第14話「アタシが導いてあげるよ?♪」

 流れるように平日がおわり、約束の土曜日がきた。


 遊園地の最寄り駅で待ち合わせだが俺の方が早く来たみたいだ。

「寒いな……」

 季節は晩秋。少しずつ寒さがやってきている。

 電車が来た。これに乗っているだろうと改札から出てくる人を見ながら待っているといつものダウナー系とは少し違う、小悪魔っぽさ増し増しの可愛らしい格好をしたより子が歩いてきた。オフショルダーのシャツにインナー、ミニスカでボーダーのニーハイとは、やりますねぇ。それって何系っていうの?

「あー!ヒロぽんみーっけ!」

「遅いぞーより子ー」

「ごめん、ごめん。さぁ、いこー♪」

 楽しそうなより子。ポジティブな感情を表に出せるのはやはり人間にとって大切だと、つくづく思う。


 チケットを買っていざ入場。

 土曜日というのもあって割と混んでいる。


 カップル、子供連れ、女団体、客層は様々で俺達はカップルに見えるだろうか?


「あ、まずあれ乗ろう?♪」

 より子が指さすのはジェットコースター

「いきなりですか……」

「ヒロぽんビビってんの?ウケる~♪」

「びびってませーん。全然びびってませーん。困るなぁ勘違いされると」



 ジェットコースター

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ひゃっほー!!!!!!!」


 死ぬ!絶対に!死ぬ!

 許して!!!!!


「はぁはぁはぁ」

「大丈夫?」

「まだまだ……」

「じゃあ、どんどんいこー♪」


 その後、別のジェットコースターを二種類、お化け屋敷、コーヒーカップなどを堪能した。


「……」

「休憩しようか?ヒロぽん」

「平気だ。」

 平気ではない。


「じゃあゆったりした、観覧車行こうか?」

「仕方ないな。より子が言うなら。」

「もっかいジェットコースターいく?」

「ごめんなさい。より子様ぁ……」

「あはは♪ヒロぽんおもしろ♪」


 一時の安らぎ。

「うわぁ~高いなぁ~♪」

 本当に楽しそうにしているより子。

 何か策があるんじゃないかと勘ぐっていたが、彼女に、とっては本当にデートなのだ。少し申し訳なくなった。


「より子は高校には行かなかったのか?」

「なーに急に?もしかしてうちの制服姿見たかった?そっち系?」

「いや、見たいけど。いやそうじゃなくてまじめにさ。」

「んー……教えてあげてもいいけどー」


 いや、よく考えるとこれはよくない質問だ。


 彼女の力は怒りでトリガーを引く。

 感情豊かな彼女にとって学校は感情が揺れ動く場所に他ならない。きっと彼女はどこかで、。人間なら当たり前だ。


「……ごめん。なんでもない。無神経だったかも。」

「ふーん?……んふふ。今のはポイント高かったかな~♪」

「?」

「なんでもなぁい。」

「あと、もう一つ聞きたいんだけど」

「なに?」

「何で隣に座ってんの?」

 より子は二つある席をわざわざ狭い俺の横に座る。距離が近い。

「えー?だめ?」

「ダメじゃないけど……」 

 より子の服は前が大きく開いて肩が出ているタイプだ。だからあんまり近いと胸が上から見えそうになる。

「だから……」

「……?あ!」

「な、なに?」

「ヒロぽんのエッチ~♪」

 ば・れ・た。

「……」

「ねぇ?見えた?おっぱい見えちゃった?」

 具体名を出すなー!

「見てないでーす。」

「見たんだ~ヘンタ~イ♪」

年下におちょくられている俺。無様なり。

でも、より子とのデートは正直、結構楽しい。


休憩所で昼飯にする。

ホットドッグとチキン、チュロス、ソフトクリームを頼まれた。

かなり混んでいる。両手いっぱいに食べ物を持って席に戻った。

「おまたせいたしました~♪」

「遅いよ~お兄さん!」

「申し訳ありません。道に迷ってしまって……」

「目の前じゃん!」

「いや、人生という道に迷っております。」

「アタシが導いてあげるよ?♪」

「遠慮しておきます……」

「なんでよ~」

そんな漫才を繰り返しながら、俺のソフトクリームはほとんどより子に食われた。

「じゃあ次はあれだ。」

俺はゴーカートを指さす。

「いいよ♪その次はあれね?」

より子はメリーゴーランドを指した。



 ゴーカート

「うおおおおおおお」

ゲーセンのレースゲームとはかなり違うが結構楽しい。

「いけいけいけ~!おさき~♪」

より子はスイスイと前に出ていく。くそ!これが、センス!!


 メリーゴーランド

「~~♪」

なぜだ。なぜ。

「すごーい!初めて乗ったかも~♪」

なぜ。より子は。

俺の前にのっている。

「なんで別のに乗らないんだよ!」

「初めてだから乗り方わかんなかった~あはは♪」

ほ・ん・と・か?

小さい身体が寄りかかってくる。

これじゃ本当にバカップルじゃねぇーか!!


土産屋でキャラクターの耳のついたキャップやらクランチチョコの缶やらを買って、なぜかおそろいのストラップまで買ってしまった。もうなんか、より子が楽しそうなので抵抗するのも諦めてしまった俺。


「これにて遊園地は終了です。お嬢様……。」

「おーし!次は買い物して、家にいくよー!」

「へ?」

「?今日は1日デートだよ?」

「帰りまーす」

「……あの鉄仮面女にヒロぽんがアタシのおっぱいみたことバラしちゃおうかなー?」

「……」

「じゃ、いこっか♪」

「はい。お嬢様。」


俺は彼女に弱みを握られた。

お前のちっぱいなんか見てないもん!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る