第11話 北米戦時のルフトバーン王国近衛魔法士団

北米戦時のルフト・バーン軍

  ~歴史的経緯から北米戦時の戦闘を検証する~  

         帝國陸軍大学校教授 中西寿尚

 

◆軍制概況


 ルフト・バーン王国軍(以降ル王国軍)における軍制は地球におけるヨーロッパの封建制騎士団のように、王家や領主の私兵としての側面が強かった。

 しかし、皇紀二六○一年(西暦一九四一年)の「大転移」と翌年の日ル同盟締結以降、ル王国軍は大きく帝國軍の軍制を参考にした軍制改革に着手する。

 選王家をはじめとする貴族勢力による反対で当初は緩やかなものだったが、第一次蟲戦による王国軍の甚大な被害が状況を変えた。

 当時の国王アデプト・ザルツハイムの主導で、帝國から軍事顧問団を招聘しょうへい。十年の時間をかけて貴族私兵制度を解体、近衛魔法士団と黒鋼衛士団(陸軍)、飛空兵団(空軍)の三軍体制(後に水軍(海軍)を加えた四軍体制となる)が発足する。

 近衛魔法士団は当初文字通りのザルツハイム王家の親衛隊としての性格が強かった。

 しかし、魔法士の数が多い性格上戦力としてあてにされることが多く、外征軍としての伝統もあることから、徐々に合衆国の海兵隊に類する『殴り込み部隊』としての性格が強くなっていく。

 これには、法制度上も執政府(形式的にはザルツハイム王家)の命令のみで動員することが可能であり、「使い勝手」も良かったという事情もある。

 主要装備は魔法士の基本装備「人形」であり、人形兵団の異名もある。

 黒鋼兵団は魔法適正を持つ兵が少ない平民を中心とした軍隊であり、兵器の中心も帝國からのライセンス生産品を中心とする通常兵器を用いている。近衛の活躍の影に隠れがちではあるが、数の上では主力である。

 主な任務はルフトバーン本土防衛であり、対BUG戦に駆り出されることは少ない。

 飛空兵団の主な任務は空軍として飛空艦(帝國で言う飛行艦)による航空優勢の獲得、航空輸送、対BUG哨戒である。ただし、その活動圏はやはり本土および近海に留まることが多かった。

 しかし、近年は国際連盟軍の要請で海外派遣任務に就くことも多くなっており、装備の拡充が急務となっているようである。


◆ルフトバーン軍階級

 大転移以降、各軍はこれまでの旧来の慣習であったバラバラな貴族序列に従って設けら れていた階級制を刷新する必要性に迫られた。

 帝國の軍事顧問団の助言によって、階級は地球の主要国の階級制度に見合う形で改正されたが、階級の呼称はあくまでルフト・バーン風にされた。

 以下は各軍共通の階級である。


▼兵~下士官

 これらの階級は、帝國軍とほぼ同じ兵は二等兵~兵長、下士官は伍長~上級曹長、准士官は准尉と共通のものが用いられる事となった。

 理由としてはルフト・バーン軍が貴族制軍隊だったからである。

 各貴族の私兵集団であったために兵や下士官の呼び名が所属ごとにバラバラで、いっそ帝國のものを直輸入したほうが手っ取り早いとされたからであった。

 なお、貴族制故に兵や下士官が軽く見られる風潮のせいでもあることに留意したい。

▼士官

  王国 (帝國相当階級)

 ○掌翼長  (少尉)

 ○掌十長  (中尉)

 ○掌百長  (大尉)

 ○掌千長  (少佐)

 ○掌万長  (中佐)

 ○上級掌万長(大佐)

 ○掌師長  (少将)

 ○掌旗長  (中将)

 ○掌星長  (大将)

 ○掌軍長  (元帥)

◆近衛魔法士団の編成北米戦で活躍したのは、王国外征軍の筆頭である近衛魔法士団。中でも歴史と伝統で知られる「赤銅師団」であった。

 なお、近衛魔法士団の編成も基本的には帝國軍の軍制(特に機甲師団)を参考にして編成されている(とはいえ、貴族制の残滓も数多い)。

▼近衛魔法士団の戦術単位

※定数は北米戦時の赤銅師団。実際は各師団によって大きく異なった。


王国 帝國軍相当単位 兵員定数 人形定数

師団  (〃 )  15000 640~800

旗隊  (連隊)  3500  160~200

翼隊 (大隊) 1000  40~60

星隊 (中隊)  120   20~30

石隊 (小隊) 30    5 ~10 


※北米戦時は消耗が大きいことが予想されたため、予備の「人形」が定数より多く確保されていたという情報もある。

 そのこともあって、資料により記録の相違が見られるため、このような定数の記述となった。新たな資料の公開による新説を待ちたいところである。

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