第2話 地球の哲学

「ねえ、サタン。また地球のお話を聞かせてよ」


「そうだなあ……」


 あれから数年が経ち、少年へと成長したアダムは、彼を育て、守ってくれている男、サタン――かつてアダムをリリスから取り上げた男――は、黒いフードを脱ぐとほほ笑んだ。


「地球にはニーチェという哲学者がいてな。彼がおもしろいんだ。彼は言っていた「神は死んだ!」と」


「神様は死んじゃったの?」


「さあな。神様なんて最初からいなかったのかもしれない。でも彼はな、神様がいない世界でも自分が生まれたことを肯定していた」


「ふーん、つまりどういうこと?」


「生まれてきて、うれしい、ということかな」


「そっか。ぼくも嬉しいよ。だってサタンに会えたもの」


「そうか」


 サタンはまた微笑むと、アダムの身体を抱きしめた。それに合わせるように、アダムもサタンの背中に腕を回し、力を入れた。サタンのぬくもりが、アダムに笑顔をくれた。


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