第15話 バハムート
金森「これは凄い!彼はNPCを具現化したぞ!」
ショウがゲームのNPCであるミネルバを現実世界の感情のある生きた人間として具現化させ、そしてそれが更に召喚獣を具現化させた事に金森の胸は踊った。
男「申し訳ありません。インプルアプリの制御が一部損傷した模様です。」
そんな事は意にも介さず金森はモニターに近づいて興奮気味に語る
金森「それより見てみなさい。まるで生きているかの様に感情と自由な言動を有している!これは想像以上だ!」
中央モニターに映るミネルバは本来のゲームの設定よりも性格が少しショウの性格に影響を受けているようでそれもまた金森の興味をそそった。
ミネルバ「そこの小汚い顔の機械!覚悟は宜しくて?。。。。。!」
右の男「しかし、これ以上インプルアプリが開放されては危険です。速やかにアプリアンインストールをさせるべきかと思われます。」
金森「ふーむ。。。アンインストールは今攻撃でダウンさせている検体の中のインプルを一度完全に復旧させる必要がある。その間、無制限に能力を使える時間ができてしまう。。あっという間に空間転移されるかここが破壊されるだろう。。とは言えデン助だけでは荷が重いか。。『カンビ』を用意して少し様子を見ろ!」
右の男「は!」
そこにもう一人、科学者風の女が入ってくる。
金森の助手、西田恵美子30歳。
サークルアンデットにはE.C.(アースセンチュリー)252年加入。
翌年のAR機能実装で活躍した研究者の一人である。
西田「博士、この様なAIプログラムはNPCにはなかった筈ですがこれは一体。。?」
金森「そう言えば君にはこれまでこのプロジェクトの核心を話していなかったね。」
西田「核心。。ですか。。?」
金森「君はこの研究所が不老不死の研究から始まった事は知っているかね?」
西田「はい、それは勿論。ナノマシーンによる病原ウイルスの根絶、DNAとそのテロメアの修復等によって限りなく不死に近い存在になる為の技術の研究をしていた不老不死研究所が元になったと資料にありました。
氷河期終了によるE.C.(アースセンチュリー)231年から過去の国家に投棄され放置されていた使用済み核燃料が氷が溶けると共に次々に海に沈むと海が汚染され、それが雨となり地球全体が核に汚染されてしまいました。
そこで防寒用に設計された今のカプセルでの延命に限界を感じた研究者達が不老不死の研究所から離脱してサークルアンデットを結成し政治的決断を待たずにナノマシーンを使って外の世界に適応する為の『人類進化計画』を実行。今に至っています。」
金森「ふむ。模範的な回答だ。しかしそれであればこの様な魔法やNPC等の呼び出しその他戦闘に関するシステムの具現化は不必要だ。」
西田「イシュタラが現れたから?。。いえ、その前からこの能力は用意されていました。」
金森「そう、イシュタラが現れる前にからサークルアンデットはイシュタラとの交戦をも想定していたのだ。でなければわざわざ法に背く様な危険を犯してまでナノマシーンをバラ撒いたりしない。」
西田「まさかそんな。。?」
金森「考えてもみたまえ、カプセルで暮らす様になってから人類はただの一度も戦争行為をしていない。それはカプセルが損傷しては我々は生きていけないからだ。カプセルに穴が空けばあっという間にマイナス数十度の地獄だ。綱渡りの綱の上で闘う様なものだ。」
金森「イシュタラ宣戦布告以来、彼等の攻撃に簡単にカプセル群が敗退したのを見て解るだろう?カプセルに依存する我々はとても非力な存在だ。そしてこのまま行けば遠からず人類は滅びる。それを200年以上も前に予見していた人物がいる。」
金森「260年前、E.C.紀元前に極寒の中にあってその環境から逃げるのではなく克服しようとした者がいた。」
西田「紀元前。。?。。一体何の話を。。?」
西田は疑心暗鬼な表情で金森の話に耳を傾ける。
金森「むかし話だよ。隠蔽されているね。。そしてその者はその研究の中で気がついた。かつて絶対で完璧な力を得て天の怒りを買い、消し飛んた筈のその存在に繋がる方法を。」
金森「彼はまず器としてその存在の力に耐えうるだけの肉体をナノマシーンで作ろうとした。それからその存在へリンクを繋げようと試みた。しかしその試みはことごとく失敗し、検体は暴走を繰り返した。」
金森「しかしある時、ナノマシーンが遺伝子やミトコンドリアと共生を始めた。そこからはまるでナノマシーンが意思を持つ一つの生命体であるかの様に彼の制御を外れて検体の束縛を解いた。進化した検体は逃走し外の世界へ散った。」
西田「まさか、それって。。」
西田の額に汗が滲んた。
その時、監視室を轟音と共に大きな地響きが襲った。
西田はバランスを崩し倒れ込み、椅子に座っている者も机に捕まらければならないほどだった。
金森「何事かね!?」
金森が叫ぶもモニターは真っ白な光とノイズでしばらくは何も解らなかったが10秒か20秒かして徐々にノイズと光が晴れていった。
そして映像が回復した時、西田はモニターに映し出された光景に目を疑った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
地下10階
赤ら様に早く帰りたいミネルバは早々に大技を繰り出す。
ミネルバ「バハムート!テラフレイム!」
ミネルバがそう言うとバハムートは
バハムート「承知」
と即座に自身のスペシャルムーブ(必殺技)を繰り出す。
バハムートは力強く力み、口を開くとエネルギーの塊の光の玉がバチバチと言いながらどんどん膨らみ、その巨体の半分程の大きさになるとそこから強烈な光線が放出された。
光線といっても可視光線を含めたほぼ全ての周波数の光が眩いばかりの光を放っているのだ。
可視光線ですら目が眩むほどの強さでガンマ線やアルファ線までも含む光と呼ぶにはあまりにも危険なエネルギーの塊である。
機械人形「あんだ?ソレ?眩ぢい。。」
次の瞬間、バハムートの雄叫びと轟音と共に全てが真っ白になった。
光が収まると機械人形は消し飛んでいた。
そして機械人形のが消炭になった跡にボロボロになったショウが倒れていた。
その後ろの幅が3メートルはあろうかという分厚い壁に大穴が空き、中には広い空間があるらしく円筒状の水槽の様なガラス張りの筒からの青い光が無数に見えていた。
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