第6話 二日目は剣を振って①
そして、クエストボードを手に入れた翌日。
俺……月城真砂にとっての、高校二年生のゴールデンウィーク2日目がやってきた。
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デイリークエスト(NEW!)
・腹筋を100回せよ。
報酬:スキル【身体強化Lv2】修得
・ヨガを1時間せよ。
報酬:スキル【精神強化Lv2】修得
・剣の素振りを100回せよ。
報酬:スキル【剣術Lv1】修得
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「おおっ! 更新されてるじゃないか!」
朝の7時、普段の生活ぶりからは考えられない休日の早起きをした俺は、目の前に浮かんでいるクエストボードを見て喝采を上げた。
予想通り、デイリークエストは毎日配信されるようである。
おまけに達成したときの報酬は、昨日微妙だと感じた【身体強化】と【精神強化】。それぞれのレベルアップだった。
「それに【剣術Lv1】……武器系統のスキルか!」
ゲームだったらこういう武器系統のスキルを修得すると、その武器を装備したときに能力が向上したり、必殺技を使えるようになったりするはずである。
これらすべてのスキルを修得できれば、クエストボードによってどれくらい自分が成長したのか目に見えて実感できるだろう。
「よし! まずは腹筋だな。100回なんて生まれて初めてだけど」
俺はベッドに横になって筋トレを始めた。
運動とほぼ無縁な俺にとって腹筋100回というのは未知の領域。
大げさに聞こえるかもしれないが、宇宙や深海にも近いものである。
「だけど……意外に辛くないな。思っていたより楽じゃないか」
ひょっとしたら、昨日修得した【身体強化Lv1】の効果によって運動能力が向上しているのかもしれない。
途中での休憩をとったのも折り返しの50回の時だけで、10分後には無事に腹筋100回を成し遂げることができた。
『デイリークエストを達成しました。スキル【身体強化Lv2】を修得!』
「よしよし、クリアできたぞ。さて……」
俺はひょい、とベッドから起き上がって両手で軽くジャブをしてみた。
ブンブンと風を切る音とともに、運動不足の帰宅部が放ったとは思えないような鋭いパンチが繰り出される。
「うん、今度はちゃんと実感できた。たしかに身体能力が上がっているみたいだな!」
俺は満足して頷いた。
ステータスを確認すると、STR、VIT、AGIがそれぞれ14に上がっていた。
やはりステータスの基礎値を10として、Lvが1上がるごとに20%ずつ加算されているようである。
「そうだ、こっちも試してみないとな」
俺は昨日覚えたばかりの【治癒魔法Lv1】を試してみることにした。
スキルを使用しようと念じると、自分の身体からなにかが抜け出てくるのを感じた。
やや遅れて、まるで難しい数式を時間をかけて説いたような精神的な疲労がこみ上げてくる。
「治癒魔法……ヒール」
ゲームでよく聞く呪文の言葉が自然と口からこぼれ出ていた。
俺の身体を淡い青の光が包み込む。
ポーションを飲んだ時の早苗が同じように光っていた。
レベル1だから、まだそれほど回復力はないと思うのだが、これでどの程度の傷が癒せるのだろうか?
「ふう……なんか身体が楽になった気がするな。精神的には逆に疲れてるんだが……」
回復魔法の効果によって、筋トレで受けた肉体的な疲労や筋肉のダメージがすっかり楽になっていた。
代わりに魔法の代償なのか精神的に疲れを感じる。
「どうやら魔法を使うと精神力を消耗するみたいだな。一発くらいなら平気だけど、あんまり連続して使うとヤバそうだ」
それも【精神強化】のスキルを上げていけばもっと楽になるだろう。
俺は次なるデイリークエストを達成するべく、改めてクエストボードを確認した。
「今度はヨガ1時間か……ヨガなんてやったことがないけど、どうすればいいんだ?」
まあ、困ったときはググればたいてい何とかなる時代である。
俺はスマホで検索をして、初心者でもできそうなヨガ講座の動画をヨウチューブから引っ張り出した。
『デイリークエストを達成しました。スキル【精神強化Lv2】を修得』
そして、1時間後。
俺は本日2つ目となるクエストを達成した。
「ステータスを確認……うん、やはりINTが14に上がっているな。予想通り」
あとはどれくらいの効果があるかだが、俺はもう一度自分の身体にヒールをかけてみた。
再び青い光に包まれて、代わりに身体からなにかが抜け落ちていく感覚。
しかし、前回ほどの精神的な疲労は感じなかった。
「うん、【精神強化】が上がるほど魔法を使った時の消耗が減るみたいだな。それにINTが上がったおかげか、光も強かった気がする。この調子でレベルを上げていけば何十回だって使えそうだ」
俺は会心の笑みとともに拳を握り締めた。
クエストボードを手に入れて2日目、ようやく自分の成長をはっきりと実感することができた。
「さて! 最後は剣術だな! これもサクッと修得して…………あ?」
そこで、ふと俺は気がついた。
クエスト達成にどうしても必要な、大事な物が欠けていることに。
「……剣ってどこにあるんだ?」
俺の前に『銃刀法』という巨大な敵が立ちふさがったのであった。
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