第13話 サラとアキラの出会い

ルイが店に入って行くと、店にいた女の子達の目が変わった。皆、ルイを見ている。


「ルイがいる!」


ルイを知っている子は驚いている。



「誰?カッコいい!」

「‥‥」


ルイを知らない子もルイに惹きつけられている。


ルイはカウンターにいるバーテンダーに会釈して、まるで2人がいる場所を知っているかのように店の奥に進んだ。


「マリア!」


「ルイ!まだ呼んでも起きない!どうしよう」


ルイはサラの前髪をそっとあげて顔を見た。


「大丈夫だよ、マリア、心配ないよ。アキラに連絡してあるんだ。大丈夫だけど、念のため病院に行こう」


マリアはうなずいた。


店の中の女の子たちは3人から目が離せないでいた。


ルイがサラを抱き上げると、なんとも言えない声があちこちから上がって店がざわついた。


「ルイにお姫さま抱っこされてる!誰!」


「私もされたいー」


「ワオ!カッコいい」


バーテンダーが3人に声をかけた。


「勘定は後でいいよ」


ルイが振り返りながら、うなずいて言った。


「ありがとう、ジョシュ」


外に出ると正面に群青色の車が止めてあった。

後ろ座席のドアが自動で開き、ルイは車の後ろ座席にサラを下ろした。

マリアは助手席に乗り込んだ。

そしてルイは電話をかけながら運転席に乗り込んでエンジンをかけた。


「今から行くよ、7分で着く」



「アキラがいたの?」


「うん、待っててくれてるよ。マリア、大丈夫だよ。泣かないで、サラが行きたいって言ったから来たんだ。マリアのせいじゃないよ」


「だけど、だけど」


「マリア、僕を信じて」


「うん、ルイが言うことはいつもその通りになるのを知ってる。信じる。サラは大丈夫。サラは大丈夫。でも、だけど、サラをひとりにしてしまった」


「マリア、マリアがいても同じことが起こっていたよ。マリアのせいじゃないよ」


「そうなの?」


「そうだよ、2杯しか飲んでないのに、こうなったのは、体質だと思うよ」


「ルイ、どうして2杯って知ってるの?私も知らないのに、一緒じゃなかったのに」


「ジョシュが指でピースしてた」


「ああ、わかった」


「泣き止んだ?」


「うん、ありがとう」


マリアが外を見て言った。


「ねえ、ルイ、もっとスピード出した方がいいんじゃないの?」


「これでいいんだ」


ルイたちを乗せた車は流れるように走っていた。不思議に、信号には一度も引っ掛からず、全部、青だった。

ルイには青になるタイミングがわかるのか、それとも、信号がルイに合わせて青になっているのか。


7分たたずに病院の救急用入口に着いた。


ドアの前にストレッチャーと背の高い髭もじゃの男性が立っている。


ルイが車から降りると髭もじゃの男性がストレッチャーを引いて近づいて来た。


「まだ意識がないのか?」


ルイがサラをストレッチャーに乗せた。


「まだない、カクテルを2杯、初めてアルコール飲んだんだ」


「うん」


マリアも車から降りてきた。


「マリア、久しぶり、この子と一緒だったんだね」


「アキラ、私」


「マリア、もう大丈夫。医者に任せて。泣かないで。この子は何を飲んだんだい?」


「ドライマティーニとアラスカ」


ルイが答えた。


「ルイ、なんで知ってるの」


マリアが驚いて訊いた。


「女性が耳打ちしてくれた」


「いつ?」


マリアは気が動転していて何も見えず何も聞こえていなかった。

実はカクテルを運んだウエイトレスの女性が心配してルイに教えたのだった。


「とにかく診てみるよ」


「うん、アキラ、サラは僕たちと同じ」


「まさか!」


「まさか、だよ。だけどまだどんな力があるのかわからない」


「わかった、普通とは違うんだな、待合で待っててくれ」


アキラはストレッチャーを押して病院の中に入って行った。

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