第2話 摩耶

 遊園地に着くと、俺たちはどこのアトラクションをどれにするかで迷う。

「ねぇねぇ。どこにするの?」

「私はジェットコースターがいいわ」

「よし、じゃあ、ジェットコースターにのろう」

「……」

 無言になる亜海。どうしたのだろうと、うかがっていると、青ざめていく。

「わたし、ジェットコースターは苦手なの」

「それは本当か。じゃあ遊園地という選択は間違っていたのか!?」

 俺は狼狽する。デートで苦手なところにつれていくのはやってはいけない行為だ。それをやってしまったのだ。

「いや、わたしはジェットコースターは苦手だけど、フリーフォールは大丈夫なの」

「なんでだ……?」

「分からないの」

 困り顔の亜海。

「じゃあ、ジェットコースターはなしで」

「いえ。摩耶と一緒に楽しんでほしいの」

「いいのか?」

「うん」

 亜海が承諾してくれるのなら、問題はないが。

 摩耶に「どうする」と視線で問う俺。

「分かった。この後で摩耶の好きなフリーフォールにのろう。それでいいね、二人とも」

「ああ。分かった」「なの~」

 俺と摩耶はジェットコースターに向かう。

 遊園地アプリで待ち時間を調整し、すぐに乗れるまで時間を潰す。

「しかし、なんで摩耶は俺のことが好きになったんだ?」

「それを聞いちゃうんだ。でも、いいよ。教えてあげる」

「おう。サンキューな」

 言い出しづらいのは分かるが、理解するのには重要に思えた。

「あれは蒸し暑い夏の頃だったわ。

 私がひとりで授業の陸上しているとき、たちくらみがしたわ。そこで助けてくれたのがあなた。冷たいお茶をくれたのを今でも覚えているわ」

 遠い目をする摩耶。

「そうだったのか。でもそんなことで……」

「きっかけよ、それから徐々に好きになっていったわ」

 きっかけ。それ以外のを知って好きになってくれたようで、安心だ。なら、こちらも理解していかないといけないな。

「ありがとう」

 好きになってくれて。

「ありがとう」

 一緒にいてくれて。

「さあ、ジェットコースターにのろう」

「うん。分かったわ」

 俺と摩耶はジェットコースターを楽しんだ。

 ご時世もあり、絶叫は禁止だったが、日常では味わえない浮遊感と、衝撃に刺激をもらったのだ。

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