ようやく話し合いです!
結局、その日は男どもが使い物にならなかったので翌日になりました。
「昨日は良く眠れた?」
「ええ………まだ全身が痛いですが良く眠れました」
ベガは疲れより、これからの事を考えて内心でため息を付いた。
「では、シオンと一緒に何日も過ごした事について─」
「「それはもういいです!!!」」
リゲルの言葉を断ち切り、息の合った二人の王子は本題へと入った。
「それで、オリオン辺境伯殿は今後どうする予定なのですか?」
ベガはリゲルに尋ねた。
「うむ、王家が使い物にならなく、そして我が大切な娘シオンを侮辱した罪は万死に値する!故に、王家をぶっ潰そうと思っていたのだが………」
何か歯切れの悪いリゲルを不審がりながらも、言葉を待った。
「正直、面倒くさいんだよ」
ポカーン!
アルデバランとベガは空いた口が塞がらなかった。リゲルの言葉が理解できなかった。
「そうなのよねー?王家を滅ぼすのは簡単なのだけど、その後の統治が面倒くさいのよ。だから、かつての祖先はこの辺境の地で領地を構えたのよね」
「そうそう!これは遺伝だよね♪」
あはははは!
何なんだろう?この家族は!?
「もし、オリオン家が王家に代わると言うのならアルタイル公国は協力を惜しみませんよ!」
「同じくレグルス帝国も協力体制は整えている」
王子の申し出にシオンの母スピカは微笑みながら話した。
「申し出は嬉しいけど、協力はいらないわね」
「どうしてですか!?」
スピカは困ったような顔で続けた。
「協力してもらう事がないもの。もし、オリオン家が王家を潰すと決めたとして、この家の戦力だけで十分に陥とせるもの。それなのに協力して国の利益を取られるのは割が合わないわ」
ぐっ!?
スピカの言葉にアルデバランは言葉に詰まった。
「それに、あなた達も見たでしょう?長年、魔物と戦いながら技術力を高めたオリオンの首都アルテミスはこの国の首都より、技術力が高く魔物の素材や魔石の売買で資金も潤沢にあるわ。どうしてもレベルの低い国を手に入れるメリットがないのよ」
今度はベガが反論した。
「しかし、シオン令嬢は学園で大勢の生徒の前で大々的に反旗をひるがえす事を言ってしまっています!何も行動しなければ、オリオン家の家名に傷を付けることになるのでは?」
「ふははははっ!その程度で傷つく家名ではないわ!しかし、何も行動をしない訳ではないぞ?」
リゲルの言葉にベガは首を傾げる。
「すでに何か仕掛けているのですか?」
リゲルの顔を見ながらその真意を探る。
しかし、横からシリウスが言葉を挟んできた。
「うちは何もしないよ?ただ、周りが勝手に動いてくれるだけさっ」
どういう事だ?と思っていると、ちょうど誰かがやってきたと執事がやってきた。
「ほらな?良いタイミングで来たようだぞ?」
執事に連れられ、入ってきたのはこの国の宰相であった。
「この度は急な御訪問にて申し訳ございません」
入って来るなり、深く頭を下げる宰相に驚きを隠せない王子達だった。
「面を上げくれ宰相殿。貴殿にはなんの落ち度もないだろう。それより、王家の意向を教えてくれないか?」
すでに宰相がくるとわかっていたリゲルに驚きつつ言葉を待った。
「はい。国王陛下の御言葉を申し上げます。ここに証拠の書面も頂いておりますが、私の口から報告させて頂きます。ただ─」
チラッと宰相はこの場にいるオリオン家以外の者、王子達に視線を向けた。
「ああ、構わんよ。この二人は無害だから続けてくれ」
!?
自分らを歯牙にも掛けないと言うことかと、苦虫を噛み潰したような顔になる二人を置いといて宰相は国王の言葉を話した。
「自分の首1つで他の妻や子供達を助けて欲しいと…………例外的に、第一王子のライクは好きにしてくれとの事です」
!?
「バカなっ!?」
アルデバランが叫んだ。
「いや、これが普通だろう?まったく、肝を据えるのが遅いと言うのだ!これだけの覚悟を普段から持っておれば、他国に舐められることも、子供の教育に失敗する事もなかっただろうに」
「国王は我が家との戦力差をしっかりと理解している。戦っても勝てないってね。それは家臣達も理解しているから、今後はオリオン家に忠誠を誓うとか言ってくる奴らが増えるだろうね。だから戦わなくても、どんどんこちら寄りの貴族が増えるから、何もしなくても勝てるんだよ」
アルデバランとベガは、他国の自分らより自国の貴族達のオリオン家の立ち位置をようやく理解したのだった。
本当に唯一知らなかったのはバカ王子のみであったのだと。
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