シオンの日常はコメディです!

シオンの自宅は村の中央にあった。そう村を統治する【辺境男爵家】の娘である。1つ上に兄がいるので家督騒動は起きないだろう。シオンの父親はやり手の貴族で代々、魔境に隣接するこの村と近くの村を3個ほど統治している。


領地を発展させる事に尽力し、王都には年に何回かの社交界に顔を出すだけで、ほとんどをこの辺境で過ごしている。王都の貴族達には変わり者と呼ばれているが、それは中央に興味がないと意思を示していて、この辺境の価値を王都に知られないようにしているのだ。そう、魔境にある希少価値の素材と【シオンの存在】を隠す為に……


その価値であり秘密についてはもう少し後で明らかになるだろう。


「ただいまー!」


元気に帰宅したシオンは居間に移動し、侍女に飲み物をお願いした。うちの侍女(メイドさん)は【大変優秀】で、いつも助かっています。


「まったく、もう少し貴族の令嬢としての振る舞いは出来ないのか?」


父親のカイン・シルフィードがソファーでくつろぐ娘のシオンを見て溜め息を付く。


「お父さん、ただいまー!」


!?


「………お父さんだと?」


父親であるカインの声色のトーンが下がった。


『やべっ!』


シオンは慌てて言い直す。


「た、ただいま。【パパ!】」


そう言うとカインは顔をにやけさせ、シオンを抱き締めた。


「今日も森に出掛けたと聞いたから心配したんだぞ?」

「ごめんなさい!」


父親の胸の中で謝るシオン。カインはシオンの頭を撫でながら、シオンパワー補充中~と意味のわからない事を言いながら、しばらくそのままでいた。シオンはめんどくさいなーと思いつつ、黙っていた。

抵抗しても無駄だと分かっているからだ。


普段は凛々しい、イケメン貴族の30代のカインは人気がある。しかし、親バカである為にシオンの前ではとっても残念な人物になるのだ。


「こら!?いつまで僕のシオンに抱きついているだ!くそ親父!」


いきなり父親の背中に飛び蹴りを喰らわせた人物がいた。そう、シオンの兄のレインだった。


「ぐふっ!?いきなり何をするか!バカ息子め!」

「そう言う親父はバカ親父だろうが!」


倒れた父親に代わってシオンを抱き締めるレイン。


「貴様こそ!兄の癖に何をしている!?」

「何って、シオンパワー補充中なんだけど?」

「うむ、そうか………それなら仕方がないな」


はっ!?


だからシオンパワーってなんだよ!?ってか、仕方がないの!?誰か教えて!え□い人!!!


シオンの心のツッコミはスルーされて、ようやく解放されたシオンは、精神的に疲れ切ってソファーに倒れるように掛け直した。


『もうやだー!この家族!!!』


げっそりした顔でシオンはヨロヨロとソファーに座った。今の騒ぎをスルーして、【気配を消しながら】紅茶を入れてくれた侍女にお礼をいって喉を潤した。そこへ─


「あらあら?楽しそうね?私も混ぜてくれないかしら?」


遂にゲーム序盤にしてラスボスが現れた。


戦う!

守る!

逃げる←


逃げるを選択したが、ラスボスからは逃げられない。


戦う!

守る!

逃げる←


ラスボスからは逃げられない。


「あら~?シオンちゃん?どこに行こうとするの?ママは悲しいわ~」


ぞくっ!!!?


「どこにも行きませんよ!ママ!!!」


そしてママにも抱き締められシオンパワー補充よ~と、しばらくそのままでした。父と兄も喧嘩を止めて見守るだけでした。


ママ強し!!!


そして壁際で、気配を消して空気と化している執事と侍女達は【生暖かい目】でシルフィード家の家族の団欒を見守るのでした。


ねっ?うちの執事と侍女は優秀でしょ?

(空気が読めるし、空気にもなれるから)


これがシオンの日常なのです!


(次回からドタバタコメディがスタートです!)



嘘ですよ?

(シリアスさんが来ます!)





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【後書き】

シオン

「判決!死刑ですわ!」


愚者の声

「ちょっ!せめて弁解を!?」


シオン

「弁解は無用です!ファンタジー小説なのに、すぐにコメディなんて許しません!」


愚者の声

「い、いや!シリアスに入る前の、場を和ませようとですね………」


シオン

「……………」



愚者の声

「…………てへっ♪」



シオン

「死刑ですわ!!!!」



ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!




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