第11話 どうしてこうなった
休日ともあって、買い物客で賑わうショッピングモール。
その中心とも言えるエントランスで俺と、
「なぁ、恋桜」
恋桜は、
「なに? 湯真」
なぜかボーっと佇んでいた。
「どうしてこうなった?」
「知る訳ないでしょ? ものの数秒で計画がパーになったんだから」
何が何だか分からないまま、とりあえず状況を確認しようと話し掛けてみたものの、その声はお互いにどこか上の空だ。それに……確かに恋桜の言う通りだ。
一瞬の刹那に起こった出来事に頭が付いて行かないのは事実。
落ち着け、落ち着け。まずはゆっくり思い出そう。
そうだ。俺達は4人でBリーグの試合を見ていたんだ。最初は隣の凜桜と話も出来て良い感じだったけど、気が付けば完全に目の前のプレーに夢中になってたのは……反省すべき点だ。
そして、肝心の試合結果は父さんと聖さんを擁する青森ワンダーズの勝利。会場の盛り上がりに感化されて、俺達もテンション上がったよ。
そして、興奮冷めやらぬ内に隣接するここへ来たんだ。そう! ここまでは順調だった。
後は計画通りに俺と凜桜、海真と恋桜で行動出来る様に誘導するだけ。その第一声は恋桜の役目。
それを実行する前に、アイコンタクトでお互いトイレに。その場を離れ……入念に再確認を行い……決意を胸にいざ行こうとした。同時に戻ると変だから、俺が先にね?
だが……ここで予想外の出来事が起こった。そうだ、これが全てを狂わせた元凶。
通路から遠目に見えたここで2人は仲良く何かを話していた。
内心、ちっ! なんて思いながらも、これから始まる2ショットデートに胸を弾ませていたその時……
奴らが現れたんだ!
雨宮初花、月城廉ニ……どこからともなく、このシスターブラザーコンビがなっ!
突然の出来事に、思わず立ち止まってしまったよ。そんな俺を変に思ったのか恋桜も急ぎ足で傍に来た。
そして言葉を発する間もなく、なぜか廉二と一緒に歩き出す海真。初花と歩き出す凜桜。
一瞬の出来事に、俺達はただただ見ているしか出来なかった。それぞれ別の方向へ歩いて行く4人を。
そして唖然としながら、さっきまで皆が居た場所へその歩みを進め……今に至る。
……って! 完全にあいつらのせいじゃねぇか! なになに? 突然出て来たと思ったら、なんでそれぞれを連れて行ってんだよ!
くそっ、さっき思ってた事が的中じゃねぇか。
『……あの2人、今の所は何の邪魔もしてはいないものの……油断は出来ないな? 良い意味でも悪い意味でも空気読まないからな?』
早速のフラグ回収だよっ! 最悪だよっ!
とりわけ、初花の奴。普段はやたらと俺達に対してお節介な態度してるくせに、肝心な時がこれだぞ? いくら廉二と一緒とは言え、許すまじ。この報いは必ず受けてもらおう。
っと、愚妹への制裁は後から考えるとして……隣の恋桜も同じ気持ちなんだろうな? とりあえずこれからどうするか聞いてみ…………っ!!
「……廉二……廉二……あの野郎どうしてくれようか……」
こっ、恐っ! 目が恐ろしいよ。体から変なオーラ出てるよっ! 人目があるからっ!
「おい恋桜。不吉なオーラを放つのは止めてくれ。ここじゃ人目があり過ぎる。誰か知り合いにでも会ったらマズいぞ?」
「大丈夫。もうちょっとで呪い掛け終わるから」
「おっ、おう……」
呪いって……何? お前そっち方面に詳しいの? 少なくとも俺には掛けてくれるなよ!?
そんな不安に煽られながらも、俺は周りに知り合いが居ないか様子を伺う。すると、数秒後一通りの過程を終えたであろう恋桜がようやく口を開いた。
「ふぅ。オッケーお待たせ」
その声は先程のドスが聞いた声とは違い、比較的いつもの声。それにどこかスッキリしたようなものだった。
この変わり様、もしかして本当に実の弟へ呪いを? いやいや……まさかな?
「呪いは掛け終わったか?」
「まぁね? メチャクチャ愚痴の念を飛ばしておいた」
「なんだ。てっきり本当にそういう系が詳しいかと思ったじゃねぇか」
「あんたねぇ、私を何だと思ってんのよ」
「不可能を可能に出来る女」
「それ純粋に誉め言葉? 馬鹿にしてるなら、本当にそっち系極めるよ?」
「俺がお前を馬鹿にした事があるか?」
「今のを初カウントしても良いけど?」
「とにかく、これからどうするか考えよう」
「ナチュラルに話を変えるんじゃないよ」
うん。いつもの恋桜だ。
今まで何度も繰り返して来た雰囲気の会話にそう確信すると、俺はそそくさと近くにあったベンチに腰を下ろした。
すると、それに感化されたのか、すかさず恋桜もベンチに座る……なぜか隣に。
「なんで隣?」
「だってベンチここしかないじゃん」
「いやいや、俺はベンチの端っこに座ってんの。普通は間隔開けて座るだろ?」
「最短距離で座っただけだもん。それでどうするの?」
「人の話を聞きなさい」
「仕方ないし、各々の買い物に付き合うってのはどう?」
……ったく、この距離感で座ってるの見られたら色々マズいと思うんですけど?
まぁ良いか。それにしても……
結局、こうなる運命なのかぁ。
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