第16話 壁の向こう側

ショウはボロボロになりながらも立っていた。



ミネルバはバハムートを戻すと、さもスッキリした風に晴れやかな顔で



ミネルバ「キレイになりましたねー。。ん?」



と怒りに震えるショウに気がついた。



ショウ「。。。。な」



ミネルバ「あら、tamori。そんな所に隠れていましたの?」



ショウ「。。。はな」



ミネルバ「え?何ですの?」



ショウ「お前はな!!!少しは後先考えれないのか!?」



と、大声でキレるショウにミネルバも逆ギレする。



ミネルバ「まぁ!助けて貰っておいてその口の聞き方は何ですの!?畏くもこのヒュムリア王国第一王女、ミネルバ・フォン・ヒュムリア様に対して失礼ではなくて!?」



ショウ「ふざけるな!こんなの外でやってたら大変な事になってるぞ!」



ショウ「お前は俺達を殺す気か!?」



ミネルバ「俺達?他に誰かいまして?」



ショウ「馬鹿!気付かなかったのか?」



ショウ「それに自分で様とかつけるな!」



ミネルバ「ば、馬鹿とは何ですか!?この無礼者!」



ミネルバ「tamori!そこに直りなさい!」



怒るミネルバを無視してショウはアナトに走りよる。



ショウ「アナト!」



バハムートの光を浴びて更に苦しそうなアナトは既に意識がない。



ショウ「ミネルバ!回復魔法使えるか?」



ミネルバ「tamori、わたくしの話を聞いてますの?」



ショウ「早くしろ!!!」



あまりの剣幕のショウにミネルバは仕方なく応じた。



ミネルバ「はぁ。。はいはい、しばしお待ちくださいませっ」



ミネルバが魔法詠唱ポーズに入るとミネルバの足元にエメラルドグリーンの魔法陣が現れる。



ミネルバ「キュアーオール!」



ミネルバを中心に優しい光に包まれて味方全員の外傷が癒やされる。。



ショウもほぼ全快し、アナトもウイルス以外のダメージは癒えた様だった。



ゆっくりと目を覚ますアナト。



アナト「。。。!これは。。?」



ショウはホッとして



ショウ「良かった!取り敢えずは無事だな!」



アナト「まぁな。。しかしこのザマだ。。情けない。」



ショウ「立てるか?肩に掴まれよ!」



アナト「あぁ、すまない。」



アナトに肩を貸すショウを見てミネルバは不機嫌になる。



ミネルバ:な、何ですのあの女?tamoriとどう言う関係なの?



ミネルバ:し、しかも。。美人!



ショウ「隣の部屋に何かある。。行ってみるか?」



アナト「あぁ。ここにいても事態は好転しないしな。前に進もう。」



熱で苦しそうなアナトだが目は死んでいなかった。



ショウ「よし!行こう!」



歩き出す二人を追いかけて慌ててミネルバも付いていく。



ミネルバ「ちょっとtamori!ま、待ちなさいよ!」



ミネルバ:それからこの女!tamoriに引っ付き過ぎなんですけと!





バハムートが空けた穴は壁一面に及んでいた。



壁の幅は分厚く3メートルは下らない。



しかも何重にも金属や他の素材の層が重ねられていた。



他の壁も恐らくそうであろう相当な耐久性を担保できよう事は見ただけでも伺えた。



その穴の向こうは薄暗い大きな部屋があった。



中に入ると天井はショウ達が落とされた部屋と同じくかなり高く、そこには高さ2.5メートル程の円筒状の密閉された水槽が薄く無数に光っていた。



そこには色んな生物や奇怪な生き物、機械人形の一部の様な生き物か機械かわからない様なものまで浮かんで眠っていた。



それらは呼吸器を付けている訳でもなく、ショウ達と同じく呼吸が必要ないかあるいはその液体の中で呼吸可能なのであろうか、どの生物も死んでいるわけではなく眠っている。



しばらく奥の方へ歩くとそんな中に『人間』の水槽群があった。



殆どの『人間』は異常な突起や局所発達、肌の形状変形等が見られ、中には眠りながらもがき苦しむ者もいた。



老若男女問わず胎児も老人もいた。



電極を付けられて痙攣している者や硫酸等の危険な化学物質を投入している水槽もある。



ショウ「こ、これのどこが治療室なんだ!?明らかに何らかの実験をしている。」



怒りが抑えられないショウ。



ミネルバ「うわーぁ。。悪趣味。。」



アナト「。。解っただろう?自分でナノマシーンをバラ撒いて適合反応のあった者をいじくり回して自分達の実験や兵器に利用しているのだ。」



アナト「ハァハァ、半分はこれをお前に見せる為にわざわざ危険を犯してここまで来たんだ。」



ショウ「なんでそこまでして?」



苦しそうな中にアナトは少し笑顔を見せて



アナト「フッ、さあな。。すぐに解る。」



アナト「他守、お客様が来た様だ。あしでまとで済まない。」



そう言われてショウが部屋の一番奥に目をやると、そこには江戸時代の旅人を思わせる格好に目だけが天井見ている中肉中背の青髭の男が扉を背にして立っていた。



カンビ「よろしゅうに。カンビと申します。」



とその男は目は上向けたままショウ達の方に顔を向けてニヤリとした。



その男を見た瞬間、ミネルバの背筋はゾッと凍りついた。



ミネルバ「いやぁぁぁ!!何ですのあれ?!」



とショウの後ろに隠れるミネルバ。



ミネルバ「無理よ!無理ですからね!」



とショウにすがりよるも。



ショウ「いや、お前の召喚獣なら直接触らないし平気だろ?」



と、あっさり突き放すショウ。



ミネルバ「ちょっとtamori!最近わたくしに冷たいんじゃなくて?」



カンビ「ちょっとあんさん達、お取り込み中にすんませんけどそこで暴れられでもしたらその中の『患者さん』死んでしまいまっせ?」



ショウ:『患者さん』だと?。。何だコイツ?



カンビ「まぁ、悪いようにはしませんよてこっちの部屋に来とくれますやろか?」



と、初めて目線を下ろしたがどこか明後日の方の床を見つめた。



その瞬間、『カンビ』の後ろにあった重厚な扉が真ん中で割れて自動で両脇にスライドして開いた。



ショウ:罠か?



ショウ:ここを壊されたくないって事。。。だけよな?



ショウ:じゃあ逆にここが安全?



カンビ「ささ、早うこっちへおいでやす。」


そのいかにも怪しい男はショウ達を開いた扉の向こうへ誘うが相変わらず目線は天井を向いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る