第3話 インビジブル
目の前が自分の部屋に戻りほっと胸をなでおろしたのも束の間、まず自分の着ている服に目を疑った。
それは赤魔導士の専用装備『レッドソーサラーローブ』そのものだった。
ショウ「え?なんで?」
うろたえながら自分の体や衣服を確かめる。
筋肉量も衣服も何もかもが本来の他守ショウとは違いゲーム内のtamoriそのものだった。
ショウ「そ、そんなまさか。。」
洗面所へ駆け出し、恐る恐る鏡で自分の顔を確かめて絶句する。
頭の上に白く輝くtamoriの文字。
銀髪の奥ににするどく光る赤い眼光。
驚いて少し開いた口から見える牙。
全てが自分が作り育て上げたtamoriそのものだった。
状況を受け入れられないショウは腰が砕けたかの様に部屋に戻る。
ショウ:落ち着け。。落ち着け。。
と心の中で何度も自分に言い聞かせた。
ショウ「何か起こっている?ゲームのバグ?」
ショウ「ゲームのバグならオフィシャルに何か載ってるよな。。」
ショウ「インプル!」
ショウが脳を補助するシステム『インプル』のコンソールを呼び出すそのフレーズを声に出すと、目の前にコンソールが現れてインプルは文字の出力と同時に音声で
インプル「こんばんは」
と答えた。
ショウは続けて「ファーストアドベンチャー18の状況を調べてくれ」
インプル「わかりました」
インプルは言う。
ファーストアドベンチャー18はインプルシステム上で動作するVRMMORPGです。
E.C.249年 ファーストアドベンチャー18サービス開始
250年 ファーストアドベンチャー18 第二章エリア開放
251年 ファーストアドベンチャー18 第三章エリア開放
254年 ファーストアドベンチャー18 AR機能実装
ショウ「え?AR機能?? そんなのあったんだ。。ひょっとしてその影響??」
インプル:257年末、ゲーム制作会社サークルアンデッド倒産によりファーストアドベンチャー18サービス終了
その瞬間ショウは固まった。
ショウ「そんな、まさか。。さっき普通にログイン出来たし。。?」
そう言うとショウはまたインプルでファーストアドベンチャー18のタイトルを確認した。
すると今度はタイトルロゴの下にコメントが流れていた。
『現在、メンテナンス中です。メンテナンス終了時間は未定です。現在プレイする事は出来ません。』
ショウ「GMコールは?」
ショウは慌ててゲームの方のコンソールからGMコールしようとしたがメニュー自体がなくなっていた。
ショウ「インプル、ゲーム制作会社サークルアンデットを調べてくれ」
インプル「ゲーム制作会社サークルアンデットの検索結果はありません。」
ショウ「ちょっと待ってくれよ。。」
ショウ:落ち着け、まずARからだ。もしAR機能のバグならこの姿に見えているのは自分とファーストアドベンチャー18のプレイヤーだけの筈だ。
まずはいつもの売店に行って酒を買ってみよう。
見た目が変わってないなら店のオヤジが必ず声をかけて来る筈だ。
ショウ「よし!」
ショウは何か覚悟を決めたように立ち上がった。
そして近未来的な雰囲気の玄関で息を呑む。
部屋を出るときに知り合いに出くわしてもし、向こうからもこの姿に見えていたら明らかに不自然だ。
下手をしなくても通報されるかもしれない。。
ショウの額に汗がにじみ出る。
ショウ「!そうだ。。」
ショウ:ゲームだったら姿を消す魔法がある。この姿がもし自分にだけ見えているなら消える魔法も自分が消えていると思っているだけになる。
なら売店まで行かなくても消えた状態で他の人の反応を見れば取り敢えずこの現象を自分だけが見えるのかどうかわかるはずだ。
そう思うやすぐに「インビジブル!」と唱えた。
ゲーム内のテレポトの時と同様に足元に魔法陣が現れ、「tamori」の姿をかき消した。
ショウ「よし。。」
ショウはドアの外に人の気配がないか確認しつつそっとドアの外に出た。
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