第13話 生徒会の面々
家族との軋轢にされされながらも、必死に努力を重ねてきた、姉御肌で頼りになる公爵令嬢、ソシリア・ライフォルド。
辺境だと馬鹿にされながらも、それでもあそこは自慢の故郷だからと言い続け、辺境領を発展させた辺境伯令息、マルク・アイルタント。
一見おっとりしながらも、豪商の娘であることを示す、計算高さを持ち、アドバンスに想いを寄せていた子爵令嬢、リーリア・マキシュア。
一見飄々とした見た目ながら、私よりも遥かに貧乏な男爵家の発展のため、自身を絶えず鍛え続けてきた男爵令息、セイン・クリスフォルテ。
そして、自身の不安定な立場から、私達生徒会メンバーを集めた生徒会にして、寡黙な第三王子アルフォード・ルイフォルド。
その生徒会は、本当に偶然集まったメンバーだった。
もし、アルフォードが第三王子という複雑な立場であるため、あえて身分が高くないよう集められたメンバー。
しかし、きっかけがどうあれ、その生徒会の一員として過ごした日々は、私にとってかけがえのない日々だった。
今までの人生の中、一番輝いていたと言っていい時間だった。
私の事業を始めたのも、その生徒会に入っていたからのもの。
「そう言えば、私の初恋はアルフォードだったわね」
叶わないと思い、諦めた苦い恋の思い出。
微かに痛む胸に気づかないようしながら、私は小さく声を出して笑う。
あの時は本当に楽しくて……だから私は、輝かしい過去を思い出した自分に後悔する。
冷えた素足の痛みで、現実に戻された私の目の前に広がるのは、闇に覆われた道と薄汚れた姿をした自分。
咄嗟に現実から目をそらそうとして、私はさらに記憶に浸ろうとする。
だが、その行為は余計自分を惨めにさせるだけだった。
「……私は、本当に惨めね」
声が震えるのが分かるが、もう私には感情を抑えることができなかった。
視界が滲み、地面に水滴ができる。
気づけば、寒さを感じないほど、頭は朦朧としている。
自分の身体が危険な状態なのだと、言うまでもなく理解できた。
だが、もう私にはどうだって良かった。
ああ、本当に私は何をしているんだろうか。
マルクとリーリアは結婚。
セインは近衛騎士就任。
……そして、アルフォードとソシリアの婚約。
手紙と、風の噂で聞く友人達の活躍。
今はそれが、どうしようもなく自分の惨めさを際立たせているように感じてならなかった。
涙を流しながら、私は口を開く。
「どうして私はこんなにも……」
その途中で、私は言葉を止めた。
その言葉の答えが分かりきっていることを私は知っていた。
何せ、ずっと私はそのことを教えられてきたのだから。
「そんなの、可愛げがないからに決まっているじゃない……!」
蘇るのは、両親の、アメリアの──カインの言葉。
ああ、そうだ。
全て、私が悪いのだろう。
誰かを恨むなど、お門違いでしかないのだ。
私が不幸なのは、全て私のせい。
私が幸せではないのは、私が自分を直せなかったそれが理由なのだから。
それでも、もし。
最後だけでも願いが叶うなら。
……叶う訳がないと知りながら、私はその願いを告げる。
「最後に、アルフォードと会いたかったなぁ」
最後に会ったのは二年前。
叶わぬ恋だとは分かっているし、どうにかなんて今さら思ってもいない。
それでも、最後くらい顔を合わせてから死にたかった。
「……ああ。待たせた」
ぱさりと、背後から温かい何か被せられたのは、そんな時だった。
同時に聞こえた酷く待ち望んでいたはずの声に、私は大粒の涙が溢れるのを感じる。
私は知っている。
その言葉は一見無愛想なその言葉が、彼にとっては精一杯の気持ちを込めたものだと。
強ばった身体で何とか振り返ると、そこに居たのは、二年前よりも成長した彼。
アルフォードだった。
「遅くなった」
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