双子の星

「いつもね、お客さんが来た時は、お見送りで終わっていたの」

「ドアが閉まって、バタン、って音がするたんび、少し気が抜けるようなの」

「だって、お客さんがいなくなったら、私ひとりなの」

「いつもいつも名残惜しいわ、でも彼らを待つ人のために、引き留めるわけにはいかない」


 そこで私は一息ついて、瞼を閉じる。雨に降られたあの日のあなたの姿が見える。傘はない。


「私ね、待ってくれる人がいれば、幸せだと思うの」

「あなたがいてくれたなら」


 コクンッ


「私があなたにとって、そんな存在になれたなら、どんなにいいか……!」


 コクンッ コクンッ


「ねえ、もっとあなたと一緒にいたいわ」


 私はあなたのもとへ行きあなたの胸にそっと触れた。ひんやりして、あたたかい。

 あなたは私の背に手を回し、そっと、頷いた。反射した光のもとをたどると、双子の星が輝いていた。

 

「今日からここが、あなたの家よ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る