第18話 玉無しの行方
最初の謎解きである移動床トラップを攻略した。
かなり変則的な攻略方法。モニカとナギサは力技。ウルザは無茶苦茶にパネルに乗っていって十回目でようやくゴール地点に到着した。
まともに謎を解いて扉にたどり着いたのは俺とエアリスだけである。おかげで妙に虚しい感情が俺の胸に湧いてきてしまう。
「さて……最初の問題を無事にクリアしたわけだが、本当にこの道の先にレオンがいるのかな?」
濡れてしまったウルザの服を乾かすための休憩中、ふと頭に浮かんだ疑問をつぶやく。
これまで、ダンジョンのあちこちに残された血痕や足跡などの痕跡をたどって奥に進んできた。
このダンジョンは発見されたばかりで未踏破のダンジョン。痕跡があるとすればレオンか、レオンと一緒に落ちたボルフェデューダという敵のものになる。
「俺達が追っているのは、本当にレオンが残した痕跡なのか……? ひょっとしたら、見当違いな方向に進んでいる可能性もあるよな」
「大丈夫ですよ、ご主人様。こちらにあの『玉無し』がいるのは間違いないですの」
「ウルザ?」
ビショビショに濡れた服を脱いで裸になっているウルザが断言した。
ウルザは濡れた装備をロープで吊るしており、ドライヤーのようなマジックアイテムを使って乾かしている。
「この道の先に、ちゃんと金髪の『玉無し』がいるみたいですの。安心してよいですの」
「『玉無し』って……レオンのことかよ」
俺はチラリとモニカの方を確認した。
モニカは少し離れた場所で横になって休んでいる。正座になったエアリスが膝枕をしてモニカのことを寝かしつけていた。
ダンジョンに入ってからすでに二時間ほどが経過している。元気良く戦っているように見えたモニカであったが、やはり慣れない戦いで疲れているのだろう。小さな体がゆっくりと上下して、ひかえめな寝息が聞こえてくる。
「レオンはまだ『玉無し』じゃないだろうが……いや、仮に玉無しになっていたとしても、お前のせいだ」
俺はウルザがレオンの股間を蹴り上げた時のことを思い出し、ブルリと身体を震わせた。
「それよりも……この先にレオンがいるとどうしてわかるんだ? 何か根拠でもあるのか?」
「この先からあの男の血の匂いがしますの。間違いありませんの」
「血って……わかるのか?」
犬でもあるまいし、まさか血の匂いで追跡できるというのだろうか。
「他の匂いはともかくとして、鬼人族は血の匂いには敏感ですの。一度嗅いだ血の香りは
「殺し屋か殺人熊のような生態だな。だが……そうか、この先にいるのか」
もちろん、レオンを探すためについてきたのだから問題はない。
問題はないのだが……どうして、レオンはダンジョンを奥に進んでいるのだろうか?
入口に向かうつもりで誤って奥に進んでしまっているのか。
それとも……ボルフェデューダがレオンを抱えて、無理やりにダンジョンの奥に引きずっているというのか。
レオンもボルフェデューダも、どちらも死体は見つかっていない。
モンスターに喰われてしまったとしても骨くらいは残っているはずなのに。
「お兄さん、そろそろ出発しないかな?」
「む……」
考え込んでいる俺のところにモニカがやってきた。
先ほどまでエアリスの膝枕で眠っていた彼女だったが、十分に疲れは取れたようだ。瞳は輝いて肌もツヤツヤだった。
「あ、もう服が渇いてますの。こっちはいつでもオッケーですの」
ウルザの方もびしょ濡れの衣服が乾いたようだ。下着の上にテキパキと装備を身につけていく。
「そうだな……それじゃあ、行くか!」
俺は立ち上がって、ダンジョンの奥へと目を向けた。
レオンが、ボルフェデューダがどのような目的でダンジョンに潜っているのかはわからない。
ひょっとしたら、この先にとんでもないものが待ち受けている可能性がある。
だが……何が待っているとしても、引き返すことはあり得ない。
アレが玉無しであるかはともかくとして、この世界にはまだ
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