第23話「ハリウッド映画みたいだ」
俺の知らない情報を
彼女たちは持っているらしい。
より子は電話をとり、どこかにかけた。
「えっと、今上手く説明できる秘書さんをよんだから。」
「秘書さん?」
「うん。アタシ専属の。」
より子さん、あなたは一体何者なんですか……
「あはは!その顔ウケる♪」
「いや、真顔だよ!」
「あはは!」
「失礼致します。」
「お、来た来た。柏木さーん♪」
「より子お嬢様、ケイト様、ご無事でなによりです。そして、広山ヒロ様ですね?」
「は、はい!」
その秘書さんはいかにもって感じのキレイな女の人だった。
「柏木さーん。1からヒロぽんに教えてあげて?」
「承知いたしました。」
ピッ
柏木さんはリモコンを操作する。
するとスクリーンが降りてきてプロジェクターが起動した。
「では、我々『喜連川軍備株式会社』の説明から、全体の構図、現在の状況までご説明いたしますね。質問は後でまとめて行いますのでそちらのソファーにおかけください。コーヒーはいかがいたしますか?」
「あっ、それはあたしがやるからいいよ~」
「そうですか?ではお願い致します、お嬢様。」
「はいはーい。」
ナチュラルにお嬢様呼びって……。
いや、考えるな。感じろ。広山ヒロ。全てを。
じゃないとこれから頭がついて行かない気がする。
「よろしいですか?ヒロ様。」
「えっ?あ、はい!」
「では、始めますね。」
「ここは喜連川軍備株式会社のオフィス兼複合施設となります。ここが応接室。他にも会議室、トレーニングルーム、仮眠室、医務室、治療用のオペ室、訓練用の体育館等がございます。屋上にはプールも。」
いきなり情報が
多い。
「喜連川軍備とはより子お嬢様のおじい様でいらっしゃる喜連川宗悟様を創始者として始まった軍事設備を扱う会社で、先代で株式会社になりました。」
「つまり、武器屋ってこった。」
「日本に、あるんだね……武器屋。」
「現在は代表を別の者がやっておりますが、より子お嬢様が成人し、準備が整い次第お嬢様を代表とする予定です。」
「昔の武家みたいな制度だね……」
「まさにそのままだろ。」
ケイがいい感じに噛み砕いてくれるので、少しずつ理解ができる。
「最近では研究の主力をドローンにシフトチェンジしております。我が社はお嬢様の意向で、少しずつ軍事産業からロボット産業へスライドさせていく計画なのです。」
「戦争に力を貸すなんて、嫌だからね~」
より子がコーヒーを持ってきた。
ケイではなく俺の横に座る。
「お隣失礼しま~す♪」
「キャバ嬢かよ……」
「ご指名ありがとうこざいます♪」
「してないんだな~これが。」
「お前ら仲いいな~」
「まぁね♪」
「柏木さんすいません、続けてください。」
「そうですか?では続けますね。」
スライドが切り替わる。
そこにはGFの2文字。
「ヒロ様はGFがどういう組織か、ご存知ですか?」
そういえばよく知らない。
「いえ、秘密組織的な物だと思ってました。」
「半分は正解です。GFは表向きは製薬会社、裏では武力を持った秘密組織です。表向きの製薬会社のGFはジェネリック・フロンティア(genericfrontier)の略語ですが、他にも隠れ蓑にしている子会社も多く存在し、裏は裏のGFが存在すると考えられます。警察とのパイプもあり、事件のもみけしなどは造作もないのです。」
「うえー……ハリウッド映画みたいだ」
「いい例えですね。」
「ヒロぽん、今度映画見に行こうよ!」
「あーそのうちなー。」
「やったー!言質取ったよね?ケイ?」
「あ?ああ。聞いた聞いた。」
「よし!」
「柏木さん」
「はい。続けますね。」
「我々喜連川軍備とGFは対立関係にあります。皆様を襲ったのは恐らくGFの戦闘部隊です。ですが、彼らはこちらの事務所や住居、このビルなどの不可侵領域には踏み込んできません。同時に我々もGFの不可侵領域には踏み込めないのです。それを破ってしまえば戦争になりかねませんので……」
「確かに、武器屋と戦闘部隊の抗争なんて戦争ですもんね……。」
「だな。日本は非戦闘地域じゃなくなる可能性もある。」
「だから追ってこなかったのか……」
「続いてお嬢様達のファクターについてです。我々喜連川軍備としては一つの仮説を立てています。」
「仮説?」
「はい。ファクターについて初めて情報をだしたのはGFなのです。お嬢様の力を我々が確認したのはGFより後でした。つまりGFはファクターの力を最初から知っていたかもしれない。」
「ファクターをより子達に持たせたのは、GFってこと?」
「そういうことです。しかし、その仮説を立ててはいますが何故この力を得たのかはまだわかっていません。」
「そうなんですか……」
「はい。現在調査中です。以上がここまでの状況となりますが、質問はございますか?」
「ヒロぽん、ある?」
ある。
というかそれしかない。
「相生さんは、どうなりますか。」
「どうなりますかとは?」
「彼女は……生きてかえって来れますか……」
ただ、ただ、それが心配だった。
「それについては、はいと断言できます。」
「えっ!?」
「相生哀様。彼女がファクター持ちの少女であることはもちろん重要な理由ですが、四人の内1人でも欠けると均衡が崩れて何が起こるかわからないという説があります。これは我々もGFも共通見解のようです。ですから相生様が殺されることはまずありません。それに彼女は元からGFに協力していたと聞いております。尚更殺される事はないかと。」
「だが。」
ケイトが割って入ってきた。
「ケイ?」
「だが、今までと同じではいられないと思うぜ?恐らく再教育される。」
「再教育……?」
「必要な情報だけを残され、知ってはならない情報は消される。いわゆる洗脳だ。」
「洗脳!?」
「次は俺たちを捕らえるためにさらに無口な戦闘戦士にされるかもな?」
「ケイ。あんまりヒロぽんを脅さないで。」
「ま、覚悟の問題だ。そうなったときにどの選択肢をとるのか、それをきちんと準備すべきだと俺は思うが。」
「それは、そうだけど……」
覚悟。
俺に相生さんをどうしろというのだ?
「相生は戦闘能力的にはどうなんだ?柏木さん。」
「彼女の身元を調べましたが、相生家は武家で剣道、柔道、合気道どの分野でも彼女は達人級の資格を持っています。」
「なっ……」
不良達とのケンカでそれをみたけど本当に強かったんだ……相生さん……。
「ふーん。じゃあ、ここで戦えるのは俺だけか。」
「うん。ケイしか渡り合えないね。」
「ふー……やれやれだ。願わくばやり合いたくないな。」
その時
ビーッ
ビーッ
ビーッ
一階ヨリ侵入者!
一階ヨリ侵入者!
一階駐車場側ヨリ侵入者デス
警報が鳴り響く。
「なっ!?なに!?不可侵領域じゃなかったの!?」
「確認します。」
カタカタカタ
ピッ
そこに映し出されたのは
黒のライダースーツにも似たミリタリージャケットを着て、口だけを鬼の口の形をした仮面で隠した
「……相生さん!?」
だった。
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