第2話
ある夜のこと、四人組の女性パーティーは必死に走っていた。
彼女達は「女神の微笑み」と呼ばれるSランクパーティーで、世界では誰もが知っている程の有名な女性パーティーである。
しかし、そんな彼女達の装備はボロボロになっており、装備の隙間から血が流れて、全身傷だらけになっていた。
そんな状態の彼女達の頭上には一匹のドラゴンが飛んでいた。
月の光でドラゴンは照らされて、鱗が赤く反射していた。
そのドラゴンは「火竜ファイヤードラゴン」と呼ばれ、F,E,D,C,B,A,S,SSのランクの中で最上位に君臨するSSランクの魔物で、ドラゴン種の中でも火の攻撃を得意とする魔物である。
そう、彼女達はとある依頼の途中で火竜に遭遇し、そして戦闘になったのである。
戦闘の結果はご覧の通り惨敗で、ボロボロになった彼女達は必死に火竜から逃げていた。
だが、火竜は彼女達を視界に捉えており、いつでも攻撃出来る状態で攻撃するタイミングを伺っていた。
「早く逃げるぞ!」
とそのパーティーのリーダー...マリンは仲間に叫ぶ。
「「「了解!」」」
マリンの仲間....魔法使いのルナ、弓使いのメイベル、槍使いのエリーザは返事をしながらマリンについて行く。
すると…
「Guooooooo!!!!」
火竜が突然叫び、口に溜めていた魔力で巨大な火玉を作ると、その火玉をマリン達に向かって放った。
火玉は凄い速度でマリン達に殺到する。
いち早くそれに感知したマリンが「伏せろ!」と叫び、そのおかげで間一髪のところで火玉を避けることが出来た.....がマリン達は喜ぶことは出来なかった。
なぜなら火竜が放った火玉はそのまま道に当たり
道が大きくえぐれており、そのあたりでは火の粉が舞っていたのであった。
そう、マリン達の退路は断たれたのである。
マリン達はそのことに理解すると顔が青くなり、カタカタと震えて絶望していたのであった。
火竜はその様子を見てニタァと笑みを浮かべるとドスンと大きな音を立てて降り立つと、再び口に魔力を溜めながらマリン達に向かって進んでいった。
「嫌だ、来るな...」
「頼む、助けてくれ...」
「死にたくないよ、誰か助けて...」
とルナ達は泣いたり、震えて火竜を見ながら命乞いをしていた。
その様子を見ていたマリンは
「すまないみんな、守れてやらなくて…」
と自分の不甲斐なさに悔し涙を流しながら手をギュッと握り締めながら仲間達に謝った。
そして火竜が火玉を放とうとした時、マリン達は死を覚悟して目を瞑っていたのであった。
ドカン!
マリン達の近くで何かが爆ぜる音が響く…が、火玉はマリン達には当たっていなかった。
マリン達は目を瞑ったまま、少しの時間がたった。
流石に不思議に思ったマリン達はゆっくり目を開けると目の前に広がる光景に目を見開いて言葉を失っていた。
そこには口から煙を出してピクピクと痙攣している火竜と一人の男性の人がいた。
その男は身長は175cmぐらいで全身黒い装備を纏っており、頭にはフードとマスクをつけており、腰には短剣を携えており、その横では小物入れのような小さなバッグが付けられていた。
「あなたは?」
とマリンが問うと、男は
「俺はただの冒険者だよ」
と呑気な声で答えた。
しばらくすると火竜は首をフルフルと振って視界に男を捉えると「Guooo!!!」と怒り、男に向かって爪で引き裂こうと火竜は翼を振り上げ、振り下ろした。
『危ない!逃げて!』
マリン達が叫ぶ中、男は逃げないままその場に立ち、その火竜が振り下ろした腕をバシッと掴み、そのまま火竜を投げ飛ばした。
火竜はそのまま飛んでいき、地面に叩きつけられた。
「Guo!?」
『え?』
マリン達と火竜は何が起きたのか分からずただ目を見開いていた。
「大丈夫ですよ、これくらい。」
男はまた呑気な声で平然と言う。
「Gyaoooo!」
すると火竜は先程の行動が自分を馬鹿にしたと捉え、さらに怒り、次は尾を振って男に攻撃しようとする。
「無駄だよ!」
だが男はそう言うと尾を左手で掴み火竜が逃げられないようにすると、男はバックから5本の先端に刃がついた円柱の形をした棒を取り出し、円柱の部分に魔力を込めるとそれを火竜に向かって放った。
その棒は火竜の背中や翼、顔などに刺さり、火竜は苦痛の声を上げていた。
そして男は火竜を離すとすぐさま右手を上げ、手を広げた。
するとその手の中からは矢の形をした火が出てきて、男はその火の矢を火竜に向かって放った。
その火の矢は火竜に真っ直ぐ飛んでいき、火竜に当たると火竜に刺さっていた棒がドガーン!と大きな爆発音を上げて一気に爆発した。
その爆発が収まるとそこには鱗が剥げ、爪は折れており、翼はボロボロになっていた火竜が姿を現した。
マリン達はその様子を見て驚いていたが、一人だけ…ルナだけは、
(あれはファイヤーアロー!あの中級魔法を無詠唱で発動させるなんて、彼はなにもの!?)
と違いところで驚いていた…
「Grururu…Guoooo!!!!?」
火竜の怒りは限界に達し、空に勢いよく舞い上がると口に魔力を溜めて火玉を作る用意をしていた。
その火玉は前のよりも込められていた魔力は比べられないぐらいで多く、その光景を見たマリン達は今度こそ死んでしまうと絶望していたが、男は…
「またかよ…」
と呆れたように言うと火竜の方に向かってジャンプをしたのである。
そのジャンプ力は凄まじく、凄い速さで火竜の元に向かったのである。
火竜は声には出ないがその男のことを見て目を見開いて驚いていた。
すぐに火竜のいるところまで行くと、
「これでも食らいな」
と円柱の形をした物をバックから取り出し、火竜の口に放り込んだ。
次の瞬間、火竜の口から大爆発が起こり、火竜は気を失ったのか口から煙を出しながら空から落ちていき、そのまま地面にズドーーンと大きな音を立てながら火竜は地面に叩きつけられた。
そのあと男がうまく着地をしてしばらくするとドラゴンは気を取り戻して、ヨロヨロと立ち上がると、最期の悪足掻きの様に再び口に魔力を溜めようとしていたのであった。
それを見た男は
「またかよ!もっと他にも無いのかよ。
全く芸の無い魔物だな。
まぁいいか…これでトドメだ!」
と怒りながら腰に携えていた剣を抜いてその剣で火竜の心臓を突き刺した。
火竜に刺した場所から血が大量に出た。
火竜は断末魔を挙げて、ジタバタと暴れていたが、徐々に動かなくなっていき、しばらくすると
動かなくなってしまったのである。
そう、火竜は倒されたのである。
「ふーーーー、やっと終わったよ…
面倒な奴ドラゴンだったなー、あっ、そういえば俺の後にいたあの人達はどうしてるかな?」
と男がそう言いながら振り返るとそこには口をポカンと開けたマリン達の姿があったのであった。
「もう大丈夫ですよー、安心してくださいねー」
と男が笑ったように手を振りながら言うと、
「助かった....のか」
「よかっ....た」
「生きて帰れ...る」
「ありが....とう」
マリン達は安心したのかそこまで言うと意識を手放してその場に倒れた。
その様子を見て男は
「ありゃあ、ここで気を失ったら危ないからこの人達って絶対にギルドまで運んだ方がいい…よね?」
と苦笑しながら青年はそう呟いてマリン達を担いでギルドに向かって行ったのである。
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