがとうございます。財団法人ニンナズです。只今の時間は営業時間外となっています。平日午前九時より午後六時にお掛け直しください。。。。』
副長ナム「隊長。。ひょっとして私に待受メロディを聴かせたかっただけですか?」
エアバニー「わかる?」
副長ナム「ええ。なんとなく。。」
エアバニー「。。。じゃあ予告なしでいきますかー」
副長ナム「元々そのつもりでしょう?そろそろニュースは見ている頃です。」
副長ナム「すぐ踏み込みますか?」
エアバニー「まぁ待てよ。お客さんがまだだ。」
エアバニー「それより狙撃班を持ち場につかせておけよ!」
副長ナム「はっ!」
そしてまた二人は暫く車に引っ込んだ。
ここで以前ショウがインプルを使ってサークルアンデッドを検索した際に何も出なかったのを覚えている読者はいるだろうか?
そう、ショウのインプルアプリはサークルアンデッドによって都合の悪い情報は隠蔽される様にプログラムを改ざんされているのだ。
サークルアンデッドは現在社団法人ニンナズによって知的財産と不動産、施設の機械類などを買収されており、ニンナズによって非営利団体として運営されている。
ニンナズの役員の大半は83区出身あるいはその二世であり純粋な81区民はほとんど皆無であった。
元々サークルアンデッドもそうであったがニンナズは特にその傾向が強い。
エアバニーはこれらを一連の強制ナノマシーン適合実験を含めて83区による大規模な国際テロ行為と捉えて捜査していた。
しかし適合者はショウ同様騒ぐことなく自らの意思で姿を消してしまうのでなかなか捜査が進まなかった。
それだけにあのtamoriタクシーの情報はエアバニーにとっては待望の手掛かりだったのである。
色んな想いを巡らせながら車の窓からエアバニーはサークルアンデッドの施設をじっと見つめていた。
そこへ遅れてもう一台車が到着した。
それは明らかに報道関係の取材車であった。
中からマイクを持った女レポーターとカメラマン達が続々と慌ただしい感じで降りてきた。
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