第7話 北米戦時の装甲歩兵大隊編成並びに運用概説
北米戦時の装甲歩兵大隊の編成並びに運用概説
~七六二装甲歩兵大隊を中心として~
帝國陸軍大学校教授 中西寿尚
■七六二「独立」装甲歩兵大隊
○概要
北米戦は装甲歩兵の戦争とも言われる。
その中でも特異な存在として知られているのが帝國陸軍第二旅団隷下の七六二装甲歩兵大隊である。
なお、よく戦記などには「独立」という冠が付けられることが多い。
しかし、公文書では確認されておらず、同部隊の伝説的な(戦場伝説の類いと思われるようなものも含む)活躍に幻惑された結果と思われる。
当研究ではその実態を先入観を排し、実証的に研究するものである…(中略)…
○大隊編成
▼大隊本部
▼第一装甲歩兵中隊 「武隆改」(二一型十七両+二三型一両) 計十八両
▼第二装甲歩兵中隊 「武隆改」(二一型十七両+二二型一両) 計十八両
▼第三装甲歩兵中隊 「武隆改」(二一型十七両+二二型一両) 計十八両
▼第四装甲歩兵中隊 「武隆改」(二一型十六両) 計十六両
▼大隊司令部予備 第五装甲歩兵中隊 「武隆改」(二一型十二両)
▼対空戦車小隊 「五四式自走高射機関砲」8両
▼歩兵小隊(二個歩兵小隊)
▼戦闘工兵小隊 四八式高機動車六両、オートバイ二台
▼
▼整備中隊
注一……各中隊は二両の二一型十六両のうち四両ずつを計四個小隊として編成。また各二両を中隊予備としている場合が多い。
注二……第五中隊は通称「剣中隊」。司令部直轄予備。基本的に大隊において、予備兵力が(定数に満たないとはいえ)中隊として編成されることはあまりない。北米戦時によく見られた増強大隊としての特別編成と思われる。
注三……大隊単位でもある程度独立して戦闘が行えるよう、支援部隊が充実している。これは裏返せば過酷な撤退戦が予想されるため、可能な限りの措置が取られたとも言える。
注四……戦記等では訓練時に対空戦車小隊が剣中隊の指揮下に入っている描写がある。
これは大隊が編成途上にあったための特殊な措置。装甲歩兵の直協任務を想定した訓練が必要だったことから、一時的に行われた。
基本的には大隊長が指揮する。
◆北米戦時の各種兵器解説
▼六○式装甲歩兵『武隆改』
帝國陸軍の装甲歩兵として皇紀二六六○年(西暦二〇〇〇年)より配備が始まった機体。正式名称は六○式装甲歩兵であり、『武隆改』は正式愛称。
五年前に正式採用された五五式装甲歩兵の改良型。五五式は機動性能が高く評価されていたが、開発を急いだためか生産性と装甲などの生存性に問題を抱えていたとされる。
事実、第八師団の船木薫大尉は同機体を「走行性能は大なれど、実戦で装甲破損率が高くバグの生体砲弾相手には心許なし。また、機体出力の高さ故か操縦性に難があり、操縦手を選ぶ」と評している。
そのため、当機の開発を担当していた真田重工は、陸軍省から数年以内の改良型開発を命ぜられた(理由としては、一から新型機を開発する予算が不足していたからと言われる)。
真田重工開発スタッフは小規模な対BUG戦闘が頻発する満洲での搭乗員への聞き込み、実戦テストを繰り返し、また審査部装甲歩兵隊での搭乗試験を経て、五年の短期で同機体を開発。
陸軍は様々な試験を経て六○年に同機体を採用し、早速各部隊への生産と配備を開始した。
なお北米戦当時では北米派遣部隊と樺太、北海道の部隊に優先的に配備されていた。本州の留守部隊には五五式装備の部隊もまだ数多くあったとされる。
当機の北米戦における評価は高く、改善された操縦性と、高い生存性を発揮して搭乗員死傷率の低下に貢献したとされる。また、元々優れていた機動性能と、各種武装を使いこなす汎用性も健在であり、搭乗する将兵からの評価も概ね好評で、名機としての評価を受ける事が多い。
ただし、整備性には難があったようで、前線での稼働率に問題を抱えていたとする評価も散見される
▼『武隆改』機体仕様
▽武隆改二一型……標準的仕様であり、一番数が多く配備されている。
▽武隆改二二型……砲戦、狙撃戦特化仕様(武装交換によって選択可能)。火力支援のための各種装備が充実。生産数はやや少ない。
▽武隆改二三型……捜索並びに指揮通信仕様。複座型。後部の電探手兼車長席には部隊指揮官が搭乗する事が多い。部隊指揮のため通信機能が強化されている。生産数は少なく、保有していない部隊も多い。
注五……型式名の前の方の「二」は
△主な武装……五○式一〇五
オプション兵装……五二式
▼六○式装輪戦闘車
八つのタイヤを装備した装甲戦闘車両。
対BUG戦では砲火力の素早い展開能力が必要という用兵上の要請で開発が開始。戦車並の砲火力と装甲車の機動性、そして早期展開能力を持つというコンセプトで開発された。
触れ込み通り整地された道路における展開能力は高いが、装輪車両であることから悪路走破性能は戦車に劣る。装甲防御力も純粋な戦車ほどではない。
北米戦では道路網の発達した合衆国の国情と合致したため、多くの戦果を上げている武勲車両である。だが、損耗率も比例して高いという功罪半ばする存在。
武装……五十一口径百五
最高速度……時速百二十キロ(路上走行時)
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