第10話「もしかして……エッチなこと?」

金髪のショートで、ダウナー系、ピアス大量……

マスクをしているが

昼に写真で見た少女にそっくりだった。

「ん?どうしたの?」

「い、いえ。あ、こちらです。」

落ち着け俺。マスクをしてるからまだわからんぞ。

「お、あった♪あざーっす♪」

「ご、ごゆっくり~……」

おれはバイトを切り上げた。

家にかえ……る前に、今の女の子が喜連川さんなのかを確かめないと……。

彼女はレジを終え店を出る。そのタイミングで俺も裏から店を出た。

「(まるでストーカーじゃん俺……)」

お巡りさんに合わないように、なるべく帰路が同じような感じで歩く。

彼女は途中コンビニによってお菓子屋やらフライヤーやらを買い込んで出てきた。

「(今夜はあのゾンビ映画をおかしをむさぼりながら見る気か!?うらやましい……)」

そんなことを考えていたら喜連川(?)さんはコンビニから住宅地に歩いて行った。

そのあとを追う俺。何とか追いついたが、彼女は高架橋下の道で不良たちに囲まれていた。

「まずいな。色々。」

特に不良たちが危ない!

「お、君かわいいね。こんな時間に何してんの?」

「なんですか~ナンパ?何してるって家にかえるに決まってんじゃん。」

「家にかえる前にさ俺たちとちょっと楽しいことしようよ?」

「え~いくら~?」

すぐに値段の交渉ってかなりヤリ手だな……。

「え?乗り気?とりあえず3でどう?」

「却下~さよなら~。」

「じゃじゃあ4でどう?」

「無理~そもそもおじさんに興味ないし。ははっ♪必死でうける~」

「このガキ、あめなんか舐めてんじゃねえ!」

不良は喜連川さん(仮)のくわえるアメをうばって投げ捨てる。

イカン!逃げろ不良!

「……チッ。」


『なにすんだテメェ!!』」



あっ


「なん…うっ…」

バタッ

バタッ

バタッ

「(不良A~Cー!!)」


怒号で不良が次々と倒れる。

やっちまった。…しかも3人。3人!?


あの子は間違いない。


喜連川より子。


【喜】のファクターを持つ


【怒りで人を殺せる少女】だ。



「な、おいどうしたんだよ……」

生き残った不良Dはうろたえて倒れた不良A~Cをゆする。

イカン!奴だけは逃がさねば!不良の儚い命をこれ以上散らすわけには!

俺は飛び出した。

「おい。おっさんもこうなりた」

「ちょっとすいませーん!」

スウッ

「!?な、なんだ!?」

俺は二人の間に入って不良Dのほうを向いた。

「(あんた、今すぐ逃げろ!こうなりたくないだろ!)」

「な、なんだよお前……」

「(い・い・か・ら・は・や・く!)」

「う、うわああああああ~!」

不良Dは逃げ出した。俺の血眼が通じたようだ。

ドンドン

「おーい」

「いてっ。あっすいません。それでは。」

「待てよ~。」

グイっと裾をつかまれた。

「アンタ一体……あれ?さっきのレンタル屋の兄ちゃんじゃん。」

「あ、はは。こんにちは~」

俺にはファクターの力が効かないとはいえ怖い。

「もう夜だぞ。なんでアンタがここにいるんだよ」

「えーっと、コンビニよって出てきたら不良集団が君の跡を追っていくのが見えて……」

「ふーん。それで?」

「いや~面倒ごとに巻き込まれていたらお巡りさん呼ぼうかなーって」

「いや自分で助けに来たじゃん。」

「あ」

やっちまった!殺され、いや殺されないけど!怖い!

「ふ~ん。まあいいや。理由は何にせよ助けにきてくれたんだ。へぇ~?」

喜連川さんはなんだか距離感が近い!やたら身体を触ってくる!

これは知っている。これが小悪魔系……!!非モテを勘違いさせる悪魔!

「ありがとう~お兄さん♪お礼に何してほしい?もしかして……エッチなこと?」

「なっ!?」

「あはは!そういうの慣れてないんだ?ウケる~♪」

「う、うるさいわ!」

「ごめんて~。じゃ私帰るね。この人たちお願いね。救急車呼べば平気だよーん♪」

「えっ?」

倒れる不良たちの様子を確認する。

「!?」

脈がある……!?

「また会えたらいいね。お兄さ~ん♪バイバーイ」

無邪気に手を振る喜連川さんだった。


・・・・

ピーポーピーポーピーポーピーポー……


ほどなくして救急車が不良たちを連れて行った。


その間に頭を整理した。

あの子は喜連川さんで間違いない。

あの子は小悪魔で可愛いけど、非モテを弄ぶ。

エッチなことって……一体……。

……いや、まじめな収穫もある。

まずこの力には有効範囲が複数人の場合もある。

さらに力にはON/OFFの他にがある。

つまり


そしてこれが一番の収穫。


喜連川さんは結構愛嬌のある人だった。

しかも、手加減する慈悲がある。

つまり。

交渉成立する可能性があるってことだ。

これは大きな希望だった。




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