微笑み

 あなたに、また会いたいと思ったから、私はもう一度そこを訪れた。

 草むらとも荒地とも言えない、曲がりくねった小径のそばで、やっぱりあなたは横たわっていた。雲ひとつない空の下、あなたは傘をかぶっていた。

「もう、晴れてるんだからこれはなくていいでしょ」

あなたは頭を左右に小刻みに回した。

「これは雨に濡れないようにするためのものなのよ。だから晴れた日は必要ないの」

もう一度、あなたは頭を左右に振った。

「……そんなにこれ好きなの?」

あなたは頭を上下に小刻みに回した。

「ふふ、気に入ってくれて嬉しいわ」


 あなたは外で暮らしているのかしら。傘に頭をうずめて寝ころんで、昼も夜もずっと……

「ねえ」

 ギギッ?とあなたは顔を傾けた。私は、満面の笑みを浮かべながらー多分浮かべられていたと思うーこう続けた。


「私の家に来ない?」

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