第11話「結構話せる人だったから」
実は俺はちゃっかり
ー屋上ー
「喜連川さんに、会った!?」
「そう。たまたま。本当に偶然。」
「何かわかった?」
俺は力についての検証結果は話さなかった。
確証がないし、何よりそれを相生さんが知らないのが気がかりだったからだ。はっきり言って俺は、彼女の属する組織・GFを疑っている。
まずは味方から疑う。博士のことは信じたいが慎重に。慎重に。
「結構話せる人だったから、交渉の余地はあると思う。」
「そうなんだ。じゃあ行動範囲は駅の向こう側ってことね。」
「そうだね。俺のバイト先から話の中のコンビニくらいまで探してみようと思う。」
「今日はバイトは?」
「ないよ?」
「じゃあ一緒に探しましょう。放課後駅前で待ってて。私は少し遅れていくけど。」
「了解!」
ー放課後ー
「ヒロ、聞いたぜ?最近相生さんと昼飯屋上で食ってんだってな?」
「まあ、たまにだよ。」
「ずいぶんお近づきになっちゃってさ~」
「うらやましいか?」
「ちょっとな!ま、頑張れよ~」
「おう!じゃなー。」
英太と別れ、いざ駅前へ。
向かいながら喜連川さんが行きそうな所をイメージして書き出す。コンビニ、レンタルショップときたら、本屋、カラオケ、CD屋、あとは、ゲーセンか。
「これを手分けして、ゲーセンで落ち合うことにしようかな。」
ー駅前ー
「あっ、おーい。」
相生さんがキョロキョロしているがこっちに気づいて小さく手を振って走ってくる。かわいい。
「ごめんなさい。遅くなって。」
「大丈夫。あ、これ。今日の作戦内容」
「……なるほど。手分けして探して最後はゲームセンターを2人で探すってことね?」
「そうそう。これで見つからなかったら俺のバイト先から例の高架橋下まで探してみよう」
「わかったわ。行きましょう。」
俺の担当はバイト先とカラオケ。相生さんは本屋とCD屋だ。出勤日でもないのにバイト先に行くのは、何か新鮮な感じだ。
店長は休憩所にいた。
「おお、広山くん。あれ?今日は休みだよね?」
「はい。ちょっと人探しをしてて。この子今日みてないっすか?」
喜連川さんの写真を見せる。
「ああ!この子よく来るよね。でも今日は見てないし、来る時間帯も結構遅いと思うよー。」
「そうですか。」
「こういう子が好みなんだ?」
「(なぜそうなるのか)いや、友達で。忘れ物を渡したくて」
「ふーん。とりあえず今日は来てないから、もし来たら連絡しようか?」
「はい!お願いします!」
「了解ー」
店長は緩くてやりやすいがお願いしたことをよく忘れるので期待しないでおこう。
次に俺はカラオケにいった。
さすがに部屋ごとを回るわけにはいかないのでカウンターで写真を見せていないことを確認した。
「となると、早速ゲーセンか。こっちがわのゲーセンあんまり行かないからちょっと遊んでいこうかな。」
俺はゲーセンに向かう。
俺のよくいくゲーセンのライバル店だ。
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいましたよーっと……」
こっちのゲーセンはフロアごとに内容が異なる結構大きい店だ。各アーケードの台数も多い。
「リズムゲーは満席。カードも、シューティングは空いてるな。あ、この格闘ゲーまだあるんだ。」
昔ながらの対戦型の格闘ゲーがある。今はもう3D技術が発達してるこのジャンルも未だに昔のシリーズに根強い人気がある。
「相生さんは、『もうちょっとかかる』か。待ってる間少し遊んでよう。」
俺は久しぶりに格闘ゲーをやる。選ぶキャラクターは特に決めてないが全部ある程度操作できる。それが俺の特技。広く浅く。基本に苦手分野がない。しかし、代わりに何かを極めるひとには勝てない。
YOU WIN!!
「よし勝った。次。」
その後は勝ったり負けたりを繰り返して、人が少ないのもあってある特定の人としか対戦しなくなってきた。
「また、この人か。この人の瞬蘭強すぎる……」
スタートからコンボを叩き込まれ瞬殺される。瞬蘭を極めた猛者だ!
「~♪」
上機嫌な鼻歌が聞こえる。
「(え?もしかしてこの時代にオンラインじゃなく、向かい合ってる筐体の人と戦ってる!?)」
「くそっ!」
俺は一番得意なガイを使う。
ハメ技の飛道具があるのだ。
「これで、なにっ!?」
そんな手はもろともせず瞬蘭は攻め込みガイを瞬殺。チーターか!?
ちょっと悔しかったので去り際にどんな奴か見てやろうと思ったら
「あ」
「あ!昨日の兄ちゃんじゃん!ちーっす♪」
そこにいたのは
金髪ピアスV系小悪魔美少女
喜連川さんだった。
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