第27話 日南整体師




「んー? もしかして今、歳の話した?」

「いやいや、気のせいですよ」


 とっ、年上? 凜桜パパより年上? 

 その衝撃的な言葉に、動揺を隠せない。それもそのはず。なんたって目の前に立つこの人物。身長こそ小さいけれど、その顔はやはり幼く見えた。そしてそれに相反する大きな山脈。寝ていてもその大きさが分かったそれは、立ち上がると更にその存在感を見せつける。まるで小玉のメロンでも入っているかの様な胸部。

 なんというアンバランスさなんだろう。


「だったら良いけどさっ。っと、あれ? こちらの方は?」


 あっ、やべ……見てたのバレたか? ここはごく普通に挨拶しなきゃ……


「あっ、初めまして。雨宮湯真と言います」

「ほうほう……ん? 雨宮? 湯真? 雨宮……はっ! まさか!?」


 なっ、なんだ? 名前聞いて人の顔ジロジロ見てその驚き様!


「ツッキー? もしかしてこの子!」

「おそらく希乃さんが思ってる事は正しいですよ?」


 思ってる事? しかもツッキー? 待った待った、色々と整理が……


「うわぁ! 海君と湯花とうかちゃんの子どもだぁ!!」


 えっ? ツッキー? なんでしょうその呼び方! てか、それよりもなんで父さんと母さんの名前を知ってんの? ちょっとタンマ!


「正解ですね」

「凄い凄い、そう言えばどこか面影が海君に似てるもんねぇ?」

「あっ、あの……何で父さんと母さんを……」


「ははっ、無理はないよ。だって希乃さんは湯真君のお父さんお母さんの大学の先輩であり、見知った仲だからね?」

「……えっ!?」


 大学の……先輩? 黒前大学の先輩?


「ついでに言うと、なつめちゃんと同級生なんだよ? えっとねぇ……君達の伯母さんかな?」

棗伯母なつめおばさん……と……同級生?」


「ふふっ、そうだよー」

「……えぇぇぇ!!」


 ハッキリ言って信じられない。目の前の人物の正体が、色々と斜め上を行っていて整理がマジでつかない。落ち着け? 

 まず、この人は父さんと母さんの事を知っている。

 そして凜桜パパより年上で、棗伯母さんと同級生? ちなみに棗伯母さんっていうのは、父さんのお姉さんだ。確か、その差は3つ。凜桜パパより年上ってのも当てはまる。


 ……はっ? 待て待て、そうなるとこの……日南希乃さんて人の歳はざっと計算しても4……


「ふふっ、その驚いた顔は湯花ちゃんそっくりだねぇ」

「うっ、うわっ」


 って近い近い! 下から覗きこまないで下さい! しかも首元から……みっ、見えそうなんですけど!


「希乃さん、高校生相手ですよー? 距離距離」

「おっと失礼。いやぁ思わず懐かしさが爆発しちゃったよ」

「だっ、大丈夫です」


 ホントは大丈夫じゃない。リアルロリ巨乳(合法)が目の前に現れるなんて思いもしなかったんですけど!? 


「まぁ、再開と初対面を喜ぶのはこれ位にして……まさにタイミングがぴったりな事だし、早速湯真君の相談に戻ろうか?」

「ん? タイミングぴったり? 私が帰って来たのと? ほうほう、それは実に興味深いねぇ」


 ん? あっ、そう言えば俺、凜桜パパに相談しに来てたんだった! 慌ただしい状況に忘れかけてたよ。それで? 凜桜パパ曰く、この目の前のロリ巨乳さんが俺の悩みを解決してくれる人らしい。整体師って言ってたっけ……


 それにしても一体何者!?



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「なーるほど! 良く分かった!」


 テーブルに座り、目を輝かせているロリ巨……日南さん。最初は何と言うか、得体も正体も知らない人ってインパクトが強かったものの……改めて凜桜パパが紹介してくれて、その印象はガラッと変わった。


 日南さんは、ここで働く整体師。柔道整復師やら、あん摩マッサージ指圧師といった国家資格はもちろん、その他民間の資格も数多く所有しているらしい。

 そして俺の父さんと母さんの先輩であり、棗伯母さんと同じ年で同級生。3人から名前の1つも聞いた事が無かったけど、どうやらここ数年は技術や知識を磨く為に海外へ留学していたそうだ。つまり、俺達が物心付いた頃には、とっくに日本には居なかった。

 でも凜桜と恋桜とは面識があるらしい。そりゃ働いているんだから当然か。


 まぁ、そんなこんなで今日この日に晴れて海外から戻って来たんだそうだ。だからこそ、凜桜パパの言っていた意味がようやく分かる。


 帰国のタイミングで、本人が居る時に俺が相談。しかも体の疲労や、マッサージに精通した整体師である希乃さん。


 これはある意味……運が良いとしか言いようがない!


「だからさ? 練習も良いけど、体から効率良く疲れを抜く事も大事。そこで、希乃さんに的確なアドバイスなんかをお願いしたいんだ」

「もちろん! 全然良いよ?」


 えっ? 返事軽っ!


「えっ? いっ、良いんですか?」

「うん。いいよぉ! 私もシャッチョサーンに雇われてる身だから、そういう仕事が無い時は大抵ここか、処置室居るからさ? 時間内でなんも無かったらウェルカムだよ」


「ほっ、本当にいんですか? 凜桜パパ」

「うん。いいよ? てか、むしろ俺がお願いしたんだから、それ位全然許可するよ」

「ふふっ、そういう事」


 まっ、マジか? ちょっとこれ、恵まれ過ぎじゃね? 良いのか本当に?


「めちゃくちゃ嬉しいです! ありがとうございます」

「いやいや……じゃあさ? さっそく診察に移っても良いかな?」

「俺は全然良いですけど、希乃さん疲れてないんですか? 今日は挨拶だけの予定でしたよね?


「全然! それに棗ちゃんの甥っ子、海君と湯花ちゃんの子どもと出会えたら、疲れも何もかも吹っ飛んじゃったよ!」

「ははっ、じゃあ宜しくお願いしますね?」


 えっ? 診察? マジで良いんですか? これは……ツイてる!


「日南さん、良いんですか?」

「ダイジョブ、ダイジョブ。任せなさい」


 おぉ……表情が変わった! これは出来る人の目だ!


「じゃあお言葉に甘えて……お願いします。まず何をすれば……」

「とりあえず、筋肉量とか体格を知りたいかな? 座ったままで良いから、ちょっと触るね?」


 えっ? 触る? 触るって……


「えっ? どこを……っ!」

「ふむふむ、足は良く鍛えてるみたいだね」


 はっ! はぁぁ!? 待って、前かがみで足触ってる? うっ! これは……ヤバいヤバイ! 色々とヤバい!

 谷間が……山脈が……ちょっと触れてるんですけど? 足に触れてるんですけど!?


「えっと、次は腕だねー」


 っ!!!


 腕!? いや、腕もって……ヤバいヤバいヤバい! その近距離で二の腕触られたら当たって……くっ!! やっ、柔らかい……柔らかい……これは……これは……


「よっし。じゃあ次は上着全部……」



「脱いでもらおっかなっ?」



 ある意味ヤバ過ぎるぅ!!



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