05 past.
数年前。
地盤沈下に巻き込まれて、旅行先の国で地下に取り残されたことがある。
周りの人間はみんないなくなって、自分ひとりだけで。じっとしていた。
そのとき、スーツを着た彼が、わたしを見つけてくれた。それが、今の恋人。
彼は、恐怖で何も食べれなくなっていたわたしに、口移しで野菜ジュースを飲ませてくれた。すでに液状になったものを、さらにゆっくりと、キスしながら。それでわたしは、命を繋いだ。
でも、彼の着ていたスーツの匂いと、地盤沈下で取り残された記憶が結びついてしまって。恐怖を喚起されるから、今でも彼以外の人間のスーツが怖い。
「彼のスーツなら大丈夫なんだけどな」
彼を探す。
きっと、雨に取り残されているのだろう。見つけてあげないと。
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