第6話「微笑みかけたのは君なんだよ」

「彼女の笑顔は、人を殺すことができるんだよ。」

 早乙女博士のいうことはよくわからなかった。

 俺は、わかりたくなかったのかもしれない。


「彼女の笑顔は兵器なんだ。微笑みかけた相手を殺すことができる、残酷な兵器。」

「ちょ、ちょっと待ってください」

「まあ、そうだよね。コーヒーどうぞ?」

「はい。」

 ズズズ

 あ、美味しい。


「つまり、でも、あれ?」

「微笑みかけたのはなんだよ。でも君は死ななかった。それで彼女は君を私に紹介したいって昨日、電話で伝えたんだ。」

 そう。昨日の彼女のはにかみは脳裏に焼きついている。あれは、国宝だ。守りたい、その笑顔だ。

「でも、俺普通の高校生ですよ?」

「そうだね。見ててわかる。普通の、特筆することのない高校生だ。」

「うっ……」

 人に言われると流石に何か言い返したくなるが、本当の事なので何もいえない俺。

「でも、君は彼女の笑顔で死ななかった。でも、それは別の誰かに肩代わりさせた。果たしてそれがなんなのか、調べたいんだよ。」

「まさか俺、解剖される……?」

「はっはっは!しないよ。」

「私達の作戦に協力してほしいの。」

「私達?」

「私達の組織。」

「あー本当にそういうのあるんだ。」

 これでは本当に最近読んだライトノベルだ。それが現実に存在しているらしい。正気か?

「信じられない?」

「うん……流石に。」

「確かに驚くかもしれない。でも、今この時間にも戦争で人が死んで、誰かが生まれてる。誰かが事故にあって、誰かが居眠り運転をしている。嘘のような出来事も世界規模で見ればいつも起きてるのよ。」

「急に規模が大きくなったね……」

「うん。これは世界規模の作戦なの。」

「君が協力してくれるなら、この話の続きをしよう。」

 正直不安しかない。壮大なドッキリかとカメラを探したが、この部屋はどこにカメラがあっても自然すぎる。話がぶっ飛びすぎて頭もぶっ飛びそう。

「これは私のお願いなんだけど」

「?」

「広山くんの体質が何なのかがわかれば解決の糸口になると思うの。協力してください。お願い、します。」

 深々と頭を下げる相生さん。

 迷ってたけど俺はある一つの条件を確認した。

「一つ確認したいんですが」

「なんだい?」

「これか解決したら、相生さんは?」

「!?」

「……そうだね。感情を抑えて生きることはしなくてすむだろうね。」

「じゃあやります!相生さんの笑顔また、みたいから。」

「ふ……ふふ。ふふふ。」

「?なんですか博士?」

「い、いや。あまりにも……いや。ごめん。」

「ありがとう。広山くん。」

 相生さんは少し嬉しそうだった。


「じゃあ話をしていこうか。これからは質問もどんどん受け付けるからね。」


 ガラガラガラとスクリーンを下ろす博士。


「では、まず我々の組織の事から。そして、作戦の内容に移っていこう。」

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