緊急クエストですよ!

いつもと変わらない日常に、変化があった。

いつも通りカリンさんを、からかいに冒険者ギルドへ行くと大勢の冒険者や守衛さん達が集まっていた。


「シオンちゃん。ちょっと緊急事態だから大人しくしていてね!」


おおぅ!いつものヘタレのカリンさんが受付嬢に見える!?


『失敬な!私はベテランの受付嬢です!』


キッとシオンを睨み付けて、心でツッコミを入れるカリンだった。


「さて、緊急クエスト発行は5年ぶりになります」


!?


何があったの!?


「数日前、隣のザーコ子爵の領地にある村が盗賊に滅ぼされたと火急の知らせが届きました。このシルフィード男爵領に隣接する所ですので、盗賊がやってくる可能性があります!」


ざわざわ!ざわざわ!


「盗賊の規模はわかっているのか?」


冒険者から質問が投げられた。


「盗賊の規模は30人程の中規模で【血濡れ狼】です!」


「ちっ!名前持ちグループか!」


小規模の盗賊団などは名前などなく、日々の生活費を稼ぐため商人を襲う。しかし名前持ちの盗賊団は、自分の盗賊団の名を広めようと悪逆非道を繰り返す!傭兵が盗賊落ちする事もあり、普通の盗賊より手強いのだ。


「しかし、30人ほどであればこの村なら守る事は可能だろう?冒険者や守衛をかき集めれば60人ほどはいるからな」


カリンの上司であるギルマスは首を振った。


「近年、この村は景気が良く辺境にも関わらず王都からの商人も多く来るようになった。盗賊を放っておくと商人の往来が無くなり物資が不足するようになるだろう。ここまでは良いかな?」


ギルマスは辺りを見渡して続ける。


「今回、緊急クエストを発動したのは血濡れ狼に【歌人】が確認されたからだ!」


!!?


「ま、マジかよ!!!!」

「どうして歌人が盗賊に………?」

「敵の戦力は10倍になるぞ!?」


歌姫の存在に浮き足出す冒険者や守衛達だった。


「静まれーーー!!!!」


ギルマスの後ろから良く見慣れた人物が現れた。そう、うちのパパンだった。


「盗賊に歌人が居ようと我々のやるべき事は変わらない。それにこちらにも【切り札】はあるのだ!」


いつもの親バカのパパでは無く、統治者としてのパパがいた。


『ヤバい!カッコいいぞ!?』


凛々しい父親にドキッ!とするシオンだったが、カリンさんも父親を見てうっとりしていた。


『おいこら!既婚者であるうちのパパに熱い視線を送るな!?』


…………なんやかんやでシオンもファザコンが入っているのでした。


冒険者の1人が聞いた。


「切り札とはなんですかな?」

「相手の歌人の力を相殺するんだ。すまないが詳しい話は後でする!まずは、シーフのスキルを持つ冒険者が先行して盗賊達の動向を探す。盗賊団の場所がわかったら速やかに戻って報告すること。盗賊団がやってくる事がわかれば、村の外で野戦を仕掛ける!」


「「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」


パパの作戦を理解した冒険者達は一斉に掛け声を上げた!そして一部の斥候の冒険者は村を出た。その間に他の冒険者は武器の手入れをしたり、村人達の避難を確認したりした。


「シオン、ちょっとこっちに来なさい」


パパに呼ばれて2階にあるギルマスの執務室に入った。いやはや、初めて入ったよ!


「シオン、ちょっとこの【歌詞】を唄ってみてくれないか?」


パパに歌詞を見せて貰った。おおぅ!初めて見る歌詞だよ!?


まず、鼻唄でリズム感を取りイメージが固まったら唄ってみたの!


『我々に熱き火を灯す____勇気を持って敵から守る光を

遥かなる頂きにある魂____今、皆の力を呼び起こし脈打つ絆


全てを包み込む心を1つにして____弱き心を打ち砕け!』


シオンが唄い出すと、室内は眩い光に包まれて皆、目を押さえた。


「何が起こったの!?」


眩しい光は収まったが、シオン自身はうっすらと光っていた。シオンの父であるカインとギルマスは自分の身体を確認していた。


「まさか!ここまでとはな…………」

「流石は、私の娘だ!」


シオン以外は理解しているようだが、シオンは何がなんだかわからなかったのでパパに尋ねた。


「どういう事か説明してよ!?」

「おおっ!すまない!ちょっと確認したかったんだ。今から説明するよ」


ブスッと頬を膨らませるシオンを宥めるようにカインは説明した。


「今の歌詞は実は【魔詞】だったんだ。敵から身を守る支援系の魔詞で、防御力を劇的に底上げするんだ」


へぇ~そうなんだ。だからパパやギルマスは自分の身体をチェックしていたんだね~


んっ!?


魔詞って………?


「そうだよ。シオンは【歌人】なんだ。今までは無意識で唄って【微妙な力】を使っていたんだね」

「歌人…………」


いきなり言われても困るのですが………?


どうすれば良いんだろう!?


困惑するシオンにカインとギルマスはゆっくりと丁寧に話していくのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

【後書き】

愚者の声

「遂にシオンの隠された力の秘密が明らかに!?」


シオン

「小説の連載が始まってすぐでしたね」


愚者の声

「今後は歌を武器に戦い始めるシオン!」


シオン

「めんどくさいから嫌ですわ」


愚者の声

「み、みんなのを護る為に頑張る!」


シオン

「お父様とお兄様がチート持ちですからなんとかしてくれますわ♪」



愚者の声

『シオンが言う事を聞いてくれない……』

(つд;*)

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