第25話「いい性格してるわ。あなた。」


「相生さん……?」


監視カメラの映像にはきれいな黒髪の女の子を映す。ライダースーツに重装備、これは完全にー


「なんで、相生さんが……」

「そりゃ、寝返ったんだろ。」

「!?」

「わかるだろ?ヒロ。」

「……より子」

「ごめんね。ヒロぽん。私も同意見。」

「くっ……」


そんなことは俺にもわかる。けど信じたくない。


「柏木さん。状況は?」

「駐車場からこちらに向かっています。どうしますか?」

「……ケイ」

「はあー……しょうがねぇな……腕一本くらいは覚悟してくれよ……」

ケイはジャケットを脱ぎ、部屋をでる

「より子。報酬、考えとけよ?」

「ありがと、ケイ」

「ど、どうするんだ?」

「ケイが止めるよ。本当は殺すことも出来る。ここは軍事会社だからね。でも、ファクターのこともあるし、それに、ね。」


より子は俺のことをおもんばかったのだろう。

「より子……恩に着る。」

「あたしとケイに貸し一つずつね。」

「より子には2つ目か……」

「デート二回だからね♪」

「はは……」


次はどこへいくやら、って違う!






ー地下駐車場ー

「………」


私は一体何をしてるんだろう。

何でこんなテロリストのような。

そうだ。

彼を、広山くんをー



「よお。」

「……」

「あんたが、相生か?」

「……」

「おいおい、洗脳されて話もできないってか?」

「あなたは?」

「ふーん、けっこうかわいい声だな。俺はケイト・アンガーだ。怒のファクターもちっていやぁ、わかんだろ?」

「……」

「なぁ、マスクとれよーそっちの方がいいって」

「……」

カチッ

カランカラン

「ヒュー♪ますます好みの顔だ。ヒロにはもったいないから俺が貰っちまおうかな……」

「広山くんを渡して。」

「そっちの条件はそれか?ここは不可侵領域ってのわかってるか?」

「……?」

「……なるほど。こりゃ確かにマリオネット(操り人形)かもな。」

「……何を言ってるの」

「いや、こっちの話だ。俺たちはあんたを確保するのが目的だから、悪いけど痛くするぜ」

「……私も手加減はできない。」

「楽しもうぜ、なぁ!!!」


10代女子同士のキャットファィトが始まった。



・・・・



ー会議室ー



「ヒロぽん、これ」


より子は黒い何かを渡す。

これはー

「け、拳銃!?」

「サプレッサー付きの麻酔銃」

「なんで俺に?」

「たぶん必要になるから、ね。」

「だってケイトが……」

「多分、止められない。」

「えっ……」


訳が分からない。ケイトは相生さんをとめられるから向かったのではないのか?


「ケイは強いけど野戦、大人数戦向きなの。しかもガンファイターだし。近接で1対1じゃ多分あのてっ……相生さんのほうが強い。でもダメージと消耗はさせられる。」

「じゃあケイトは当て馬にされにいったってこと?」

「そう、だね。ケイもあたしも。」


より子は俺と同じ拳銃を取り出した。


「より子!?」

「ケイとあたしが当て馬、そして本命はヒロぽん。ごめんね、いきなり本番で。でもここを乗り切れば絶対にファクターの問題は有利に進めるようになるから」


「俺が本命って……」

「あたしたち二人が道を開きチェックにする。そしてヒロぽんがチェックメイト。相生さんを止めて。きっとヒロぽん相手なら隙ができるから。なんでもいい、隙を作って!」


より子は必死の顔だ。いつものヘラヘラした感じではない。


「……!」


年下の女の子にここまで覚悟を求められたら、やるしかない!


「……やる、やるよ。」

「お願いね。」


そういうとより子も会議室をでる。


一人残された俺は

「柏木さん、お願いがあります。」


柏木さんにある物をたのんだ。




ー地下駐車場ー


ガッ

カランカラン

バッバッ

シュッ


「こいつ」「この人」


「「強い!」」


体術では私に優位性があるはずなのに、決定打に欠けている。

もしかして、戦いを引き延ばされている?


「くっ……」

「ははっ!どうした!集中してねぇーじゃんかよっ!」


隠していた警棒で向かってくるケイトの一撃を

両腕で受け止めてそのまま捻る。


「いてててて!」


カランカラン


「!?」


ケイトの手からは手榴弾が転がる。

必死に私は距離をとったが不発だった。


「なーんてな。離してくれてありがとさん。」

「……」


わかったこと、それは彼女が戦い慣れていること。


「はぁ……はぁ……」

「さあ、どうしたよ。もう終わりか。」

「………」


私は一番の得物を手に取った。


それはー


ブォン

「げっ……」


帯電ブレード。

相手を打撃と電撃で討ち果たす武器。


剣術に関して容赦はしない。


「いきますよ。」

ダッ

ブォン


「……っ!!」


剣道の要領で一瞬で詰め、切る。


バァン

バチッチチチチ


「うがぁあぁあ!!」


当たった。

電撃がきいているようだ。


ーーーー



「いてぇ……」

なんなんだ、全く見えなかったぞくそっ!


剣を持ったあいつはヤバい。なぜなら日本のチャンプらしいから。さっききいたけど。


ブォンブォン


「くっ!」


バチッ


「あがっ!」


左手はしびれて使い物にならない。

こんな奴相手に銃無しなんて無理だろ!あとであの二人しばき倒す……!


「はっ!いい感じのマッサージだぜ……!」

「強がり」


ブォン

バチッバチッ


二発

今度はわき腹と膝


「ぐっ……」

「女の子だから、面はやめてあげるけど、そこを退いて。」

「へぇ。それはありがたいが、ねっ!」


ピンッ

バッ


ピンを抜いて投げたのは閃光手榴弾


ピカッとあたりがまぶしく光り俺は距離を詰める。が。


相生は目を閉じていた

「なっ……!」


タンッ

ズッ

「……!がぁ!」


鋭い突きが飛ぶ。俺は後ろに吹っ飛ぶ。


「……く……そっ……」

「はぁ……はぁ……はぁ……」


相生もだいぶ疲れてきてる。

俺も意識の限界が近い


「もう一押しだっ!」


ガチャッ


「!!!」


ババババババババ

ババババババババ


ゴム弾のサブマシンガンで逃げる後を追うように撃つ。


「はぁ……はぁ……」


目的は奴を走り回らせるため。

疲れさせるのが俺の仕事。


「逃げろ!逃げろ!ほらほら!」



ババババババババ



カチッカチッ


弾切れ

「ちっ。あっ」


リロードする。が。


カランカランカラン


弾倉を転がしてしまった。


「くそっ……!?」


その一瞬を相生は見逃さず


バターン

ガバッ


俺の上に馬乗りになった。


「はっ……はっ……はっ……」

「いい絵だなぁ……次はベッドの上で頼むぜ」

「いい性格してるわ。あなた。」

「だろ?惚れたか?」


プシュン


「うっ……」

俺は意識を失った。





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喜怒哀楽少女戦線 一ツ木 @hitotugi

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