*第五章ー9❇︎夢

 一緒に歩けるかも知れなかった。でも、霧灯は、野々花や結翔と違って、夜空より、青空のほうがきっと似合う。


「その前に、デートしようか、ののちゃん、土曜日迎えに行くからおしゃれして待ってて」

「えっ……明日?」


「早いほうがいい。そうだな、三時に駅前で待ってる。そうしたら、椎名と付き合うよ」


 女子の都合など、どこ吹く風。懲りない羊なのだった。


「椎名さんと」

「きみは過去にいたいみたいだから。もう、きみの中では結翔は神か天使になってるね。そんなものに、僕は勝てない。きみが望む通り、椎名の手を取ってみるつもりだ」


 今まで一番、男らしい口調だった。


「きみが教えたんだ。愛している人とのほうが幸せになれる……椎名の告白は7度目のお断りだが、考えてみるよ」


 望んでいたはずだ。

 でも、じゃあ、夢に出て来るのはなんでだろう?


「もう、暴走はしないからさ。きみも、迂闊に触れるなよ。目的は果たした。きみは結翔を受け入れたなら、僕は何も言わないし、言えない」


「でも、結翔さんは」


 さすがに言えない。霧灯は、「だからだよ」と微笑み、会話はそこで終わった。


 どうして夢に出てくるの?

 どうして会いたい結翔ではなく......


 取り返せないだろう。

 こんぺいとうは砕けて、もうない。

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