第4話 ルビィちゃん?ルビーちゃん?
————次の朝、アルド宅。
「おーい、アルドー!」
家に入ってきたのはダルニスだ。
「やぁ、おはようダルニス。ちょうどよかった、リィカも今来たところなんだ。ロドリゲスのことはもう話してあるから。」
リィカはアルドの側に立っている。
「オ任せくだサイ。」
リィカが会釈すると、ダルニスも会釈で返した。
家の奥では、すっかり元気になった村長が、ルビィちゃんにミルクを飲ませている。きっと昨日フィーネが買ってきたものだろう。
フィーネはその横で、ミルクの飲ませ方を教わっているようだ。
「それじゃ早速、ロドリゲスのところに行ってみよう。」
アルドとダルニスが、リィカを連れて出かけようとしたとき、ひとりの女の子が家に入ってきた。
「たいへんたいへん!あっ!ダルニスおにいちゃんここにいたの?ねぇ、たいへんなの!」
女の子は涙ぐんでダルニスの袖を引っ張る。
「ネルちゃんじゃないか。どうしたんだ、そんなに慌てて。」
入ってきたのは、ダルニスのいとこで、今回ロドリゲスの件を依頼してきたネルちゃんだ。
「あのね、ルビーちゃんがいなくなっちゃったの。」
(ルビィちゃん?)
アルドとダルニスは村長の方を振り向くが、ルビィちゃんはちゃんとそこにいる。
ダルニスは片膝をついて、目の高さをネルちゃんに合わせた。
「ネルちゃん…、ルビーちゃんって?」
「ルビーちゃんは、サファイアちゃんの子どもなの。いっしょにチョウチョを追っかけてたらね、いなくなっちゃった。」
(仔猫か…。ルビー、ルビィ、ちょっとややこしいな…。)
アルドとダルニスはそう思った。
ネルちゃんはションボリとうつむく。
「そのあとね、サファイアちゃんも村の外に出て行っちゃって、ずーっと帰って来ないの。ルビーちゃんもサファイアちゃんも、さらわれたりしてないか心配だよぉ。」
サファイアちゃんは恐らく仔猫のルビーちゃんを探しに行ったのだろう。
「そうか、それは困ったね。それで、サファイアちゃんはどっちに行ったんだい?」
ダルニスの問いかけにネルちゃんはうなずいて、指差した。
指の向いた方向は、村の西。
「うーん、村を出ていたとすれば『ヌアル平原』、場合によっては『月影の森』あたりまで行っている可能性もあるな。だとしたら早く見つけないと、魔物がいて危険だ。」
とは言え、猫を探し出すには広過ぎる。
アルドは眉をひそめた。
だが、ダルニスの方には考えがあるようだ。
「大丈夫、おにいちゃんたちに任せろ!必ず連れて帰って来るから、ネルちゃんは安心して家で待っててくれ。———それじゃ行ってくる。」
———ちょうどその頃、家の外では。
「おやぁ、ギルドナ殿ではござらぬか?魔獣王ともあろうお方が、自らアルドの家まで来るとはいったい何用でござるか?よもやるびぃちゃんに会いに来た、などとは申されるまいな。」
「ちっ、サイラスか…。そっちこそ、アルドの家の前をウロウロと…。いい歳したカエル風情が、まさかルビィの様子が気になる、などとは言わんだろうな。」
そのとき。
———ガサガサッ———
「誰だ!?」「何者でござる!?」
2人は同時に武器を構えた。
「待て、俺だ。」
光学迷彩を解いて出てきたのはガリアードだ。
「貴様か…。」「お主でござったか…。」
2人は武器を収めた。
「ふたりともそこを退いてくれ。俺はアルドに用事があるだけだ…。」
ガリアードは家のドアに手を伸ばす。
サイラスとギルドナはその手を掴んだ。
「嘘は良くないぞ。」「良くないでござるな。」
3人は薄ら笑いをそれぞれの顔に浮かべ、視線に火花を散らせる。
ふとギルドナの表情が険しくなる。
「ん?待て。話し声が聞こえるぞ。」
3人はドアに耳を押し当てた。
——…ルビーちゃんがいなくなっちゃった…——
——…さらわれた…——
——…『月影の森』あたり…——
(……っ!!ルビィちゃんがさらわれた!?)
「こうしてはおれんでござる!拙者が助け出さねば。このときのために磨いた技…見せるときが来たでござる!———るびぃちゃん、待っているでござるー!」
サイラスは刀を手に走り去る。
「ふん、誘拐犯め…。俺のルビィに手を出すとは、よほどこの俺と戦争がしたいようだな。いいだろう、魔獣の力とくと味わうがいい。」
ギルドナは颯爽と歩き出す。
「俺が行かねば…。2人には任せられん、ルビィちゃんが待っているのはきっとこの俺なのだ。合成人間こそ至高!———俺がパパだ!」
ガリアードは勢いよく飛び去った。
————ガチャ————
ドアが開き、出てきたのはダルニスだ。
「ん?今人影が見えたような…。いや、今はネコのことだけ考えよう。」
ダルニスは走り出す。アルドとリィカはあとに続いた。
3人が到着したのは、村の池の前。
「おいダルニス、今はロドリゲスにかまってる場合じゃないんじゃないか?」
そう言うアルドをダルニスは制する。
「いや、この手が最善だ。とにかく俺に任せてくれ。———リィカさん、例のやつを頼む。」
リィカはうなずいて、8000Hzの音波を放ち始めた。
同時にダルニスは大声で叫ぶ。
「おーい、ロドリゲスー!お前の子どもが大変なんだー!頼む、出てきてくれー!」
ダルニスの声が届いたのか、リィカの放つ音波に引き寄せられたのか、ロドリゲスは草むらからのそのそと姿を現した。
ダルニスは膝をつく。
「おいロドリゲス。俺の言ってることが分かるか?今お前の子どもが大変なんだ。俺やアルドのことが嫌いなのは構わない。でも今は、今だけは力を貸してくれ。お前の子どもを助けたいんだ。———頼む!」
「………」
沈黙の中、ロドリゲスはダルニスの目を真っ直ぐに見つめた。
———そろり…、ロドリゲスは歩き出す。
すぐに立ち止まり、ついて来いと言わんばかりにこちらを振り返った。
「伝わった…のか?」
ダルニスは立ち上がる。
「やったなダルニス!行こう!」
「ああ!」
ダルニスとアルドは、走り出すロドリゲスを追った。
————その頃、魔獣の村コニウム。
「ヴァレス!ヴァレスはいるか!?配下の者たちに伝えろ!全面戦争だ!『月影の森』へ向かう!」
「ギ、ギルドナ様!本気ですか!?」
(えー…エラい急だな…。)
————その頃、合成鬼竜艦内。
「ヘレナ、皆を集めてくれ。決起する時が来た。殲滅すべき敵が現れたのだ!」
「え?…ええ。———みんな、聞こえてる?緊急招集よ。」
(…ガリアード、急にどうしたのかしら…。)
ロドリゲスは走った。
そのあとを追うダルニスとアルド。
「はぁはぁ———こっちであってるのか?」
「ぜぇぜぇ———ロドリゲスの鼻を信じよう。」
「———鼻って、あいつネコだぞ?」
「———いいんだよ、半分イヌみたいなもんだろ。」
『ヌアル平原』を抜け、『月影の森』へ。
うしろを走るダルニスとアルドは、ついて行くのがやっとだ。リィカはさらにうしろを走っている。
ロドリゲスは急にスピードを上げた。
見るとロドリゲスが向かう先には、怯えるネコが2匹、アベトスの集団に囲まれている。
突進するロドリゲス。
「ガウッ———!」
猛タックルがアベトスにヒット。
直後ロドリゲスは2匹のネコをかばうように立ちはだかった。
「ガルルルル…。」
ロドリゲスに攻撃されて一瞬怯んだものの、怒ったアベトスたちは棍棒を振り上げた。
その瞬間、一本の矢が疾る———。
矢を放ったダルニスは叫んだ。
「今だ、アルド!」
「ああ、任せろ!———って、ハズしてるじゃないか!」
矢はアベトスたちの間をすり抜ける。
「バカ、わざとだ!いいから行け!」
むやみに殺生しない、それが信条のダルニス。
なるほど、矢はアベトスたちの注意だけを奪って近くの木に刺さった。
「いかにもダルニスのやりそうなことだな。だったら———」
アルドは致命傷を与えることなくアベトスをなぎ倒していく。ダルニスと、遅れて到着したリィカは援護した。
「———これで最後だ!」
3人はアベトスの集団を打ち倒した。
「やったなダルニス、リィカ。」
2人はうなずく。
「———それからロドリゲスも。」
「ニ゛ャフッ!」
尻尾をピンと立てるロドリゲスに、2匹のネコが寄り添っている。
「間違いない、サファイアちゃんだ。———ということは、こっちの小さいのはルビーちゃんか。」
ダルニスはしゃがんでネコたちの頭を撫でる。
そうしていると、アベトスたちは意識を取り戻した。
「ウウ…アダマイダイ…。」
アルドはアベトスたちに歩み寄る。
「もう弱いものいじめなんかするなよ?」
「ウウ…ワガッダ。———デモ、ニンゲンダッデ、オデダヂイジメダ。…ギノウ、ビームイッバイドンデギダ。オデダヂノイエ、ゴワデデナグナッダ。」
アベトスは不服そうな顔だ。
(…ビーム?誰がそんなもの………あ。)
アルドの脳裏に、『月影の森』目がけて『アルティメット』を撃ちまくる村長の姿が浮かんだ。
「そ、そうか、そりゃ災難だったな。ははっ。———で、でも弱いものいじめは良くない。今度家作るの手伝ってやるから、機嫌直せよな。」
苦笑いしながらアルドが言うと、アベトスたちは去って行った。
「ふぅ…、さあ俺たちも帰ろう。2匹とも無事でよかった。」
一行はバルオキーを目指す。早くネルちゃんを安心させてあげなければ、その思いが皆の歩みを急かした。
森の出口に差しかかる頃、先頭を歩いていたアルドは立ち止まる。
「なんだ?向こうの方が騒がしいな。」
見ると、何者かの群勢が『ヌアル平原』の方から森の中へ雪崩れ込んで来る。
一番前にいるのは……。
「…ギルドナ?それにサイラス、ガリアードも。———どうしたんだ?血相変えて。」
ギルドナはマントを翻す。
「そんなもの決まっているだろう。連れ去られたルビィを探しに来たのだ。」
(…連れ去られた?)
アルドは自分のうしろでロドリゲスに寄り添っている仔猫の姿を確認する。
(ルビーちゃんはちゃんといるよなぁ。ってことは……。)
「えっ!ルビィちゃん、さらわれたのか!?」
「何を言っているのでござる?お主らが話していたではござらんか。『るびぃちゃんがいなくなったー』とか、『さらわれたー』とか…。」
そう話すサイラスの横で、ガリアードは「俺がパパだ、俺がパパだ…」とぶつぶつ呟いている。
そのうしろには大勢の魔獣と合成人間たち。
(あーなるほど、そういうことね。だいたい状況は分かった。)
「…やれやれ。———何やってんだ、この『おじ三銃士』は…。」
アルドは心の声が口から漏れていた。
「っ!…おじ三…銃士…だと?」
「あ、いや、深い意味はないんだ。気にしないでくれ。———へ、へぇー、それでこんなに大勢連れて来たってわけか。」
アルドは魔獣と合成人間の群勢を見渡した。
(ギルドナは魔獣を、ガリアードは合成人間をそれぞれ助っ人に連れて来たんだな。まあそれは分かる。———ただ…。)
「おいサイラス。それはちょっと理解に苦しむな…。」
見ると、サイラスの足下では大量のカエルが飛び跳ねている。
サイラスは口を尖らせた。
「いや…なんか…拙者も、仲間っぽいもの?を連れて来た方がいいのかなーと…。」
(だからってカエル連れてきていったい何を手伝わせる気だったんだろうな。)
「……そ、そうか。サイラスなりに頑張ったんだな。———えーっと…3人とも落ち着いて聞いてくれ。」
3人の視線を集めるアルド。
「ルビィちゃんなら無事だ。家にいるよ、たぶん…。」
アルドは鼻の頭を掻いている。
「………」「………」「………」
壮大な勘違いであったことをアルドに突きつけられ、おじ三銃士は言葉を失った。
静まり返る群勢。
「———はいっ!解散解散!」
アルドは沈黙に耐えられず、パンパンと手を叩いて皆に帰るよう促す。
その場にいた皆は、回れ右して帰って行く。
魔獣も、合成人間も、カエルたちさえも無言であった。
やり場のない気持ちを誰かにぶつけることすら出来ずに、ただただ黙って去って行く彼らの背中には、何にも形容し難い悲壮感が漂っていた。
その様子を見届けたあと、アルドたちも村に帰った。
村に到着すると、アルドはリィカとともに自分の家に向かった。
ダルニスは、ネルちゃんのところにネコを連れて行くと言う。
アルドを待ち構えていたのは、家の前で仁王立ちしているエイミであった。
「もーアルド!どこ行ってたのよ!式の準備大変だったんだから!」
エイミは石像の前を指差した。
普段は何もない場所が、立派な式場に変わっている。
「ごめんごめん、それどころじゃなくてさ。———うわっ!随分本格的な式場だな!これ全部エイミが準備したのか!?」
エイミは得意げな顔だ。
「まぁね。衣装も出来てるから、新婦に武器屋で着替えるように言っておいてね。わたしまだ準備があるから。リィカも手伝って。」
エイミはそう言うと、リィカを連れてそそくさと去って行った。
家のドアを開けるアルド。
中に入ると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
「———おい、その手を離せガリアード。ルビィが嫌がっている。」
「ギルドナこそ執着し過ぎだぞ。そもそもパパは俺だ。」
「ふたりともズルいでござるー。次は拙者が抱っこする番でござるー。」
(またか…このおじ三は…。)
「馬鹿もんがぁ!抱っこの仕方がなっとらんわい!こうするんじゃ!」
村長は3人をなぎ倒し、宙に舞ったルビィちゃんをナイスキャッチ。
(うわ、おじ四になってるし…。)
「ルビィちゃん大丈夫かなぁ」とフィーネは心配しているが、意外にもルビィちゃんの方は嬉しそうだ。きっと大丈夫なのだろう。
「おーい、アルドー。」
家に入ってきたのはダルニスだ。
「3匹とも連れてったら、ネルちゃんかなり喜んでたぞ。———結婚式の準備はすぐに終わるから、あとでネコたちといっしょに来てくれって言っといたよ。俺たちも準備しよう。」
アルドはうなずく。
「ああそうしよう。式場も、本格的なのをエイミが作ってくれたんだ。神父役はダルニスがやるよな?衣装が出来てるから武器屋に来てくれって言ってたぞ?」
ダルニスは嬉しそうだ。
「へぇー、そんなものまで用意してくれたのか。ネルちゃんきっと大喜びするぞ。———分かった、行ってみるよ。」
ダルニスは武器屋へ向かう。
ダルニスが武器屋に入ると、メイがカウンターで頬杖をついていた。
メイはダルニスに気付いて立ち上がる。
「何か用?」
「なぁメイ、神父の衣装が出来てるって聞いたんだけどここでいいのか?早速着替えたいんだが…。」
「衣装は、まぁ出来てるけど。…え?ダルニスが着るの?」
「ん?そうだが…。」
「…マジで?」
———— 一方アルド宅。
「アルド、いるー?」
入ってきたのはエイミだ。
「準備終わったわ。あとはアルドだけだから。もうすぐ式始まるわよ。」
「え、もう始まるのか?ならすぐに行くよ。」
アルドは急いで家を出ようとしたが、エイミに遮られる。
「待って。ちょっと向こう向いてて。」
(えー?もーなんだよこんなときに…。)
なぜ止められたのか疑問ではあったものの、アルドはとりあえず言われた通りにした。
エイミは手拭いを取り出しアルドに目隠しをする。
「ちょ…なにこれ?」
「いいからいいから♪」
エイミは声を弾ませた。
「わたしにつかまってついて来て。」
エイミはアルドの手を握る。
(なんだ?なんで俺目隠しなんかされてんだ?)
歩き出すエイミ。
アルドは手を引かれる方向に、そろりそろりと足を動かす。
何も見えない。
アルドには、エイミの声だけが聞こえていた。
「ふふっ、きっとビックリするわよ。わたしもこんなに大勢の人が来てくれるなんて思わなかったわ。」
(えー、なに?そんなに人呼んだの?)
「えへへー、こういうサプライズ演出みたいなの、一度やってみたかったの。」
(…サプライズ?仕掛ける相手間違ってない?)
「花嫁になる人、わたしまだ顔見てないんだよなぁ…。どんな人なんだろう。」
(花嫁になる…人?何の話?)
「わたしね、アルドが結婚するって聞いたときはびっくりしたけど、絶対に結婚式成功させなきゃって思ったの。」
(…ん?今なんて言った?俺結婚するの?)
「———おめでとうアルド!幸せにね。」
アルドは、エイミの手が離れ、走り去って行くのを感じた。
「ちょっと待てエイミ!…エイミ!?」
「アルドー!目隠し外していいわよー!」
少し遠くから聞こえた。
何が起こっているか分からないまま、アルドは目隠しを外す。
眩しい。同時に、割れんばかりの拍手が耳に届く。
周りには大勢の人が集まっているようだ。
目が慣れ、顔を上げるアルド。
目の前には知らないおじさん。
(誰だ?プライっぽい格好…。なるほど、神父だ。)
同時に甘い香りがそよ風に乗り、アルドの鼻腔へ。
(うわぁ、めっちゃいい匂い…。横から?)
アルドは横に目を移す。
(白い。…ドレス?花嫁?)
アルドは口をポカンと開けたまま、視線を上に動かしていく。
スラリと伸びた腕。
ヴェールの下には、金色に輝く長い髪。
髪の隙間から少しだけ覗かせる頬は、うっすらと赤く染まっているように見えた。
そよ風に髪が揺れるたび、ほんのり甘い香りが漂ってくる。
アルドは目を閉じて考える。
(目の前に神父、横に花嫁…。ということは俺が新郎…。えーっ!?ホントに俺結婚するのか!?あー…でもいい匂い。とびきりいいシャンプー使ってますって感じの匂いだな。———なんかもう結婚してもいいような気分になって来た…。)
「ぅおっほん!…シュハ、オオイナルミチビキニヨリ、ウンタラカンタラ…———」
拍手が止み、突如始まる挙式。
「…スコヤカナルトキモ、ヤメルトキモ———」
向き合う新郎新婦。
アルドは花嫁を見上げた。
「………」
(…見上げた?)
アルドは異変に気付いた。
ヒールを履いているからとは言え、花嫁がデカすぎる。
よく見るとドレスの丈が足りていない。
しかもパッツパツ。
アルドは急いで花嫁のヴェールをあげた。
「………」
「………………おい。」
「……なにやってんだ?ダルニス…。」
「…聞くな。俺にもよくわからん……。」
ひとり挙式を続ける神父。
「————アイスルコトヲ、チカイマスカ?」
訊ねる神父に、2人は同時に返す。
「誓わねぇよ!」「誓わねぇよ!」
まったくとんでもないサプライズだ。
どよめく式場。
だが、やがて—————
「…ぷっ」
「———あはははは!何やってんのよあんたたち!」
真っ先に吹き出したのはエイミだ。
それを皮切りに、参列者たちのどよめきは次第に笑い声に変わっていった。
式場が爆笑に包まれる頃、ネルちゃんはネコたちを連れて式場にやって来た。
混沌とした状況に困惑するネルちゃん。
そんなネルちゃんに、アルドとダルニスは必死になって状況を説明するのだが、まったくもって要領を得ない。
それもそのはず。どうしてこんなことになっているのか、本人たちですらよく分かっていないのだから。
今何が起こっているのか、各々が理解するには今しばらく時間がかかりそうだ…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます