双子の想いは俺には重いんだ。

夕日ゆうや

第1話 双子の好みは俺!?

「「好きです」」

 その双子は同時に俺に告白をしてきた。

「わたしと」

 亜海あみはふわりとした口調で、

「私と」

 摩耶まやはしっかりとした口調で、

「「付き合ってください」」

 俺に愛を伝えるのだった。

 二人は一卵性双生児で、見た目は一緒だ。

 整った顔立ち。切れ長の目。長いまつげ。新雪のような白い肌。身体のおうとつすらも寸分の違いもない。ただ髪の毛が長いのが亜海。短いのが摩耶だ。

 外見的特徴はそれくらいしか違いが分からない。

 だが、内面は違う。

 亜海はのんびりとした性格で頼りない。対して摩耶はしっかりとした性格で、息が詰まる。

「分かった。俺が決めるまでふたりを分かりたい。協力してくれ」

「どっちかを決めるが嫌ってこと? まあ、しっかりとお互いを理解するのはいいことよ」

「分かったの~。それでいいの」

 みんなの意見がそろったところで、俺はうなずく。

 二人と連絡先を交換し、その日は解散した。

 俺のどこを好きになったのか分からないが、俺にとっては一世一代の出来事だ。ようやくモテ期が到来したのだ。俺は彼女を大切にする――そのためにはまず理解が必要だ。二人のどこがいいのか、どちらを選ぶのか。その采配は俺に委ねられている。


 次の日。

 俺は唐突に二人に対してラインを送る。

(校門の前まで今すぐこれるか?)

 そんな内容の文面だ。

 二十分ほど待つ。これが理解につながると知っているか、二人は(今いく)と返事をもらっている。

 ほどなくして白い息を吐く摩耶が到着する。

「遅くなってごめん。待たせちゃったね」

 しっかり者の摩耶が汗だくで自転車をこいできたのだ。

「摩耶の方が早くきたのか。なるほど。俺のピンチに助けてくれるのは摩耶だったわけか」

 あとからのんびりと登場した亜海は目を丸くする。吐く息は白いが汗だくになるほど走ってはいない。

「お待たせなの~」

「俺のピンチに、そんなゆっくりとくるのか。亜海」

「うふふ。私の勝ちね」

「そんなことないの。女の子にはメイクの時間が必要なの。メイクが崩れないようにするには汗をかいてはいけないの」

「なるほど。確かに亜海は化粧がしっかりとしてあるな」

「わ、私は一秒でも速く会いたくて」

「化粧をしなかったわけだ」

 俺の言葉にしょんぼりする摩耶。それも可愛いが、これではどっちが俺を想っているのか、分からずじまいだ。


「こうなったら遊園地で、でデートだ」

 デートという言葉にどもる俺。

 こういったことには慣れていない証拠だ。

「分かったわ」「それでいくの~」

 摩耶と亜海は深く頷く。

 電車で二駅、近くの遊園地に向かう。

 向かう電車の中で、俺の両隣に亜海と摩耶が座る。

「ねぇねぇ。どうして私たちのことを理解してから告白を受けようと思ったの?」

 難しいことを軽く聞いてくる亜海。

「それはだな、俺がそうしないと目覚めが悪いと思ったからだ」

「ふふ。やっぱりいい人ね。片方と付き合って、即エッチなことをする者もいるというのに……」

「え。そうなのか?」

 驚きで声が裏返る。

「ええ。私の友達にもそういった人がいるわ」

「わたしも聞いたことあるの~」

「人ごとみたいだね。俺のそういった類いの人かもよ?」

 意地の悪い言い方だが、気をつけてほしいとの思いから訊ねる。

「ふふ。それでも好きなのよ」「なの~」

 二人はひく気がないらしい。試したわけじゃないが、どちらかが引き下がるかと思っていたのに。

 電車に揺られ、隣町にある遊園地についた。

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