私達の仕事じゃ無い!

熊さんの咆哮には命令の効果があったのか、周囲の魔物も襲ってきた!


「くっ!?ちょっとまずいか!?」

「もう!数が多いと面倒ね!」

「お前達は小型の魔物を相手にしろ!熊さんは僕が引き受ける!」


レインは巨体の熊さんを1人で相手にするようだ。

そこへシオンがみんなに叫ぶ!


「新しい魔詞を唄うよ!みんな!聞いて!!!」


!?


『全てを滅する力の雄叫び___限界を超えて高みへと


誰にも止められない衝動___辺りを無に帰す


理性を保ち先へと進む___骸の道を歩き続ける』


なんと!シオンが唄ったのは【高揚の激流】だった。そう、フィールの固有聖歌だ!


「これって、盗賊の歌人が唄っていた………!?」

「力が湧き出てくる!しかも大勢の魔物を相手に感覚が鋭くなってる!」

「これなら熊さんにも剣が通るな!」


フィールの固有聖歌【高揚の激流】は攻撃力を3倍にし、感覚も鋭くする効果がある。多数で戦っていても後ろからの攻撃に気付けるのだ。


クロウとミリアは一撃で小型の魔物を屠っていく。


ゴブリンにスライム、オークなどメジャーな魔物がほとんどだ。1番厄介なのは狼系の魔物だった。素早く、後ろを抜けられるとシオンが危ないからだ。


そこは感覚が鋭くなったお陰で対処出来ている。


それに比べてレインは格段に楽に戦っていた。巨体の熊さんの攻撃は熊さんパンチのみで、巨体からのタックルもあるが、感覚が鋭くなったお陰で簡単に避ける事が出来た。しかもレインの攻撃が通るのでどんどん斬り付けてダメージを負わせている。


しかし、その巨体故か魔物の特徴なのか凄くタフであったため、なかなか致命傷を与える事が出来なかった。そして遂にレインが勝負に出た!


「はぁはぁ………流石に疲れてきたから取っておきを使うかな!」


ドスンッ!!!!


熊さんが膝を付いて動きが止まった。ダメージは確実に与えていた様だ。レインは剣の構えを変えて、水平に腰を落としてレイピアの様に剣を真っ直ぐに構えた!


「いくぞ!!!!ソード・チャージ・スラッシュ!!!」


レインの【剣術スキル】が炸裂した!この世界には魔法と聖歌以外に【スキル】と言う特殊技がある。攻撃の技だったり、気配を消したり、はたまた魔法の様に炎を出したり様々なスキルがある。スキルは厳しい修行や練習の時に閃いたり、戦闘中や魔物を倒した後に覚える事がある。明確な基準は無いが、一定の経験を積んだ時に閃くようなのだ。


攻撃力を倍加させたレインの攻撃は巨体の熊さんを真っ二つにした!


グオォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!


熊さんは血走った目の色を失い絶命した。

ちょうど、クロウとミリアも周りの魔物を殲滅していた。


「ふぅー!何とかなったかな?」

「そうねーけっこう楽だったかも♪」

「シオン!見てくれたかい?僕の勇姿を!」


シオンとイオンは少し離れた場所から魔物の屍が転々とする殺伐とした状況を冷静に分析していた。


「ねぇ、シオン。言ってもいいかな?」

「イオンさん、私も言いたいです………」


二人は同時に呟いた。


「「これって私達の仕事じゃ無いよね!!!」」


魔物が50体ほどと、ボス級の巨大な熊さんなど、一国の軍隊規模、もしくは冒険者ギルドが総出で対処する案件だろう。このたった5人で解決する事案ではないのだ。まぁ、シオンの聖歌とチート級の力を持つ、レインを筆頭にした仲間達のお陰である。


「とりあえず、倒した魔物の魔石を取って素材も剥がせるだけ剥がそう。放っておくとまた別の魔物が生まれてしまう」

「そうね。ちゃっちゃとやりましょう!」

「シオンとイオンさんは森小屋を見てきてくれない?魔物が入れなかったはずだから、危険はないと思うからね」


「了解です!」


各自が作業に入った時、シオンも森小屋へと近付いていった。


「護りの結界が効いているわね。あれだけの魔物を相手に良く持ったわ」

「本当にねー!」


森小屋のドアを開くとシオンは小さな悲鳴を上げた!シオンの叫びにレインを始めた周りの仲間がすぐに集まった。


「どうした!」

「シオン大丈夫か!?」

「どうしたの?」


シオンは森小屋のドアを開けた奥を指差した。


そこには─


血だらけの冒険者が倒れていた。まだ息があるようだ。


「いけない!すぐに治療をしないと!?」


すぐに血だらけの冒険者にポーションを飲ませるがすでに虫の息でたいした効果が無かった。


「うぅ………誰?……誰でも良い、きいてく…れ」


「喋ってはダメよ!死んでしまうわ!」


ミリアは止血しながら、喋べらないよう止める!


「も…う、長くない……それより、こ、これを………」


冒険者は右手に持っていた大きな【赤いクリスタル】を渡してきた。

「も……りで、ダンジョンが…生まれ……た。そこで取って……来た」


!?


まさか─





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【後書き】

愚者の声

「はいっ!良いところで次回を待て!」

シオン

「死ねやーーーーー!!!!!」


ホゲラッ!?


愚者の声

「がっは………なにをする………?」

シオン

「焦らすのはサイテーですわ!早く続きを書きなさい!」

愚者の声

「ま、まだ出来ていないのよ!」

シオン

「書け!今すぐ書きやがれですわ!」


ぐわしっ!グイグイッ!


愚者の声

「ちょっ………やめっ……気持ち悪い……」


あぁーーーーーー!!!!!



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