第3話 目覚めと出会い
・・・マリン視点・・・
火竜との戦いから一夜明けた頃…
マリンこと私はベッドの上に横たわっていた。
「なぜ私はこんな場所にいるのだ?」
私は混乱していた。
なぜなら私達は火竜との戦いで敗れそのまま死んだと思っていたからだ。
「もしかしてここはあの世か?」
私はそんな阿呆なことを言って自分が言ったことに苦笑した。
しばらくの間なぜ私がこの部屋にいるか考えていると、私のいた部屋に一人の女性がやってきた。
その女性は茶色い髪で茶色い瞳で可愛らしい顔立ちだった。
「これはマリン様。お目覚めになりましたか?」
彼女は微笑んで聞いてくる。
「ああ、それであなたは?」
私はそう返して、聞くと彼女はハッとしたような素振りをして
「すみませんでした!
私はコリンと言ってこのギルドの受付人をしている者です。」
と笑顔でお辞儀をしながら答える。
「ではここは?」
「ここはギルドの休養室で怪我をした冒険者達を休ませる部屋です。アズ君がマリン様達を担いでやってきた時にマリン様達がキズだらけで一時はどうなるかと思いましたよ。」
私がそう聞くとコリンさんはそう答えてくれた。
そうか、私達は生きて帰れたのか… でも待てよ。
私はすぐに自分の身体を見た。
私はキズだらけだったはずなのに今はキズ一つなく
昔付いた古傷も無くなっていたのだ。
生きて帰れたことに安堵はしたが新たな疑問が浮かんだ。
私がそう疑問に思っているとコリンさんはそれに察したように
「マリン様達はアズ君が調合して作ったポーションで直しましたよ。
いや〜、あの時は私も流石に驚きましたよ。
もう、慣れましたが。」
と言ってくれた。
そこで私はガチッと固まってしまった。
普通、あんな大怪我をしていたのにポーションだけで直すことは到底不可能であったのだ。
だがそれを傷痕もなしに綺麗に直していたのだ。
私でもこのようなポーションを作る調合師は知らない。
それにアズ君とはいったい誰だ?
「ところでそのアズ君とは一体誰なんだ?」
「あー、そういえば言っていませんでしたね。
アズ君はアズエイルという青年でEランクの冒険者で夜遅くにギルドにやってきて『大きな魔物に襲われていて逃げていたからそいつを倒したが、次にこの人達が気を失ったから助けてやってくれ』とマリン様達を担いでやってきて、そのままマリン様達を置いてそのまま家に帰って行きましたよ。」
私はコリンさんの話を聞いて再び固まった。
前より固く固まった。
だってそうだろ!あのSSランクの火竜をEランクの冒険者が倒せるわけがない!
ましてやそのような者が私達四人を担ぐなんてできないだろ!?
だが私がそのようなことを考えていると、あることを思い出した。
黒い装備をした男が火竜を倒したことだ。
私はまさかなと思いながら
「そのアズエイルさんは黒い装備をしていましたか?」
と聞くとコリンは
「そうですが、どうしたんですか?」
と答えたのである。
私は絶句してしまった。
だって火竜を倒して私達を助けてくれたのがそのEランクの青年である可能性が出てきたからだ、驚いて当然だろ!
そんなふうに考えているとコリンが
「ところでマリン様達はなんという魔物と戦っていたのですか?」
と聞いてきた。
「火竜だ。」
「え?」
「ひ、りゅ、う、だ!」
「ええっ!?」
私がそう答えるとコリンさんは目を見開いて驚いている。
私もだよ…驚いているのは…
私がそう思いながら苦笑しているとコリンさんが
(まさかアズ君がま・た・化け物みたいな魔物を倒したのね。さすが『夜・の・死・神・』ね)
とブツブツと呟いて納得していた。
……ん?また?夜の死神?何だそれは?
私がそのことについて質問しようしようとするが
「あ、そういえばマリン様のお仲間はもうお目覚めになっており、今は集会場に居られると思いますのでそちらに向かいになってはいかがですか?」
とコリンさんにそう提案されたので、私はそのまま頷いて部屋から出て行った。
……そういえばアズエイルさんについて何も聞かなかったな。
私はそのようなことを思いながらルナ達がいる集会場に向かった。
集会場に来るとルナ達のいる場所を探した。
すると
「マリン!!こっちこっち!!」
と聞き慣れた声が聞こえた。
私がその声が聞こえた方向に向くとルナが手招きをしていた。
その隣にはメイベルとエリーザもいた。
「私達って生きていたんですね!
私はもうダメかと思ったよ!」
とルナが涙を流しながら言っていた。
メイベルとエリーザも何も言っていなかったが涙を流していた。
私は「落ち着け」と言い聞かせてさっき前までコリンさんと話していた内容をルナ達に話すとルナが驚いたのか座っていた席からガタッと立ち上がって
「なんですって!?
そのアズエイルっていうEランクの冒険者が私達の命を助けてくれたっていうのですか!?」
とルナが叫ぶ。
すると私達の話を聞いていたのか周りにいた冒険者達がヒソヒソと話し始めていた。
しばらくこの状態が続くと周りの冒険者達の中から
中年の男性の人が私たちに近づいてきた。
私は何事かと思っているとその男性は
「そこのお嬢ちゃん達、もしかしてアズ坊のことを捜しているのかい?」
と聞いてきたので私が
「あぁ、そうなんだが…もしかしてアズエイルさんのことを知っているのか?」
と答えると、その男性は「そうか…」と呟いてそのまま考えていると、しばらくもしない内にギルドの外からドドドドッと何者かが走ってこちらに向かっている音がした。
何事かと身構えていたが
「噂をすればなんとやらかな…お嬢さん達が捜しているアズ坊はもうすぐ来るぞ」
と苦笑しながら言う。
何!?もうすぐアズエイルさんに会えるのか?
私がアズエイルがどんな姿をしているか気になってギルドの扉をジーと眺めていると、ギルドの扉がバンッといきなり音を立てて開かれ、そこから一人の男の青年が走りながら入ってくる……が、その青年は集会場にはいってくるなり、入り口でつまずいて「うわっ!?」と言いながら盛大に転げた。
その様子を見ていた冒険者達は大声で笑い出した。
その青年は身長は私より高く、黒い髪で黒い瞳で可愛らしい顔立ちをしており、私服なのか白い服と茶色いズボンを身につけ、その青年と同じくらいの大きさの大きなリュックを背負い、腰には一本の短剣を携えていた。
「ほらっ、あいつがお嬢さん達が捜しているアズ坊だぞ」
とこけている青年に指を指して笑いながら言った。
「えっ!?あの青年がアズエイルさん!?」
と私は驚きながらそう叫び、その青年のことを見ていた。
覚えている風格とはまったく違っていたのだ、驚いて当然だろ!
私がそう驚いている今でもその青年はこけたままだった…
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