第3話 魔法美少女まな板女

 俺の名前は吉田雷斗。関西一の暴走族総長。ブラチラ女神に言われたマルケンっていう町に着いて今絶賛押し売りを受けてる所。


 「ちょっと! ノアの話聞いてるのか? 今日からパーティー組むんだぞ! 言いか? 」

 「はいはい、聞いとるがなぁ。ちゅっかお前誰やねんクソガキ」

 「ク、クソガキ!? よくもクソガキ呼ばわりしたな!! これでも17歳だぞ! 」

 「17歳!? ほな、俺とためか?!!? 嘘つけぇ……クク…… 」


俺は小馬鹿にして笑う。


 「なんだ、なに笑ってんだ!」

 「いや、だってさぁ……クク……」

 「なに笑ってんだ? はっきり言いえよ! 」

 「いやぁ、17歳やろ?」

 「そう言っただろ! だったらなんだ」

 「お前胸無いやん……クク……ま、ま、まな板女……クク…… 」

 「よ、よくもノアを侮辱したな! 」


 まな板女は激怒した。


 「この私魔法使いノア様をよく……」

 

ん?魔法つけい? 俺は聞き間違えかと思い割り込んだ。


 「魔法使い?」

 「そうだ」

 

俺が驚いている間にまな板女は続けた


「自己紹介がまだだったな。私は魔法使いノアよろしくな! 」

「お、おう。俺はそうちょ……じゃなくて、冒険者雷斗や。よろしく」


と自己紹介をした俺たち。しかし、コイツはツッコミどころ満載すぎて何処から手をつけたら良いか分かない。気になることを二つあげれば、まずクソほど高い声で声が大きい。それから魔法使い。ただでさえこのタイプの人種は免疫が無いのに、情報量が多過ぎる。それからもう一月になることが、


 「お前魔法使えんの? 」

 「使えるぞ! 」

 「どんなん? 」

 「物を溶かす! 」

 「ほんまに言うてんの?! スゲー! よし! 俺、お前とパーティーなるわ! 決めた! 」


そう言う訳で、俺はまな板女に負け物を溶かす魔法というワードだけでコイツとパーティーを組むことになった。後にこの選択が毎日破茶滅茶で問題だらけの生活になるとは知らず。


 俺たちは受付でパーティー登録を終えた。今日からコイツがこの世界での一番目の仲間。パーティーになったからには、俺は少しずつこのタイプの人種、コイツに慣れようと決心した。


 「なぁ、お前の名前ってノアやっけ? 」

 「そだぞ! 」

 「ノア何処に住んでんの? 」

 「こっち!ついて来て! 」


そう言うと小学生かのように全力で走っていった。


 ノアを追いかけ辿り着いたのは、マルケンを流れる小さな川に架かる橋の下。橋の下にはバラック小屋が一軒あった。俺はまさかとは思った。コイツこんな所に住んでないよな!? なんなんですか? ホームレスですか? 難民ですか? 不法滞在ですか? 密入国者ですか? 


 俺の予感は的中した。案内されたのは、例のバラック小屋だった。


 「ここが家だ! まぁ自由にくつろげ! 」


 自慢げにニコリと笑いながら家の中まで紹介されたが一人で生活するのでさえ窮屈な小屋。どうやら一人で住んでいるようだ。


 俺は心底思った。盛大に大声で叫び泣きたくなった。コイツとパーティー組むんじゃなかった。


組むんじゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!


抑えきれず心の奥底からそう叫んだ。今日は長い夜になりそうだ。

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