6.プリナイ(2)
前世の記憶と、乙女ゲーの世界と一致する今世の情報を信じるのならば、私はプリナイ屈指の悪役屑キャラで当て馬のボスキャラに殺されるらしい。
しかもグサッと。
しかも婚約者に。なんの恨みがあるんですか?刺殺はもうごめんです。何この壮絶な人生!!
・・・モブだけど?
モブだけど壮絶な人生。
──話を戻そう。
前世で読んでいる限り、ツィーナはひたすらごめんなさいと呟いていた。
ウェイドに抱きついて彼の暴走を止めようとしていた。
多分だが、ウェイドが気づいてなかっただけで、ツィーナはウェイドの事を愛している・・・とまではいかなくとも好意は抱いていたのではないか?そう思う。
守りたかったのではないか。
学園でのストーリーで、度々ウェイドの婚約者としてヒロインの前に立っていた。
『・・・お願いします。これ以上・・・ウェイド様を苦しめないでください・・・っ!』
ヒロインにもう関わるなと叫ぶように言っていた。ウェイドの過去を知る彼女としては、きっとこれ以上ヒロインに傷つけられるウェイドを見ていられなかったのだ。
そんな叫びもヒロインや攻略対象には伝わらず、意味のわからない女だと距離を置かれていた。
そのあとに、ウェイドがツィーナを殴って怒鳴っていたシーンもあったのを思い出す。
『これ以上失態を重ねるな!!お前の変な噂のせいで俺の評判も下がるだろう!二度と××に近づくな!』
『ぁ・・・ですが、ですがあの女はアナタをただ傷つけているだけです!それを自覚もしない!理解しようともしない・・・!ただ男とべたべたして・・・』
言い終わる前にウェイドが更に彼女の頬を強く叩いた。
軽蔑した目で見下して言う。
『お前の嫉妬はいい加減見苦しい。』
『しっ・・・と?』
『××がただ羨ましいだけだろう。成り上がりだから野心があるのか?それは構わないが態度にだけは出すな。卑しい。』
『どっ、どういうことですか!?私はただ──』
『フン。嫉妬の他にないだろう?アイツがあのような男に愛されているのは価値があるからだ。お前はもっといい男と婚約をしたかったようだがな・・・価値のないお前は俺で十分だろう。』
婚約者を軽蔑しながらも、自嘲したような表情でそう言った。
『いやっ・・・違う、違います・・・!』
前世では、ここは婚約者の嫉妬だと私も思い込んでいた。
ヒロインの負わされた任務のことも知らない一般人だからそう感じ、嫉妬したのだろうと。
だけど今ならわかる。
この続きはきっと、『私は貴方を守りたいのだ』・・・だろう。
彼ら彼女に対する嫉妬ではない。
ただただ、ウェイドが傷ついて人知れず涙を流すのを止めたかったのだ。
まあ、今の事情を知ってる私がそんなヒロインと攻略対象を見たら
「なに任務中に恋愛ごとにばっかうつつを抜かしているんじゃい」ってシラケためで見る自信があるけれど。(コレは非リアの嫉妬かもだが)
手作りブレスレット作る時間があるなら捜査をしようよとも思うけれど・・・(コレも非リアの嫉妬かもだが)
だけどウェイドは、過去に彼女の好意を跳ね除け、階段から落としてしまったのだ。
ツィーナのそんな思いをウェイドが気づくはずもない。
むしろ嫌われていると思っているくらいだ。
この記憶と情報(?)を信じるのであれば、ウェイドは私にめちゃくちゃ嫌われていると思われているだろう。
これから先も。
・・・ま、まあ、実際に罵倒され突き落とされた私は本編のツィーナ程の好感度もないと思うけど・・・。
むしろプリナイの中のツィーナは暴力だって一番振るわれていたはずなのに、よくウェイドを嫌わずにいられたな、なんてのんびり思う。
ちなみに話は飛びますが、明後日にカニンガム家へと私が向かうことになっている。
昨日は、婚約の見直しうんたらかんたらなんてことを言ったけれども、婚約話を白紙にすることは実際無理な話だ。
つまりはウェイドと私との婚約は続行。
本音を言えば、ゲームのキャラとしては結構好きだったけれど今世で婚約者になるのは御免被りたかった・・・。
だって死ぬもん。モブ死に無駄死によ。
それが嫌ならまずはウェイドの性格をどうにかする+ボスキャラに覚醒させず戦闘パートに持ち込まないようにしたい。
「となると、ウェイドの評判を本編スタートまでになんとかして、ヒロインとくっつけるのが一番なんだよね・・・」
だってウェイドの異形に遂げた姿のきっかけは、ヒロインへの歪んだ愛だったから。
それを解決すれば芋ずる式にほかの問題も解決して全て終わる!
そうして私は、他の伯爵子息とくっつけばいい。
こうなったら色仕掛けと母性(笑)でなんとかするしかない!
幸い我が母は、ボインキュッボイン(音がくどい)のボイン体型だから私も将来は期待できるだろう。
「・・・多分、ウェイドがヒロインに恋に落ちるのは止められないと思うし・・・これが最良の道だよね。」
そう、これで万事解決なのだ。
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