第10話 またみんなと会った、今日はビーフシチュー



「おばあちゃん、ただいま、おお、良い匂い」


純が嬉しそうにおばあちゃんの台所へ入って行った。


「あの、ルイ、私、着替えてきます」

「うん、待ってるね、マリアもじき来るよ」

「はい」


サラは普段着に着替えに3階へ上がって行った。今着ているのは仕事で着る服、食べ物を落としたりして汚したくなかった。


着替えておばあちゃんの部屋に戻るとマリアも帰って来ていた。


「サラー!久しぶり、ぜんぜん会わなかったね。部屋には慣れた?おばあちゃんちに来ないから、ちゃんと食べてる?このあたりのお店とか行った?」


「マリア質問多すぎ」

ルイが笑って言った。


「あーだって、すごく気になっててさ、サラ、今度一緒にクラブに行こう。ゆっくり話したい」


「マリア、急展開過ぎるよ、ほらもうサラが困ってる」


ルイがマリアにブレーキをかけてくれた。


しかし、サラはクラブと聞いてマリアに言った。


「私、行ってみたいです。お酒も飲んでみたいです」


ルイとマリアが顔を見合わせた。

「そうなのね。じゃあ行こう。女の子逹にホントに人気のお店がここの近くにあるからさ。お店90%は女の子のお客さんだから怖くないよ」


ルイが何か言おうとするのをマリアは遮った。


「大丈夫だって、何かあったら連絡するし」

マリアは上目遣いでルイを見た。


「わかった、心配だけど、気をつけて行くんだよ」


「ラジャー!」

マリアは兵隊みたいに右手で敬礼をした。


 おばあちゃんはビーフシチューを作ってくれていた。サラの母はお店が忙しく、手の込んだ料理は作る時間がなかった。たいてい手早くできる炒め物や揚げ物が多かった。

シチューは食べたことがないわけでは無いけど、こんなに複雑な味がするコクのあるシチューは初めてで、とてもとても美味しかった。


「サラちゃん、土曜日の夕方は時間ある?ごはん作りを手伝ってくれない?」

土曜日は体を休めようと思っているけど、夕方なら大丈夫かな。


「はい、来ます。何時くらいですか?」

「4時くらい、大丈夫?」

「あ、はい、わかりました」


おばあちゃんの料理をお手伝いしたら覚えておいて、自分でも作ってみようと思った。

ママとパパにも作ってあげたい。


 純はシチューをおかわりして、昔からの仲間みたいに打ち解けて話をしている。

サラは人見知りの父に似ていて、純は誰とでも友達になれる母に似ている。


「純君が僕らのバスケチームに入ってくれることになったよ」


「わあ、いいじゃない。人数が揃ったら大会に出れるね、応援しに行きたい。サラ、一緒に応援に行こうね」

マリアがサラの肩に手を置いて言った。


サラは口をもぐもぐしながらうなずいた。飲み込んで返事をしようとしたが、話がどんどん進んでサラのタイミングは遅すぎた。

たいてい、こんな感じでサラは話しの流れについていけない。みんなの話しを聞くことで精一杯だった。

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