テレシア・ハイドルトン③
side:テレシア
「ふぅ……」
初めての任務から帰還した私は、自室のベットに寝転ぶ。
そんな私の右手には携帯音楽プレイヤーが握られている。
「テレシアが来てくれなかったら絶対に死んでた。本当に、本当に……ありがとう。テレシアが来てくれなかったら絶対に死んでた。本当に、本当に……ありがとう。テレシアが来てくれなかったら絶対に死んでた。本当に、本当に……ありがとう」
最愛の人から貰った感謝の言葉を録音していた私は、何回も何回も繰り返し再生する。
彼の声は何度聴いても聴き飽きることはない。
どんなに疲弊していても、彼の声を聴くと瞬く間に元気が出る。
「万が一の事を考えて、彼の機体に盗聴器を仕込んでおいて本当に良かったな……」
彼の姿形を完璧に再現した等身大の抱き枕を抱きしめながら、私は今日の出来事を思い返す。
私と彼は不幸にも別の部隊に配属されてしまった。
だから、何かあったら救助に向かえるように盗聴器を仕込んだのは我ながら好判断だったと思う。
まぁ、決して他人には言えないそれ以外の目的もあるにはあるのだけれど。
……その事はひとまず置いておいて。
盗聴器のお陰で未確認の魔物が彼の前に現れた際に、彼の救助に向かうことができた。
それにしても、対ゴブリン戦を想定した貧弱な装備であの魔物の猛攻を耐え忍んだ彼の操縦技術は流石としか言えない。
「はぁ……。今日も彼にたくさん酷いこと言っちゃった。素直になれない自分が本当に嫌になる……」
私は、初対面の時から彼が好きだった訳ではない。
そのため、彼の魅力に気づく時まで、今よりもずっと辛辣な態度で私は彼に接していたのだ。
本当に、愚かにも程がある。
昔の自分を今すぐ八つ裂きにしたいくらいで……本当は、素直に好意を伝えたい。
けれども、私は生来から持つ下らないプライドの所為で彼に対する言動を正す事ができていななくて。
……でも、そんな私を、彼は海よりも広い心で受け入れてくれている。
決して、距離を置いたり邪険にしたりせず。
魔道騎兵の模擬戦に付き合ってくれたり、面白いお話をしてくれるのだ。
私のような高慢ちきな女に、彼のような聖人が関わりを持っている。
この事に、私は感謝しなければいけなくて。
何かしらの、対価を払わなければいけなくて。
…‥彼に、私の人生を全て捧げなければならない。
「ザント君は私が守るよ。貴方を殺そうとする悪い魔物や、穢そうとする奴らから……」
大好き、大好き、大好き。
誰よりも優しくて、慈悲深いザントくん。
どんな時も明るくて、常に前向きなザントくん。
そんな彼を汚そうとする奴は……他の誰でもない、私が殺さなくてはならない。
だって、私には戦う事しか出来ないのだから。
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