人型ロボットが蔓延る世界に生まれた俺のヒロインが全員ヤンデレだった件について

第七小隊

　初陣は散々な結果で終わった。

　部隊を率いていた隊長は殉職して。

　植物型の魔物から逃げおおせた隊員は、隊長が魔物に捕食された姿がトラウマになってしまって、任務の後に退職したらしい。

　以上の理由により、隊員が俺一人になってしまった部隊は解体する運びとなった。

　そして、俺は前回の戦闘の功績が上層部の方々に認められたのか、所属する部隊を自由に選べる権利を与えられた。

　所属したい部隊の候補は沢山ある。

　国の防衛に専念する部隊だったり、ベテランパイロットが率いる部隊だったり。

　……だが、俺は茨の道を進むことにした。

　いつ、どんな時も戦線の最前線に放り込まれる特務部隊に所属する事に決めたのだ。

　その理由は色々あるが、今は割愛する。

「それでは自己紹介を頼む」

　転属先である第7小隊の隊長が俺に自己紹介をするように促す。

　「はい」と、返事をした俺はすぐに二の句を継いだ。

「ザント・ワグナラス、16歳。以前は第8小隊に所属していました。王国を守る盾として微力ながら尽力いたす所存です。皆さん、これからよろしくお願いします！」

　明るい声色を心がけてそう言い切ると、ささやかな手拍子と共に一人の少女が口を開く。

「その発言が虚勢で無いことを祈りますよ。言葉だけの人は戦場で頼れませんから」

　当たり障りのない俺の自己紹介を聞いて、普段よりもマイルドな皮肉を言ったのは、俺がこの隊に入るきっかけを作ったテレシアだった。

　……俺が特務部隊に入隊した理由は、大きく分けて三つある。

　まず、一つ目は超えるべき目標であるテレシアと同じ部隊に入る事で、弛んでいた意識を引き締めるため。

　それ以外にも、彼女の操縦テクニックを参考にしたいという目的もある。

「わ〜、ぱちぱちぱち〜。一緒の部隊だなんて嬉しいな！これからはずっと一緒だね、後輩くん！」

　辛辣なテレシアとは打って変わって、優しい言葉をかけてくれるのは……訓練兵時代に知り合ったベルラ・ミルキル先輩だ。

　ウェーブのかかった長い金髪と青い瞳が印象に残る可愛らしい見た目のベルラ先輩は、とても華奢な体躯をしている。

　幼い子供のような見た目の彼女が、笑顔で迎え入れてくれる姿は見てて微笑ましい。

　……だがしかし、小動物のような外見や天真爛漫な性格からは全く想像が出来ないが、本人曰く騎士団で1番の射撃の腕を持っているそうだ。　

「おや、あの子達の反応を見る限りだと、君は二人と面識があるようだね。それでは改まって自己紹介をするのは私だけでいいかな？」　　

　第7小隊の隊長を務める彼女が告げた言葉に対して、肯定の意を伝える。

「リーゼロット・カミンスキーだ。我が軍の特務部隊である第7小隊の隊長を務めている……歓迎するよ、ザント君。分からない事があれば、なんでも聞いてくれ」

　隊長は俺の方に手を差し伸べる。

　意図を介した俺は彼女の手を握り、握手を交わした。

　リーゼロット・カミンスキー。

　俺も彼女と対面するのはこれが初めての経験だ。

　目鼻立ちがはっきりした端正な顔立ち。

　腰あたりまでかかる美しい黒髪をポニーテールにしている姿は、麗しいとしか言えない。

　彼女は王国のパイロットの中でも、トップクラスの知名度を誇る有名人だ。

　……俺がこの部隊に入ることを決めた二つ目の理由は、特務部隊である第七小隊が危険度の高い任務を高頻度で行うから。

　魔導騎兵の操縦技術を磨くためには、地道に訓練するのが一番だ。

　それは間違いない。

　だが、いち早く上達するためには、多くの実践経験を積む事が必要になると、俺は思っている。

　曰く、第7小隊は他の部隊が討伐できなかった強力な魔物を相手取ったり、敵の部隊と最前線で交戦するのが主な仕事内容らしい。

　そのため、この部隊に所属している者は本当にえげつない速度で死んでいく。

　けれども、リーゼロット隊長は第7小隊に五年間も所属して、数多の戦果を残している凄腕のパイロットであるのだ。

　その技量は王国一だと、評されている。

　王国の規定では、10機以上敵勢力の魔導騎兵を撃墜するとエースパイロットとして認められて、国王から、直々に名誉勲章を与えられる。

　そして、リーゼロット隊長の撃墜スコアは、それを大きく上回る65機らしい。

　彼女が叩き出した記録は名誉勲章を賜った歴代の騎士たちの中でも5本の指に入る偉業だ。

(やはり、リーゼロット隊長は風格が並の奴とは段違い……な気がする)

そんな事を思いながら、リーゼロット隊長による職務内容の説明を聞いていた俺は自分の選択が間違って無かった事を強く実感していた。