第12話「このお兄さんとデートさせて♪」
「あ!昨日の兄ちゃんじゃん!ちーっす♪」
喜連川さんは気軽に話しかけてきた。
「や……あ……どうも。強いんだね」
「昨日といい、今日といい、もしかしてアタシのストーカー??」
「ち、違うよ!」
「うわ超必死~♪ウケる~♪」
「そんなことないって!それより喜連川さん、瞬蘭強すぎ。」
「まあね~♪これしか使わないし~。……てかさ」
喜連川さんは立ち上がって1人用の椅子に強引に座ってきた。ピタッとくっついて、そして何かを俺のわき腹に当てている。固い、何か。
「アタシ、名前教えたっけ?記憶にないんだけどもしかして本当にストーカー??ねぇ?」
サーッ
やってしまった。血の気が引いていく。
彼女が当てているのは、スタンガン!?
「ダメだぞ~不用意に名前いっちゃぁ。一応隠れて生きてるんだからさぁ。もしかして、関係者?」
「っ!」
まずい。一般ピーポーの俺にはこういう時に切れるカードなんてないんだぞ!?
「ビリッとイっちゃう?」
「くっ!」
彼女は本気だ。笑っているが、目が!目が座ってるよ!
「そこまでよ。」
「!?」
「??あんた誰?」
現れたのは相生さんだった。神!!
やはり相生さんは女神やったんや!!
「その、物騒なのしまって。喜連川さん」
「ふーん。やっぱり関係者なんだ。てことはあんたファクター持ち?」
「そう。あなたと交渉しに来たの。そこの広山くんと。」
「ふーん。お兄さん広山くんっていうんだ。……交渉してもいいけど、勝負しない?」
「え?」
「ここのゲーセンのマシンで三本勝負。あんた達が勝ったら交渉してあげる。アタシが勝ったら……」
「なに。」
「このお兄さんとデートさせて♪」
「なっ!」
「えぇ俺!?」
「だってー結構顔がタイプなんだもん。犬っぽくて♪あんた達は勝てばいいんだし、よくない?」
「広山くんがいいなら、私は構わない。」
やめて!俺のために喧嘩しない……で?あれ?違うの?
「俺?俺は別にいいけど……」
喜連川さんも結構可愛いのでデートなんて正直、喜んで!だが。
「やった♪」
「じゃあ決定ね。何で勝負するの?」
あ、相生さんその辺全然興味ない感じですか?
「あんた、ちょっとは動揺してなくれないと広山くんかわいそうだよ?ねえ?」
「うん。心の中では笑いながら大泣きしてる。」
「ははは!ウケる~♪」
「?話をそらさないで。何で勝負するの?」
「それぞれ得意なやつでやれば公平でしょ?」
「え?それだとすでに勝敗決まっちゃわない?」
こっちは2人。こちらが得意な物で勝てば2対1でこっちの勝ちだ。
「もう勝った気でいるんだ!強気だね~。でもアタシ、昼間はずっとこのゲーセンにいるからどのゲームも強いよ?」
「日中ずっと!?学校は?」
「やだなぁ~学生なんてやってないよ~。16歳フリーター彼氏なしでーす♪」
16歳フリーターって……っていうか年下か!確かにな!
「とりあえずアタシはこの格闘ゲーにするね。」
「私はシューティング。」
「え、じゃあリズムゲームで。」
「よし、じゃあ開始ね~。最初はシューティングにしよっか。お姉さん。」
「相生(あいおい)哀よ。喜連川より子さん?」
「変な名前~。」
第1回戦シューティングゲーム
互いのハイスコアで勝敗を決める。
バンバン
カチカチッ
バンバンバンバン
カチカチッ
いつものようにいい姿勢でシューティングする相生さん。日本一綺麗なフォームといえよう。
ゲームオールクリア!
「ふぅ。」
「やるねぇ。よし、アタシの番!」
バンバン
カチカチッ
バンバン
カチカチッ
喜連川さんもさすがに上手い。
「飴を舐めながらよくできるな……」
彼女はさっきとは別人のように集中している。
ゲームオールクリア!
結果は
10ポイント相生さんの方が上だった。
相生さんの勝利!
「良かった。」
「うー、負けたー」
「でも、強かったわ、あなた。最後で油断したのがよくなかったと思う。」
「……アタシあんた嫌い」
「はっ?」
「さ、さぁ!次の行こう!」
第2回戦リズムゲーム
ここで俺はやってしまった。
俺が得意なのは手でやるリズムゲーム。
ここにあるリズムゲームはダンスゲームしかなかったのだ!
「敵情視察が足りなかったか……」
「ん?ゲーム変える?」
「いや、男に二言はない。できらぁ!」
「お、いいね!男だねぇ!」
あまりやらないとはいえ、未経験ではない!
いざ勝負!うりゃぁぁぁぁあ!!!!
結果は
「あははははは!面白かった!広山くんの転んだ姿がひっくり返った虫みたいで!!あははははは!」
惨敗。しかも笑い物だ。
励ましにくる相生さん。
「次、頑張って。」
「はい、コーチ。」
「コーチ?……その話教えて?」
「許して……」
こうして第3戦目はさっきボコられた格闘ゲーム。勝ちの目は薄い。
「ねーねーヒロぽん?」
「ヒロぽん!?」
「名前ヒロなんでしょ?ヒロぽんってよぶから!」
「あーもうなんでもいいや。で、何?より子?」
「あっ……」
名前で呼ばれたことで急に赤くなるより子。いやいや、そんなキャラじゃございませんよね!?
「あ、あの使うキャラ瞬蘭意外にしてあげよっか?」
さっきからなんなんだこの手加減してあげるムーヴは。
「平気だよ。俺も本気でいく。」
「へぇ……。男らしいじゃん。ならまたボコにしてあげる♪」
勝負の第3戦が始まる!
カチカチカチカチ
カチカチカチカチ
白熱のボタンとレバー操作が行われている。本当に令和の時代なのここは?
「うぉおおおおお!」
「うりゃうりゃうりゃうりゃ!!!あははははは!」
筐体が結構古いのでボタンのもどりが悪い!
「くそっ!ボタンが!?」
「うりうりうりうり!」
「あああああああ!」
YOU LOSE……
「ぬおおおおお……」
「やったぁー♪」
勝負はより子の勝ちだった。
「これ……!ボタンがぁぁぁ……」
「そっち筐体はボタンがへたってるんだよ~。これでアタシの勝ちね~♪」
「ごめん。相生さん。負けちゃった」
「仕方ないわ。全力だったのは感じたから。お疲れ様。」
「んふふ~♪じゃあ今週の土曜日に遊園地ね♪」
「はい。」
「ちょっと何でテンション低いの!そこはアゲてこーよー♪」
「ちょっと燃え尽きた……から……」
「んーそだねー。ファミレス行こっか。さっきの交渉の話もするでしょ?」
「うん……うん?」
「え?」
「私達負けたんだけど?」
「アタシが勝った時のご褒美は、ヒロぽんとデートする事で、交渉しないとは言ってないよ?」
「えぇー……」
「……面倒な子。」
「うっさい鉄仮面女。」
「……」
壮絶な睨み合い。
第4回戦が始まりかねないので俺はファミレスへ移動することをすぐに提案した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます