対人戦闘
作戦が始まる。
所定の位置についた俺たち第7小隊は敵の様子を伺っている最中だ。
センサーやモニターで目視できる範囲では、敵の数は2機。
恐らく、彼らは辺りを
機体は一定の距離を保ちつつ、周囲をぐるっと見渡していており……俺達の存在には気がついていないようだ。
「それじゃ、そろそろ行くよ二人とも。準備は出来てる?」
「「はい(!)」」
間髪入れずに二人揃って返事をした俺とテレシアを見て、ベルラ先輩は貼り付けたような笑顔を浮かべる。
その刹那、凄まじい轟音と共にベルラ先輩の機体が所持するカノンブレードから勢い良く銃弾が飛び出した。
これ以上ない程に美しい軌道を描いた銃弾は哨戒していた敵機のメインカメラを寸分の狂いなく撃ち抜き、機能を停止させる。
ベルラ先輩が射撃を開始した瞬間、俺とテレシアは魔導騎兵のスラスターの出力を全開にして、敵の機体に詰め寄った。
状況が掴めず、慌てふためく敵の機体のコックピットを俺とテレシアは容赦なくブレードで貫いた……が、俺が奇襲を仕掛けた相手も死ぬ直前にやるべき仕事は果たしたようで、敵襲を知らせる信号弾が空中へ放たれてしまう。
……やばい。やらかしてしまった。
本来であれば、深夜帯であるこの時間に強襲を仕掛けて敵の見張りを始末し、敵が抵抗する間を与えずにこの村を制圧する作戦であったのに俺が全て台無しにしてしまった。
顔がみるみる青ざめていく。
俺たちはこれから4機の魔導騎兵と、たった3機でやり合わなければならないのだ。
他でもない、俺のせいで……。
「そんな顔しないで後輩くん。先輩にどーんと任せなさい!」
取り返しのつかないミスを犯した俺をベルラ先輩が屈託のない笑顔でそう励ましてくれる。
……そうだ、落ち込んでいる暇なんてない。
今の俺に出来るのは二人と協力して敵勢力を鎮圧することでミスを帳消しにする事だけだ。
動揺しきった心を必死に沈めて、敵の襲撃に備えるために陣形を整える。
俺とテレシアが前衛に位置して、その援護をするベルラ先輩が後衛の布陣だ。
すると、すかさず村の建物の中から4機の魔導騎兵が現れた。
ライフルを撃ちながらも隊列を乱さずに此方に向かってきており、彼らの練度の高さが垣間見える。
シールドで敵の銃弾を防いでいると、全身が真っ黒なデザインの機体である「ジダル」の中で、赤いラインが所々に入っている敵機が現れる。
その機体はスラスターの推進力を最大限に活かしながら俺のガラドに体当たりを仕掛けてきた。
敵機の攻撃は上手くシールドで受け流せたものの、テレシア、そしてベルラ先輩と完全に分断されてしまう。
それを確認した残りの3機はテレシアとベルラ先輩に本格的な攻撃を始めた。
おそらく、俺が相対しているのは敵のリーダー格だろう。
他に邪魔する者はいない正真正銘のタイマンだ。
……早急に敵機を撃破し、数的不利な戦況に立たされてしまった先輩とテレシアの元に向かわなくてはならない。
こんな所で立ち止まっている時間はないのだ。
そう自分を鼓舞して敵機に攻撃を試みようとすると、モニターの端に蹲った子供の姿が写った。
なぜこんな所に?
村の人間に生き残りがいたのだろうか?
……俺の勘違いかもしれない。
しかし、僅かでも可能性がある以上、あの子供を戦闘に巻き込む訳にはいかなかった。
俺はスラスターを利用して無理矢理方向転換する事で、子供が戦闘に巻き込まれないよう少しでも距離を取ろうとする。
体勢を崩しかけている機体を姿勢制御装置を使って制御しようとするが、その時に生じた隙を敵は見逃さなかった。
敵機の頭部に備え付けられたバルカンによって、着地しようとしていた陸地が崩される。
「クソッ──」
子供に戦闘の影響が及ばない程の距離を取る事はできたが、完全に機体を制御出来なくなった俺はその場に転倒してしまう。
シールドは手放さなかったものの、間抜けにもブレードを放り出してしまった。
転倒した時の衝撃で視界がブレるが、即座にモニターに目を戻す。
……すると、そこには片手持ちのアックスを俺のコックピットに振り下ろそうとする敵の機体の姿が映っていた。
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