第2話 tamori

眼下に広がる街の建物や道は石造りでそれでいて怪しげな雰囲気の植物と溶け合う様に調和している。



道行く人々は魔族か獣人、ゴーレムなどで構成されており感情もない様子でゆっくり歩いている。


そしてその頭上には青い文字でそれぞれの名前が表示されている。


この青い文字の名前のキャラクター達はNPCであり、人の操作するキャラクターではない。


時折、スピーディに走って過ぎ去っていく白い文字の名前のついているものが人の操作するキャラクターだ。



昔はそんなキャラ達が大勢走り回っていたが今はまばらにポツポツいる程度だ。



当然ショウの操る険しい表情の赤い目のキャラクターの頭上にもtamoriという白い文字が表示されている。



ショウ「人すくな。。」



ショウ「。。。よくこのデミューズ北部の北門で待ち合わせしたなぁ。。」



ショウはかつての仲間たちと楽しそうに走り回っていた頃を思い出していた。



寂しさからか自然と独り言も溢れる。



ショウ「uruさん、actorさん、lespさん、、、ギルドリンクはいつも一杯で賑わっていたなぁ。。」






40人ほどいたギルドリンクの仲間達の記憶が一層寂しさを誘った。



ショウ「街の外も見てみるか」



そうつぶやくとショウ(tamor)はデミューズ北部北門へ向かった。



デミューズというのはこのゲームの中の国のひとつで冒険者tamoriの故郷という設定だ。



他にも以下のような国がゲーム内に存在する。



ヒュムリア 人間とエルフとドワーフの国



ウィザーズ 精霊と魔法使いとケットシーの国




ここ、デミューズでは北部、中央部、魔工房、南部がありこの北部の北門から遠出するのが色々と便が良かった。




石畳と10メートルはあろうかという高い石壁で囲まれた長方形の空間に重厚な扉が三つ開け放たれている。



扉にはそれぞれ門番のNPCが2人左右に配置されている。



ここでは、名前に同じ色の下線が入った幾人かのプレイヤーが待ち合わせをしているのか立ち話をしていたり寝転んだり合成スキルを磨いたりと時間を潰していた。



その光景を見て、またなんとも言えない哀愁の念が込み上げてくる。



ショウ(tamori)はそんなプレイヤー達を横目にその身長の3倍はあろうかという門から表に出た。



街の外は怪しい雰囲気を持つ植物がまばらに生えた草原で林もいくつか見える。



遠くには大きな崖を望みそこにある滝から一本の川が流れていた。



聞き覚えのあるBGMにそこかしこにいるレベルの低い小さな角の生えたウサギの様なモンスター。



何もかもがあの頃のまんまであった。



ショウ「ちょっと散歩でもしてログアウトするか。。」



そう言うとどこからともなく笛を取り出しピイイー!とならした。



すると、これとどこからともなく現れた2メートルほどの小さな移動用のラプタルと言うドラゴンに跨またがり走り出した。



軽快なBGMに変わったがショウの心には何かポッカリ穴があいた様だった。



しばらく散策した後、することもなく



ショウ「やっぱこんなもんだよな。。」



とドラゴンから降りて「テレポト!」と言うと魔法詠唱のポーズを取り、足元に現れた魔法陣から光に照らされながらてゴォォ!という音と共に出現した黒い転送魔法の玉に吸い込まれて行った。



一旦目の前が暗くなり、気付けばまたエッグハウスへと戻っていた。



タマリン「オポオポー!ご主人様お帰りオポー!」そしてまたクルクル回る。。



ショウ「タマリン、メニュー」



ショウがそう言うとコンソール画面が開いた。



ショウ「あれ?」



コンソールの中にあるはずの『ログアウト』が『現実世界に出る』に変わっている。



ショウ「これ、ログアウト。。だよな。。?」



恐る恐る『現実世界に出る』を選択しショウはログアウトを試みた。



するといつもの様にキャラクター選択画面へ戻り普通にログアウト出来た。



はずだった。



そしてショウの人生はそこから夢にも思わない方向に進み始めた。

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