第13話「死にそうなくらい嫌だけど」
ファミレスに来た3人。
「どれにしょっかなぁ~♪」
「元気だねぇ、より子さん。」
「ヒロぽん、疲れちゃったの?」
「そりゃ、ねぇ。」
「頑張ったもんねぇ。えらいぞー」
「近所の犬か!?」
「楽しそうね2人とも。」
「そうよーお邪魔虫さーん?」
「残念ながら、交渉成立しないといなくならないから」
「ぶー」
「あ、俺ドリアにしよー」
「あ、アタシも~♪」
「私は、鯖味噌和善」
「おばあちゃんみたい。」
「……」
頼むから!喧嘩はやめて!
この2人は決定的に相性が悪いらしい。
俺達はタッチパットで注文した。
最近はこの方法がファミレスでも多い。
「で、交渉ってなに?」
「私達の組織はファクターを持った少女達の問題解決にむけて、活動してるの。その中で最終的には全員で解決法を導き出そうと思ってるけど、まずは中立というか無党派というか、交渉の余地のある喜連川さんと同盟を組もうという提案。」
「私達の組織?」
「私達の組織名はGF。少女達の保護とサポートを目的としてる。」
「保護、ねぇ~……信用できないなー。交渉っていうからにはそれなりに何か益のある情報があるんでしょ?」
「少女達の居場所についてこちらが持っているは怒のファクターのケイトだけ。」
「それは流石に知ってる~」
「じゃあ。もう一つは……広山君について。」
「ヒロぽん?」
「俺は、君らのファクターの感情攻撃っていうのかな?あれを受けないらしい。だから君が怒っても俺は死なない。」
「……うそ……」
へらへらしていたより子から笑みが消え、信じられないという顔になった。
「ヒロぽん、本当に?」
「うん。俺は相生さんの笑顔を見たけど生きてる。」
「……確かにこの前の夜のあれ、近くにいたのに効いてなかったね。」
「あの不良の、か。」
「あれはアタシの前方にいる奴ら全員にむけて怒りを向けたんだけど、ヒロぽんも延長線上にいたはずだもんね。」
確かに俺はその方から仲裁に入った覚えがある。
「つまり、ヒロぽんを解剖すればその理由がわかるってこと?」
「ヤメテクダサイ」
「うそうそ♪じゃあアタシからも情報提供してあげる。アタシと鉄仮面、ほか2人のファクター持ち少女はお互いにその感情攻撃を受けないんだって。」
「!?」
「つまり、共倒れはできないってこと。例えばアタシが鉄仮面に怒りを向けても死なないし、鉄仮面がアタシに微笑みかけても死なない。そんなの死にそうなくらい嫌だけどね。」
「なるほど。ルールから外れてるのは俺だけじゃないんだな。ちょっと安心した。」
「一体何が原因なのか、呪いとでも言うつもりかよ、って感じ。」
「より子は楽のファクター持ちの女の子の情報はないの?」
「えー、無くはないけどどうしょっかな~」
「いちごサンデーおごるから。」
「あーんしてね?♪」
「……はい。」
我慢だ俺。妹ができたと思えば可愛いもんじゃないか。
「楽のファクターは喜びを感じたら人が死ぬ。つまり、相手に感謝したり、喜んだり、喜ばせたり、期待したり、そういう人間が人と関わって行くために必ず起こる感情が兵器になる。正直一番きついポジって聞いたかな。」
確かに、感謝した相手を殺してしまうなんて俺だったら精神が一日も持たない気がする。
「だから人間的な関係を絶ってるみたい。部屋にこもって眠ってるって聞いた。」
「『眠ってる』って?」
「詳しくはしらないけど多分言葉通りじゃないかなー?」
「そうか。これは大きい進展だ。ありがとう話してくれ。」
「うん♪」
こういうところは素直で可愛いんだが……。
「これは意外と他の同盟もうまくいくかもしれないわね。」
「あとは、アンガーって人がおっかなくないといいけど。」
「そうね。喜連川さんは私達と同盟って事でいいのかしら?」
「んー。まだだね。土曜日のヒロぽん次第かな?♪」
「俺かよ……」
「頼んだわよ。広山君。」
「はい……」
「楽しもうね♪」
「もう、どうにでもなってくれ……。」
こうして三本勝負には敗れたものの、やけに年下の少女に好かれてしまった俺だった。
帰り道
俺と相生さんはより子と別れて駅の方へ向かう。
「……」
「……」
謎の沈黙。
「今日のこと、博士に報告した方がいいのかしら。」
「ああ。俺から連絡しておくよ。相談もあるし。」
こう言ったが俺はいったん保留にすることにしている。土曜日次第だ。
「そう?じゃあお願いします。」
「……」
「……私、なんで喜連川さんに嫌われてるのかしら。」
「まあ、性格が合わない人っていうのはいるからさ。仕方ないよ。」
「そう、ね。でも私は嫌いじゃないって、土曜日に伝えておいてもらえないかしら?」
「うん。わかった。言っとく。」
「よろしく。じゃあ、ここで解散。土曜日頑張って交渉してね。」
「あ、ああ。がんばるよ……」
小さく手を振る相生さん。
「はぁー」
今日はやけに疲れた。
早く寝よう。
そう思って俺はまっすぐ家路についた。
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