第21話「気に入ったぜ。よし、ついて来な。」

武装した数名の男は構えをとかない。

「あんた達は何者だ?」

「……」

沈黙を守っている。

だが、その装備にかかれている二文字を俺は見逃さなかった。

「GF……?」

「なにが目的なの。離して!」

相生さんは隊長らしいに腕を拘束される。

「相生さん!」



万事休すか……!




その時



ダンダンダン!!

パリーーン!!!!!



誰かが窓を破って突入してきた!


その人はスタイリッシュなミリタリースーツとフルフェイスのマスクをしている。


まるで忍者だ。



カランカラン

パン!

シューーーーー!


その忍者は煙玉ならぬスモークグレネードを投げた。


「くっ!」「敵襲だ!?」「なんだ!?」「体制を崩すな!」「落ち着け!」


煙立ち込める店内で

「ぐぁっ!」

「ぅぉっ!」

「ぎゃぁっ!」

次々と隊員が倒されていく音がする。


「この!」

「邪魔だおらっ!」

目の前で隊員が背負い投げされる。

が、身体の大きい隊員が後ろからその忍者を羽交い締めにした。


「離せクソがっ!」

「大人しくしろ!」

ゴッ

腹を殴った。

「がはっ!?……テメェ!!」

「貴様、顔を見せろ!」

他の隊員がメットを取る。


まずい、このままではあの人もやられてしまう。何か……手はないのか!?そう言えばより子は!?

「んん~!」

「こら暴れるな!」

より子を担いでいる隊員は少し離れたところにいるが、暴れ出したより子の声で何となくどこにいるかはわかった。


そうだ!

より子のファクターなら、この状況を!!


「うおおお!」

「なんだこのっ!」

俺は必死に男にしがみつき、より子に手を伸ばす。しかし、隊員の力は強い。

「離れろ!」

ゴッ

「ぐっ!」

顔を殴られた。口の横が切れる。

倒れる時に何かがこめかみをかすめて血が出る。

「まだまだぁ!」

今度こそ!より子の口のテープを外すんだ!


「離、れ、ろ!!!」

必死の抵抗。で、隊員は煙の中倒れている別の隊員に転び、より子を落としてしまう!


まずい!

必死で飛び込んで

なんとか小さい体をキャッチした!

俺は身体を強打した。

「いたっ……」

ビリビリビリとより子の口のテープをはずす。

「ぷはぁ!」

「より子!無事か!?」

「その声はヒロぽん?キャッチしたのも?」

「その感じなら元気そうだな。より子たの!?っく!?」

さっき倒れた隊員が後ろからチョークスリーパを仕掛けて首を締め上げる。

「が……あ……」

「ヒロぽん!?大丈夫!?ねぇ!?」

「……れ……かれ………」

「怒……れ……!より子ぉぉ!」

命を振り絞った伝令。

頼む、伝わって……く……


「!!」


スゥー……


『ヒロぽんに触んなクソムシどもがぁぁぁ!!』





思いは通じた。

さすがより子だ。

好きになっちゃいそうだ……!


「くっ!」「うわっ!」「ああああ!」

バタバタと倒れる音。


より子の本日2回目の感情攻撃が発動したのだ。


「広山くん!より子ちゃん!」

その声は……相生さん……

俺はさすがに締められすぎて、意識が朦朧としている。


「広山くん!大丈夫!?」

「い、いから、より子、を」

「……わかった。より子ちゃん。今解放するから!」

「ヒロぽんは!?ヒロぽん無事!?」

「無事よ。隣にいる。」

目隠しをとり、手足のテープをはがしてもらうより子。


俺は朦朧としながらなんとか起きあがるところまでは回復した。


「ヒロぽん!」

「よ、り子……ナイスシャ……ウト」

ガバッと抱きついてくる。

だから、勘違いさせるようなムーヴを……

「怪我は、な、いな?」

「うん……。やっぱりヒロぽんはヒーローだよ……!」

「ダジャレ、か?」

「んもぅ!」


「オイ、より子!」


さっきの忍者さんはマスクを外している。

それは、なんと、女の人だった。

腕や顔に切り傷が出来ている。


「ずらかるぞ。恐らく追っ手が来る。」

「ケイ!助かったよ!」

「助かったよ!じゃねぇだろ!だからアジトでやりゃー良かったのによぉ」

「あはは。反省します……。」

「俺が先導する。アジトでいいな?」

「うん。よろしく。」

「広山君、立てる?」

「あ、ああ。大丈夫……。」

「ごめん。ヒロぽん。アタシ、なんか薬撃たれちゃって……力入んない……」

ふぅー……あーもう、仕方ない!

男として、ここが気合いのだしどころだ。

パンパンと顔を叩き自分を鼓舞した。

「シャア!いくぞ!!おらぁ!!」

「ふぇっ!?うぇぇぇ!?」


俺はより子をお姫様抱っこした。

やはり予想通り、恐ろしく軽い。

ちゃんと飯を食ってんのか一度確かめないといけないかもしれない。


「ハッ!いい空元気だな、兄ちゃん。」

「そりゃどーも。空元気が続く間にさっさと行きましょう!」

「気に入ったぜ。よし、ついて来な。」

「ヒロぽん……大丈夫……?」

「揺れるから、ちゃんとしがみついてくれ、より子。」

「はーい♡ヒロぽん大好き♡」

「笑わせんなよ……!相生さん、行ける!?」

「ええ。急ぎましょう……。」

少しは反応してほしいなぁ~。

でもなんか歯切れ悪いな相生さん。


店をでて、人のいない路地へ入る。

今のところ追っ手はないが、

先陣を切る女性は、早い!


「はぁはぁはぁ……んくっ。はぁはぁ……」

普段運動しない俺にとって、より子がいくら軽いとはいえ、きつい。

滝のような汗、呼吸も異常。肺が痛い。

「ヒロぽん、頑張って……!」

「俺、明日、か、ら、筋、トレと、ラ、ンニ、ングするわ。」

「もう少しだから……」

「……」

相生さんは少しうつむきながら後ろをついてくる。

 


しばらくして病院のような複合施設が目の前に現れた。


「ここだ!より子!ロック解除!」

「うん!ヒロぽん降ろして!もう歩ける!」

「あ、ああ……」

はぁはぁはぁ……着いたのか……?


ピッピッピピピ……

電子音が聞こえる。


後ろを見るとこの街に似つかわしくない大きい車が向かってくる。

「くそっ追っ手か!まだか、より子!?」

「あと少し……よし!開いた!」

ガチャっと扉がひらく。

「はやく入って!」

「相生さん!!」


しかし、

彼女は

施設の少し手前で立ち止まる。


「相生さん!急いで!」

「ごめん。広山くん。」

「えっ?」

「私、博士の真意を確かめないと。」

この期に及んでまだそんなことを!?


「捕まったら終わりだ!早く!」

「……ごめんなさい。」

カ彼女は向かってくる車に歩いて向かってしまう。

「待……っ!?」

足が限界だった。前にも後ろにも進めない。

「何やってんだお前ら!?……くそっ!」

ケイと呼ばれた女性は、俺を掴んで建物の中へ引っ張った。


「相生さん!!!相生さん!!!!!」


ガチャ


重いドアは閉まる。


「相生さん……なんで……」


それを言い残して、俺の意識はブラックアウトした。


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