第32節 -ごちそうを求めて-
支部の指令室で今しがた市内で起きた出来事について警察から報告を受けたリアムは心拍数が急上昇するのを感じた。
以前から多くの人々が危惧していた事態が起きた上に、その事件に機構の隊員が関わることになるとは。
危惧していた出来事とはアヤメ・テンドウがマルティムから命を狙われるのではないかということだ。
奇跡を繰り返す中で、マルティムに明確な敵対意志を表明した彼女の命が遅かれ早かれ狙われることなど誰にだって容易に想像がついたことだ。
だからこそ警察や政府の人間が四六時中護衛にあたっていたという現実があった。しかし、彼女は市内で行われているイベントの最中に自らの意思で警察と政府の護衛を撒いたという。
そのタイミングを狙っていたかのように彼らは銃撃によって彼女を殺そうとしたが、そこに偶然居合わせた機構の隊員によって彼女は難を逃れたということだ。
マルティムの差し金でアヤメを殺そうとした人物から身を挺して彼女の命を守った隊員、ヘンネフェルト一等隊員は警察の救護室で治療を受けているらしい。
命に別状はなく、事件の時に受けた衝撃で気を失っていたようだが現在は回復しており、この後聴取が実施される予定になっていると報告があった。
アヤメの無事はもとより、フロリアンが無事という報告に心から安堵したリアムは座っていた椅子の背もたれに全体重を預けるようにもたれかかり天を仰ぐ。
彼がその場に居合わせなければアヤメはマルティムの計画通りに殺害されていたかもしれない。いくら奇跡の力を持つ少女とはいっても幼い子供だ。
どうしてフロリアンがその場にいたのかについては本人に確認するまで分からないが、とにかく彼が彼女を守ってくれたことと、彼自身が無事でいてくれたことが何よりだった。
リアムは安堵の溜め息を漏らしながら椅子から立ち上がると、すぐにヘルメスでジョシュアを始めとしたマークתの全員とハワードに連絡をとった。
* * *
市内のイベント会場から自宅へと連れ戻されたアヤメは照明を消した自室で膝を抱えながら座り込み彼のことを考えていた。
フロリアン・ヘンネフェルト。機構に所属する隊員であり、アンジェリカからの情報によって自身が敬愛する人が懇意にしていると分かった人物でもある。
裏通りで銃撃を受ける前、なぜ彼が裏通りに居たのかは分からない。しかし、あの場に彼がいてくれなければ自分はあの砕け散った壁面などと同じように頭を吹き飛ばされて死んでいたに違いない。
己の力を過信していた罰が下ったのだろうか。
人の心の声を聞き、その色を見て本当の感情を読み取ることは容易い。
雷の力を自在に操り、危害を加えようとする者を攻撃することだって出来る。
この2つの力が自身にある限り、どんな相手だろうと事前に危険を察知して対処できると思っていた。
いや、厳密には半分はアイリスである自分の力ではない。雷神の加護を受けたアヤメの力だ。
「私のせいで彼を傷付けてしまったわ。」アイリスは小声で呟いた。その声に反応して自身の中のアヤメがすぐに返事をする。
『貴女だけのせいではない。裏通りを抜けて逃げようと言ったのは私も同じなんだから。私達2人の責任よ。』
「浅墓だった。何もかも完璧に出来ると信じて疑わなかった。安っぽい万能感で慢心していたのね。あの時、彼がいてくれなかったら私はアヤメのことも殺してしまっていたわ。」消え入りそうな声でアイリスは言う。
『マルティムの人たちに命を狙われる可能性なら随分前に話し合ったことじゃない。私は貴女に体を渡す時に、何が起きても後悔しないと決めているの。そこには自分自身の命が絶たれる可能性だって含まれている。そう自分を責めないで、アイリス。』
アイリスは唇を震わせたまま何も言わなかった。
現在は自宅の周辺も含めて警察と政府の人間によって厳重な警戒態勢が敷かれている。おそらく今後は今までのように気軽に外に出るということは一切できなくなるだろう。
学校の授業に参加することも叶わないかもしれない。
愚かな考えで人を傷つけてしまった自分の浅墓さを悔やみながらアイリスは自身の膝に顔を沈めて声を殺しながら涙を流す。
判断の稚拙さでアヤメはもちろん、お姉様にとってかけがえのない人物となっている彼のことまで危険に晒したことを悔やみながら。
* * *
警察内部の取調室の中、フロリアンは椅子にじっと座りながら聴取が始まる時を待っていた。
事件で気を失う直前、最後に見た景色は心配そうに自分を見つめるアヤメの姿であったことは記憶している。
あれから彼女は無事に保護されたのだろうか。そこから目覚めるまでの記憶がない自分としては何よりも心配なことである。
自分が次に目覚めた時、そこは警察の救護室だった。地面に身を投げ出した際の擦り傷以外に目立った外傷は特になく、衝撃で意識を失っていたらしい。手当をしてくれた看護師の人によると、地面に衝突した際の打ち所が悪かったのではないかということだった。
だが、それよりも差し迫って一番の問題はこれから行われる聴取が何を目的にしたものなのかについてだ。そのことについて先程からずっと思案している。
事件が起きる直前のことから話せば良いのだろうか。そもそも何を質問されるのだろうか。
あらゆる可能性を考えながらただただ命じられた場所で待ち続ける。
フロリアンが考え事をしながら静かに待機していると部屋に1人の警察官が現れた。
短めの髪を整髪料でしっかりとまとめた眼光の鋭い男性だ。その眼差しは数々な事件を見てきた警察官特有のものなのだろうか。周囲全てを疑うような目つきにも見えるが、どちらかというと自分の見たものだけを信じるというような強い信念が感じられるかのようでもある。
その人物は特に挨拶をするでもなく、すぐに椅子へと腰を下ろして言った。
「フロリアン・ヘンネフェルト君。意識が回復して何よりだ。これから君にいくつかの質問をさせてもらう。話す内容は隣の部屋にいる書記官と録画によって全て記録されるから正直に話したまえ。まず最初に君があの場所にいた理由は?」
必要なことを必要なだけ話す。徹底された効率重視の会話にフロリアンは面食らった。
目の前の人物が話す雰囲気的に自分は事件に関与する容疑者の1人として認識されているようだ。
自分も余計なことを話す必要は無いだろう。必要なことを必要なだけ話すことに専念した方が良さそうだ。
「イベントに訪れていた時、気になる人物を見つけて裏通りへ繋がる路地へ入りました。」
「どんな人物かね?」
「機構の制服をまとった人物です。桃色の髪色をした少女でした。」
「知り合いかね?」
「いえ、機構で見かけたことはありません。」
「どうして気になったのか教えてくれないか。」警官は矢継ぎ早に気になったことだけを質問責めにしてくる。フロリアンは気持ちを落ち着けながら同じように回答する。
「見たこともない人物が機構の制服をまとって、居るはずの無い場所にいたからです。イベント会場に制服を着たまま単身で歩き回ることはないでしょうから。」
「それで?その人物とは裏通りで接触出来たのかね?」
「いえ、見失いました。ただ、彼女を見失った直後にアヤメちゃんと会いました。」
「なるほど。テンドウさんを連れ回した理由は?」
その質問にフロリアンは僅かに悪意を感じた。まるで自分が彼女をたぶらかして危険な場所に導いたとでも言いたげな質問だ。
しかし、ここで語気を荒げて心象を悪くしてしまえば必要の無い論争を生み出しかねない。一度深く息を吸ってから答える。
「大通りに戻る為に彼女に案内を頼みました。自分には土地勘がありませんから。」
「嘘だな。最初にも言ったが正直に話したまえ。これはお願いではない。 “警告” だよ。」
目の前の男は顔色や表情一つ変えることなく淡々と言う。オーシャンブルーの瞳が射貫くようにフロリアンを見据えている。
「彼女は警察と政府の護衛を撒く為に裏通りから逃げていると言いました。僕もついてきてと言われて同行しました。」
「君はその時、彼女の身柄を警察に預け保護しようとは思わなかったのかね?」
「彼女がそれを拒んでいました。」
「その結果、彼女は大変な危険に巻き込まれた。君は彼女の行く先に危険が待ち受けていることを知っていたのではないのか?」
警官のその言葉にフロリアンは心から湧き上がる怒りを抑えきれなかった。
「お言葉ですが、僕には先程申し上げた通りこの国での土地勘というものがありません。訪れてからまだ1週間と数日です。そんな僕が長くこの地で暮らしてきた彼女を誘導するほどの道案内を、入り組んだ裏通りで出来るとでもお思いですか?」
「絶対に出来ないということも無いだろう?特に最先端の科学技術を扱う君達機構の人間にとってはさほど難しいことでもないと思うのだがね。」
「我々機構が彼女に危害を加えようとしているとでもおっしゃるおつもりですか?」
「可能性の話をしているまでだ。別に決めつけているわけではない。事件の解決に関して疑わしい部分はひとつずつ “確認” していかなければならないだろう。」
語気はまだ互いに穏やかではあるが、明らかな険悪な雰囲気が漂い始めている。
可能性の話をしていると言ったが、それが事実であると考えた上での “確認” をしているのではないかと思えるほど傲慢な質問の仕方だ。
機構がこんな事件に関与するはずがない。ましてや動機が無い。そんなことくらいは彼ら警察が一番よく分かっているはずではないのか。
フロリアンは湧き上がってくる怒りを必死に抑えるように努めた。
目の前の警官は今の状況に何を思う様子でもなく淡々と話を進める。
「では次の質問だ。君はなぜスタンガンを所持していたのかね?」
「この地で先日起きた警官暴行事件の報せを受けて、機構の隊員も自衛の手段を持つことが上層部の判断により許可されました。」
「我々は許可した覚えはないが。」警官は即答する。
「大統領府からの許諾を受けてのものです。以前に、国際法に則り我々機構は事前に協定を締結している国家から調査要請を受けた段階において機構独自の規則によって行動する治外法権が認められています。自衛の為の武器携行もその一つです。ミクロネシア連邦政府と我々機構は事前協定を結んでいますから、今回の場合においても公務執行中であるか否かに関わらず協定が優先適応されるケースに該当します。」対するフロリアンも明確な根拠を示して対応する。
「そうか。機構というのは随分と傲慢なのだな。だが、自国民が多数行き交う大通りという環境においてそのような武器をみだりに使用することを我々は認めていないし看過することも出来ない。」
「おっしゃっている意味が分からない。先に申し上げたように武器の携行、及び必要だと個々人が判断した上での使用は協定で認められている権利です。あの状況で使用しなければ、僕とアヤメちゃんを襲った人物が所持していた拳銃によって市民に被害が及んでいた可能性が高い。万が一、今回の一件における僕の判断が誤っていたというのであれば機構内部の査問会議によって追及を受け処罰を下されるでしょう。貴方がた警察がそのことをこの場で追及するのは筋が違う。」
フロリアンの言い分に対して、それまで声色や表情一つ変えることなく淡々と質問だけを繰り返してきた警官は語気を強めながら言った。
「それがどうした?この国の治安を管轄するのは我々警察だ。この国の法律に基づき、この国の秩序と国民の安全を守るのが我々の使命だ。身に危険が及んだかどうかは個々人の主観でしかない。実弾ではないスタンガンといえど、連邦国民が多数往来する環境においての発砲の正当性について我々は問題視をしている。そのことに対して議論の余地は十二分にあると思うが。」
彼の言葉に耐え切れず、ついに我慢の限界を迎えたフロリアンも応戦した。
「ふざけるな!現実にアヤメちゃんが銃撃されたんですよ!?あのまま何もしなければ彼女は殺されていた可能性もある!路地から出てきた犯人が無差別に発砲すれば大通りの人々が負傷していたかもしれない!」
「君の言葉はただの結果論と推測に過ぎない。では、推測で語るのならば仮に君の撃ったスタン性の弾丸が民間人に直撃していた場合の責任はどうとるつもりだった?君が発砲したことで激高した犯人によって他の民間人に銃撃が及ぶ可能性だって排除できない。スタン性の弾が犯行に及んだ人物に命中して動きを封じられたのは偶然だ。それが失敗していた場合のことも考えていたのかね?」
「それは…」可能性を言い合うだけの話し合いに終わりはない。ただの感情論同士のぶつけ合いになるだけの不毛な争いだ。
過去にそうしたことを自分に教えてくれた人物の言葉を思い出しながらフロリアンは口を閉じる。
それに、今この場で言い合いを継続すれば不利になるのは明らかに自分自身だ。何を間違ったことをしているわけでもないが、任意聴取という現在の状況から被疑者として勾留されるような事態は避けたい。
さらに言えば機構と警察との間に構築されている協力関係に亀裂を生じさせるわけにもいかない。立場としては自分1人の問題ではないのだ。
そう考えたフロリアンは言いかけた言葉を呑み込み、奥歯を噛み締めながら黙った。
「やはり若いな。物事の “本質” というものをしっかりと見たまえ。」
警官は射貫くような視線を浴びせながら言った。
その時、部屋のドアをノックする音が響いた。警官は椅子から立ち上がってドアを開け、外にいた他の警官から報告を受けたようだった。
数秒後、彼はその場で振り返りながらフロリアンへ言った。
「どうやら時間のようだ。君に迎えが来た。機構のブライアン大尉という人物だ。」
隊長が来た。ということは事件に関する報告は既に支部へ伝わっているらしい。
当然と言えば当然なのだが、これまでの警察の動き方からして報告がなされないという可能性も考慮していたので、このまま自分は拘留され続けるのではないかと危惧していたところだった。
「聴取はこれで終わりだ。君の言うように機構と連邦政府との間に結ばれた協定があるからな。外まで案内するからついて来なさい。」
やはり最初から協定のことについては理解していたのか。
フロリアンはそう思いつつ、警官に誘導されるがまま椅子から立ち上がり彼の後についていく。
取調室から出た2人は真っすぐに続く長い廊下を歩く。
その途中、しばらく歩いたところでふと警官が言う。室内とは別人のように穏やかな声だ。
「この場は先程と違い、正式な聴取の場ではないから記録も録画もされることはない。君にひとつ良いことを教えておこう。」
フロリアンは歩きながら彼に視線を向ける。そして警官は言った。
「今、この国で起きていることに関して “目に見えるもの、形あるものが全てだと思うな”。」
唐突な言葉に眉をひそめながらフロリアンは聞き返す。
「どういう意味ですか?」
「言葉通りだ。意味は自分の頭で考えるんだな。」
視線を合わすことも顔を向けることもなく警官は言う。
長い廊下を歩き、階段を下りた先にフロリアンはジョシュアの姿を見つける。
フロリアンが彼の元へ歩いて行こうとした時、再び言葉を掛けられた。
「君にはまだ名を名乗っていなかったな。連邦警察のウォルター・イサム中佐だ。」
振り返ったフロリアンを見据える彼の表情は取調室でのものとまったく変わりのないものであったが、声は明らかに穏やかな様子へ様変わりしていた。
「それでは失礼します。」フロリアンは一言だけウォルターに対し挨拶を済ませると、真っすぐにジョシュアの元に向かった歩みを進めた。
* * *
アヤメが自宅へと連れ戻され、フロリアンの任意聴取が丁度終わったその頃、国際文化交流フェスタの会場でアンジェリカは露店巡りをしていた。
美味しそうな食べ物を片端から頼んでは食べ歩くことを繰り返している。
メインストリートの一角では一時的に大勢の警察が出動しアヤメとフロリアンを取り囲むという物々しい雰囲気となったが、現在は何事も無かったかのようにイベントが継続されている。
この調子だと裏通りで起きた事件については “無かったこと” として扱われるのだろう。
これには列記とした理由がある。まず前提として、アヤメの命がマルティムや関係する何者かによって脅かされる可能性については連邦国民の誰もが危惧し懸念を抱いている事実であり、彼女の身に何か良くないことが起きるのではないかという不安はこれまでも常に付きまとってきていた。
その為、連邦政府も警察もそうした国民の不安を解消し、また国家として密売組織に堂々と対峙できるだけの力を持っているということを対外的に誇示する理由も兼ねて彼女に万全の警護体制を敷いてきたのだ。
だが、今回の一件によってきちんと護衛をつけていたはずの奇跡の少女が狙撃され殺されかけた事実が明るみに出れば政府や警察の信頼も失墜するに決まっている。しかも、よりにもよってこうしたイベントが開催されるという一番警戒しなければならない日に事件が起きたとなればその度合いも強まるだろう。
この事実が明るみに出るということは、つまりマルティムに対して弱みを見せることにも繋がりかねない。国民の信頼を失った組織など恐れるに足りずとばかりに攻勢を仕掛けられる可能性も考え情報は秘匿し、万一公に晒されそうになった場合はすぐに別の話題にすり替える策を用意した方が賢明だ。
ただ、そのマルティムに関してはボスであるアルフレッドに対して自分が強めに釘を刺したこともあって、何があっても攻勢に出ることなど現在の所は有り得ないのだが。
そういえば、警察も “人間であったものの残骸” 、 “出来損ないの芸術作品” をそろそろ発見しているだろうか。
先程アヤメを狙撃したスナイパーを憂さ晴らしついでに芸術的に始末した後、彼が持っていたデバイスから警察へと通報を入れておいた。その末路を発見して検証を始めるには丁度いい頃合いだろう。
彼が本来所持していたスマートデバイスから自分に関する諸々の事情が漏れる事態は避けたいので、それだけは粒子レベルになるまで粉々に砕いた上で “マルティムの本拠地の情報が入った別のスマートデバイス” を放り投げておいたのだが、それも発見してもらっている頃合いだと思われる。
現場を目撃した警官たちがどういった感想をもつのか尋ねてみたい気もするが、それは叶うことはない。
先の事件でマルティムの計画を妨害する途中、見つかると面倒くさそうだった裏通りに展開中の警察官たちも怪物たちをけしかけて気絶する程度に軽く殴りつつ、フロリアンを引き合わせたことでアヤメは助かり、自分の楽しみを邪魔しようとした者は排除した。
その際に気を失った警察の彼らもそろそろ目覚めていることだろう。当然、自分のことを見た者はいないはずだから疑いの目が自身に及ぶことなど有り得ない。
自画自賛だが、何度考えてみても完璧な立ち回りであったと思う。仮にフロリアンが自身のことを警察に話したからと言って “それが何になる” というものでもない。
今回はマルティムの邪魔をしつつアヤメと機構の援護をする役回りになったが、自分は元々どこの陣営の味方というわけでもない。
ただただ狂気のない場所に狂気を持ち込み、混乱を楽しむことが出来ればそれで良いのだ。あらゆる要素が複雑に絡み合う中、慌てふためく人々や組織を眺めているのは実に楽しい。
心の中でほくそ笑みながらアンジェリカは次のごちそうを求めて歩みを進める。
次に起きる大きな出来事は13日の第五の奇跡だ。
それはきっと、自分にとっても味わいがいのある “とっておきのごちそう” になるに違いない。
世界中を大混乱に陥れていく快楽は何物にも代えがたい。
この先の未来を想像するだけで昂ってしまいそうだ。
何もかも、全ては等しく自らの掌に収まる玩具である。
自らの敷いた “絶対の法” の上で世界が踊り狂う様が訪れるまであと僅か。
ハンガリーでの出来事も今回の出来事もその為の布石だ。
歩みを進めよう。これからも、この先もずっと。
歴史が繰り返した人間の愚行を再びこの世界へ。
“第三次世界大戦” という舞台の幕開けの日まで。
少女は愛くるしい笑みを浮かべながら、将来的に頂く予定のごちそうとはまた別の “ごちそう” を求めて露店の立ち並ぶ大通りを歩んでいった。
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