第3話 筋肉とケーキのジレンマ

「なあ頼むよ佐藤、これで赤点なんて取ったら僕の収入原が!

何とかしてくれよ!」


「仕方ないな和也君は、テッテレーカンニングペーパー

これを使えばそんな君だって百点満点だ」


「ありがとう、佐藤ってなるか!普通に勉強教えてくれって言ってるの!」


「めんどくさいな、それより知沙さんに教わった方がいいんじゃないか?

どう考えたって知沙さんの方が勉強出来そうだろ」


「いや、ギャップ系キャラかもしれないぞ」


知沙の方に体を向け高らかに宣言する


「知沙!実はお前勉強出来ないだろ!」


「そんな訳ないでしょ、前の学校でも歴代切っての優等生だったのよ」


くそ俺のデータベースキャラとしての立ち位置が台無しになってしまった

いやまあ、今までそんな素振り一回もしたことなかったから別にいいんだけど


「なら頼むよ勉強教えてくれ!」


手を目の前に合わせて、必死に拝み倒す


「そうね、土下座でもしてくれたら考えようかしら」


「はい、この通りです」


その瞬間おれは全身の筋肉をフルで使い飛び上がると

空中で土下座の完璧な姿勢を作り上げそのまま地面に着地した


「流石に冗談なんだけど」


二人してドン引きでこっちを見ている


「お前はプライドとゆう物がないのか?」


「そんな物生まれるときにお母さんの腹の中に置いて来たよ」


「全く、そんな大事な物忘れてくるな」


生まれてからこの方プライドを持ったことがない事に

逆にプライドを持っている俺の人生を舐めないでほしいい

そのおかげで現在このありさまなわけだが


「そんなの忘れてくるなんてとんだ忘れんぼさんだね

和也君は」


ひょいっと彩音も会話に加わってきた


「そういえば綾香さんは勉強どうだったっけ?」


「私わねえ、いっつも赤点ギリギリで-す!てへっ☆」


あざといなー、でもかわいいから百点満点

テストはダメでも笑顔は満点、魔法少女になる素質を

備えてるのではないだろうか


「てことでさ、私にも勉強教えてくれないかな知沙さん?」


「あなたの頼みなら仕方ないわね、今度勉強会でも開きましょうか」


やれやれといった感じでため息をつき目を落とす


僕のお願いではまるで開いてくれなさそうな口ぶりだったけど

大丈夫だよね?開こうとしてくれてたよね?

僕は信じてるよ?


「にしても何で勉強なんてあるんだろうねー」


「確かに、僕も毎回同じこと思うよ」


「そりゃあ就職とかの時に分かりやすくするためじゃねーのか

どれくらい優秀なのかとかな、知沙さんはどう思う?」


「そうね私は…特に思い浮かばないわね」


「理由って言ったら佐藤のくらいしかないよな

それもそれでしっくりこないけど」


「どこかの国だと子供の頃はほとんど勉強させずに成長するにつれて

自分で学びたいことを見つけて授業をするらしいよ」


「早速その国に引っ越したいところだけど、まずその国の言語を覚えるのが難しいな」


「人生上手くいかないね~」


二人そろってため息をつく


もうお嫁さんになって永久就職してしまいたいところであるが

就職先(彼女)も居ないのでお手上げである


「話は変わるけどさ駅前にケーキ屋さんができたの、今日帰りにみんなで

寄ってから帰らない?」


「ケーキか普段あんまり食べないから楽しみだな」


男で普段から買って食べる人は少ないだろう


「まあそうだよな、食うって言ったら誕生日くらいだもんな」


「まあそこは男子だからね、女の子は体の80%は糖分でできているので

ケーキは貴重な栄養資源なんです」


いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて人差し指を口に当てお姉さん

ぽい態勢で話す


とゆうか体の80%が糖でできているとかとんでもない事実である

だから女の子はこんなにも甘いにおいがするのだろうか


「ねー知沙さん!」


「え、えそうね」


何か考え事をしていたようで一瞬ではあったが反応が遅れた


「ほらね、てことで男子諸君はケーキを私達に奢りなさい

勉強会でいっぱい養分使っちゃうしね」


「流石にそれはないな、それなら和也は体の80%は

煩悩でできてるぞ」


「体の80%が悪意でできている奴に言われたくない」


とゆうかどうせなら体は剣で出来ていたみたいなかっこいいこと言って

みたい


「すごいね二人共、もはや食べ物以外で体を構成してるなんて」


期待の新人類の完成である


「そろそろ授業始まっちゃうね」


教室のガヤガヤも収まり始め、みんな席に着き始めていた


「じゃあまた放課後ね」


「じゃあ俺らも戻るか」


「そうだね」


席に着く前にちらりと知沙の方を覗き見るとまだ何か考え事を

しているようだった

彼女が何を考えているのかを察するには、僕たちの関係は

浅かった

まだまだ高校生活も、彼女との関係も宵の世界の事も

知らないことだらけで卒業するころの自分を想像しても皆目見当も

つかなかった





やや静かな住宅街のところに立っている僕たちの学校から歩いて三十分のところにそのお店はあった

お店の周りにには、駅周辺とゆう事もあって沢山のお店が並んでいて平日の放課後でもそれなりの賑わいを見せている

店は白く明るいクリーム色の壁に合わせて屋根も白くぬらさっている、

広く、大きな窓から見える店内はおしゃれな照明が沢山の垂れ下がっておりいかにもといった感じだ


「うわー男子のみお断りって書いてるよ佐藤」


「そうだな、これは男子のみで入ると呪われてしまうよ和也」


「そんなことないよ、最近男子だけでってゆうのも意外と増えてきてるんだよ?」


「彩音さんそんな事出来るのは多分ガード系の魔法か耐性持ちの人だけですって、

僕たちは持ってないんですよ」


「俺もだ、クラスでも選ばれた奴しかその能力持ってないからな」


「いい加減にそのダンジョン世界から人間世界に戻ってきてくれませんかね

男子諸君」


「まったく男子ってバカね、行きましょう彩音さん」


「行こう!行こう!」


先に歩き始めた女性陣を追いかける


「ちょ、まってー!」


店内に入ると甘い匂いが漂ってきた


「いらっしゃいませ、四名様ですか?」


若くて優しそうな定員さんに元気に彩音が答える


「はい、四名です!」


「ではお席の方まで案内しますのでこちらまでどうぞ」


店内は開店したばかりということもあって沢山のお客さんで混み合っていた


「ではこちらメニューになります、決まり次第お呼び下さい」


軽くお辞儀をするとまたほかの仕事へと戻っていった


彩音がメニューを開き、みんなで覗き込む


「さてさて何にしよっかな~あ、これなんていんじゃない!

六十分食べ放題セット」


「いいわね、私はそれにするわ」


「じゃあ僕も」


結局みんなで食べ放題メニューを選ぶことにした

注文を終えたところでケーキを取りに行く

どうやら小さいケーキのバイキング形式のようだ


「じゃあケーキ取りに行くか」


「私はその前にトイレに行ってくるわ」


「じゃあ私も」


「じゃあ俺らで先に行ってるか」


「そうだね」


男二人で並んで歩きだす

バイキング用のケーキが所狭しとすごい量並べられていて、そこからキッチンが

見えるようになっていた、その中に見知った顔の筋肉ゴリゴリ野郎の顔が並んでいた


「おいお前ら、手を抜くんじゃねーぞ!一つ一つ丁寧にだ!」


「「「サー、イエッサー!」」」


声の方を見るとケーキを作るのには違和感のある筋肉質な男

達が並んでいた


「くそ、HKBの連中か」


HKBとは強さだけを求めた男たちの集う集団である

実際に格闘技をしている人をコーチに持ち修行に励んでいるのだが、

そのあまりの練習時間の多さ故に彼女ができることはない

仮にできそうになっても仲間が全力で阻止するし、部活をやめようにも

仲間たちのいい感じの雰囲気によって止められてしまうのだ

よって彼らの前で女性との青春の一ページを刻もうものなら

命の保証はないだろう


「おっと、そこにいるのは佐藤と和也じゃないか、まさか女子と

食べに来たわけじゃね~よなぁ」


見つかりたくはなかったが、早速ばれてしまったようだ

普段は優しいHSSの連中であるが色恋沙汰となれば

ゴリラの発情期並みに恐ろしくなる

とりあえずこの場は誤魔化さなければいけないだろう


「いや~まさか!最近ケーキ食べてなかったからお店出来たみたいだし

男二人で食べに行かないかって和也がな」


合わせろと目で必死に訴えてくる


「そ、そうなんだよ!最近なんか甘いもの食べてくなっちゃってさ~

男一人だと入りづらくてさ!」


「そうかそうか、確かにこの店は入りづらいもんな」


うんうんとうなづいている、どうやら納得してもらえたようだ


「にしたってどうしてHSSの連中がケーキ屋でバイトしてるんだ?」


「ああ、それだがな、今度の合宿の費用稼ぎだよここ思いのほか

バイト代が良くてな」


せっかくのバイト代さえ、合宿費用にされるとは恐ろしいものである


「そうだ今手が空いたらお前らのために特別なケーキ作ってやるよ

後で席まで持ってってやるから」


まぶしい笑顔が光るが、俺らはといえば顔面漂白状態である

席に来て四人で食べてるのが見つかればどうなるかは

必然である


「いいよいいよ、そんなお金ないし!」


「ただでいいよ、そんくらいやった所でばれねーから」


「でも、そうゆうの良くないって言うか…」


「何だ今更じゃねーかよ、それとも何かそんなに作ってきて欲しくない

理由でもあるのかなぁ」


ねっとりとした声に鋭い眼光が光る


「いやいやまさかそんな、な佐藤!」


「もちろんだ和也!」


「じゃあ後で持ってくから楽しみにしとけ」


そう言うとご機嫌に厨房に去って行ってしまった


「さて佐藤、この場で俺らが取れる手段は何だと思う?」


彼のデータキャラの象徴となるメガネがきらりと光る


「一つ目は俺らと女子で席を移す、だがこれは開店したばかりの混んでる中で

やるには歓迎されないだろう」

「二つ目は、一時間俺らが食い続け奴らの手を忙しくさせ続ける」

「三つ目は帰る事だが注文してしまった今それを行うのは難しい」


俺は覚悟を決め、佐藤の方に手を置いてふっと笑った

佐藤も頷いてふっと笑う





「うわー流石男子だねこんなに食べれるなんて!」


「いくら食べ放題だからってこんなにするなんて、男子ってバカね」


そこにはジェンガのように積み上げられたケーキの山を

崩すように食べる男子二人と

それを好奇心と蔑みの目線で眺める、二人の女子の姿があった

世界広しと言えどこの地獄絵図はなかなか見られないのではないだろうか


「お前らも来てたのか」


「あれあれ、奇遇なのです!」


よく知った声が聞こえてきた








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