第102話 因縁の確信 (ソシリア視点)

 真剣な表情となったものの、少しの間二人から返答はなかった。

 少しして、悩ましげな表情を浮かべながら、マルクは口を開く。


「わかった、そういいたいいたいところなんだが、正直俺にはどの程度協力できるのか自信がない」


 そうはっきりと断言したマルクは、私の目を見ながら問いかけてくる。


「アルフォードが頑なになるとき、理由があるはずだ。それをどうにかする手段はあるのか?」


 ……確かに、アルフォードのトラウマは根深い。

 そのことを知っているが故に、私は一度改めて考える。

 しかし、すぐに私は断言した。


「ええ、大丈夫よ。私の想像さえあっていれば、アルフォードを説得する材料にはなるわ」


「……そこまで準備が整っているなら、逆に私達に頼みたいことは何なの?」


「私が二人から得たいのは確証よ」


「確証?」


 怪訝そうに復唱するマルクをまっすぐ見返しながら、私は断言する。


「ええ、そうよ。そして、私の予想があっているなら、この話は貴方達にとって聞いておいた方がいい話になると思うわ」


 そう私が告げると、明らかにマルクとリーリアの雰囲気が変わる。

 それを確認し、私は二人に問いかけた。


「まず聞きたいのは、サーシャリアに婚約を申し込んだマクリタリラ侯爵家について、なにか知っていることはない?」


 そう尋ねると、マルクもリーリアも怪訝そうな表情をしつつ首を横に振る。


「いや、ほとんど世間に広まっている程度の噂しか知らないな。現当主が相当やり手だと言うこと位だ」


「私の商会も同じね」


 マルクとリーリアの言葉に、私は内心警戒を強める。

 辺境の人間であり、そうとうやり手な二人でも、知らないのかと。

 ……しかし、この情報を手に入れるにかかった苦労を考えれば、それも仕方ないのかもしれない。

 そう思いながら、私はさらに口を開く。


「それじゃ、闇商会……。餓狼商、その名前に聞き覚えは?」


「……っ!」


 その瞬間の、二人の反応は劇的だった。

 リーリアは真っ青な顔で後ずさり、マルクは怒りを隠さないまなざしで私をにらんでいる。


「……どうして、ソシリアがその名前を知っている?」


 ゆっくりと押し殺した声で、マルクはそう尋ねてくる。

 しかし、その声にこもった怒りは一切隠せていなかった。


「早く、教えろ」


 私をまっすぐ見据え、マルクは吐き捨てる。

 瞬間、私はマルク達……辺境と餓狼商の因縁を理解する事となった。

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