第4話 ニュースエージェントの店主


カプセル内の街の外観は現在とそれ程大きくは違わないようにも見えるが一つ一つの壁が分厚く作られていて、カプセルに何かあった際も一時的には個々の建物で寒さを凌げるように配慮されている。



ショウの住んでいる建物もフラットと呼ばれる集合住宅で、そこからインビジブル(透明化)したまま門を出て、フラットの前の道幅5メートルほどの道を大通りに向かって歩いた。



100メートルほど先にある大通りまでは街頭と特に大きくもない街路樹が何本かある程度のひっそりとした道である。



そこに一人目の通行人が前から歩いてきた。



年の頃30代くらいの女の人だ。



この時代のこの地方のファッションとしては一般的な現在のフィンランドの民族衣装をもう少し落ち着いた雰囲気にした感じの暖かそうな服装だ。


ショウの様に仕事がら作業着の者も居るには居るが警官や駅員等を除けば殆どの人はそういった服装をしている。


1年を通して気温は15度に保たれているので少し肌寒いように思うかも知れないがカプセルの外は氷河期が終わるまでのここ数百年極寒のマイナス70度だったのだ。

それを思えば少し温かい格好をすれば済むので快適と言える。


農業プラント用のカプセルに優先的に電力を回しているので街は苦にならない程度に少し寒く設定してあるらしい。


ショウはその女性と絶妙な距離感で視界に入るのを確認してから顔を見て軽く会釈した。


しかし反応が見えない。


さらにショウは思い切ってすれ違い様に変顔をして見せた。


が、結果は完全スルー。



ショウ:どっちだ?



ショウ:俺が見えなかったのか?



ショウ:それとも変な人だと思われてガン無視?



考えてみたらこんなファンタジー溢れる格好をしたマッスルにすれ違い様に変顔をされたら見なかった事にしてもおかしくはない。



ショウ:うーん。。次は道でも聞いてみるか?



ショウ:いや、それだともしインビジブルでこちらが見えてなかったら、声だけして姿の見えないホラー体験になってしまう。



ショウ:それに叫ばれても厄介だ。



ショウ「やっぱ売店行くか。。」



ショウは仕方なく売店の方に向かった。



大通りに出る頃にはインビジブルの効果も切れたがそこは郊外とは言えこの街のメインストリート。

そこそこ人も通っており、多少目立つ格好ででもさほどは気に留められないだろう。


ショウは自分にそう言い聞かせながらそれでいて内心ドキドキしながら大通りに出た。



大通りに出るとすぐに交差点と右手に橋があり、橋の下をリニア鉄道が通っている。


その交差点を渡り、右手の橋を渡った所にニュースエージェントと書かれた黄色い看板の見える小さな売店がある。


品物の数も質もいまいちだが近いのでショウはよくここにちょっとした食料品を買いに来ていた。


もちろん食料品をまとめて買う時は大きな店に行くのだか周回するいわゆるバスの様な乗り物に乗って二駅も行かなくてはならなかったし、ショウはこの店に来ると決まって『ガレッジボール』と言う球技の話をした。

このカプセルもプロチームを所有しており、公認ギャンブルとなっていた。

試合の前には必ず寄って話をしている程だ。



交差点


信号を待っている間、周りの視線が気になって仕方なかった。



信号待ちをしている人が他に数人、しかも自分より後ろにいたからだ。



ショウ:自分は今どんな風に見られているんだろう?



今すぐこの場を離れたい。。



そういう思いがピークに達した頃、ようやく信号が変わり、道路を渡りはじめた。



その時である。



ショウの耳に小さな女の子の声が飛び込んだ。



女の子「あのお兄ちゃん、なんで頭の上になんか書いてあるの?」



母らしき声「シッ!!」



思わず振り返ったショウのその赤く光る瞳に後ろにいた人々は狼狽えた。



男「まさかイシュタラか。。?」



男「おい、誰か通報しろ!」



またたく間に騒ぎになった。



ショウ「いや、違。。」


人々「うわぁぁー!イシュタラだー!」


人々はパニックになり


ショウ自身もそれに驚いて思わず逃げ出して売店に飛び込んでしまった。



店主「いらっしゃい。見ねえ顔だな?この時勢外国人とは珍しい。」



と、出てきた店主だったがtamoriが人ならざる物であることにすぐに気づいた。



それもそのハズである。



銀髪に光を帯びた赤い目、口元には牙が見え、少し尖っ耳に爬虫類系の尻尾まである。



因みにハットを取ると角も生えている。



さらに頭の上にはtamoriと言う文字がどういう原理か浮いている。



ショウはこの姿をゲーム内で見すぎて麻痺してしまっていたのだ。



ニュースで何度か見たことのある亜人系のイシュタラもそんな感じ種類を見かけたことがある。



いくつかの動物や人間を合体させた様な異様な姿。



そのイシュタラを連想させるからとファーストアドベンチャー18は避難され、消えていったのだ。



気がつくと店主は自分に銃を向けていた。



tamori「俺はショウだ!おっちゃんいつもネッシンのラーメンを買いに来るショウだ!」



店主「こいつ。。なに言ってやがる?」



ショウ:うかつだった!どうする?明らかに信じていない。。



tamori「おっちゃん。。ほら、昨日もラーメン買ったついでにガレッジボールの話したじゃないか!明日はファング戦だ」



tamori&店主「ファングには負けん!」



店主の目から敵意が消えて行くのがわかった。



店主「お前本当にあんちゃんか?これは一体。。?」



店の外が騒がしくなっていることに気づいた店主は突然銃で窓を割り、さらに割れた窓の外を2発銃で撃って店の外へ出て怒鳴った。



店主「赤いバケモンが店の窓を割って駅の方に逃げた!」



振り返って店主は「何があったか知らねえがあんちゃんは悪い奴じゃねえ。時間稼いでるうちにうまく逃げな。また落ち着いたら話も聞かせろよ!」



そう言うと外へ出て警官と何か話していた。



ショウはすかさず「インビジブル!」と姿を消し裏口から逃げた。



ショウ:最悪だ。一旦部屋に戻ろう。。



ショウは姿を消したまま部屋まで戻るとクタクタになってそのままベッドで寝てしまった。




そしてショウはこの後、運命的な出会いをする事になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る