トントン
@J2130
第1話
「トントン」
まただ‥、まったく、なんだよもう。
「トントン」
なんだよ、もう。
僕はトイレのドアを便座に座りながら押した。結果はわかっていたがこうでもしないとね、なんか気持ちが悪いし、気持ちがおさまらないから‥。
廊下には当然誰もいない。
そう、僕は一人暮らしだから‥。
就職して待望の一人暮らしを始めた。うれしかった、家具そろえたり、簡単な料理作ったり。洗濯、掃除も一人だとそうは大変でないし、誰にもじゃまされない生活はね、いいもんだ。トイレで本を読んだりしてね。
で‥、いつのころからか、そのトイレの便座に座りしばらくすると、
「トントン」
とドアを叩かれるようになった。毎回じゃなく、十回に一回くらいかな、時間もまちまち、曜日もまちまちで。
最初は気のせい、そのうち誰か侵入者?もしかして幽霊?
いろいろと考えた。スマホで僕がトイレに入っている間のトイレのドアを外からずっと撮ったり、友人に来てもらって、勿論男友達だけど、僕がトイレに入っている間、見張ってもらったりね。
でも、
「トントン」
と聞こえるのはトイレの中だけで外からは聞こえないし、誰も叩いていないし。
なんか、反響、振動、そんなことも考えて管理会社に相談もしたんだけど結局わからなくて。
「気にしないほうがいいですよ、大丈夫ですよ」
管理会社の担当のお姉さんは笑って言って帰ってしまうし‥。
「ゴンゴン!」
とゆう感じではないんだけど、誰か家族か知り合いが先にトイレに入っていないか確認するくらいの感じでね、でもよくわからない‥。
ちなみに来てくれた友達も体験してくれて
「気にしないほうがいいんじゃない、大丈夫だよ」
と笑って言ってビールだけ飲んで帰ってしまった。
まあ、確かに危害を加えるわけではないし、大丈夫なんだろうけれどね。嫌なら引越せばいいしさ。
「トントン」
「どうしたの?トイレのドアなんか叩いて、誰も入ってないわよ。私たち二人だけじゃない。それとも急に私が来たから、誰か他の女の子、ここに隠しているわけじゃないわよね」
女がちょっとふざけた感じで男につめよった。
「いやね、いつもじゃないんだけどさ、なんか気配がするんだよ、水を流す音とか、トイレットペーパーを引く音とか、本のページめくる音とかさ‥」
「気のせいでしょ、なんだったら開けてみたら」
そうは言っても女は男の腕をかかえ、トイレのドアから身を隠した。
男がドアを開ける。誰もいない。
水も流れていないし、トイレットペーパーも新品のままだし、本だってない。
「誰もいないね、良かったね」
女は笑って言った。
「うん、いつもじゃないんだけどさ‥、なんか気になるんだよね」
男はまだ不安そうだ。
「気にしないほうがいいんじゃない、大丈夫だよ」
「うん、危害を加えられるわけじゃないしさ、まあ、嫌なら引越せばいいしね」。
トントン @J2130
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます